目次
1.そもそも就業規則違反とは
2.就業規則違反を社員に伝える際のポイントは
・違反行為の明確な伝達
・証拠の収集
・退職勧奨の回避
・不当解雇への対策
・関係者からの事情聴取
3.就業規則違反があった時の対処
・戒告(かいこく)
・譴責(けんせき)
・減給
・出勤停止
・降格
・諭旨解雇(ゆしかいこ)
・懲戒解雇
4.従業員への懲戒処分について注意すべき点
・懲戒事由の明確化
・減給処分の制限
・適切な処分
・労働者の自由意思の尊重
・パワーハラスメントの防止
5.従業員の就業規則違反を予防するためには
・定期的な就業規則の変更・改訂
・就業規則の周知徹底
・モチベーションの向上
・違反事例のケーススタディ
・相談しやすい環境の整備
6.就業規則違反の放置は危険!!
7.まとめ
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そもそも就業規則違反とは
就業規則は、企業内でのルールや約束を明文化したもので、労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関すること、職場内の規律や罰則などについて定めた規則集であり、「就業時間」「服務規律」「秘密保持」「ハラスメント防止」なども定められております。常時10人以上の労働者を使用している事業所では、就業規則を作成し、過半数組合または労働者の過半数代表者からの意見書を添付し、所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。(労働基準法89条 ・ 90条)
今回の表題である就業規則違反は、これらの就業規則に反する行動を指します。
就業規則について当法人では様々な情報を発信しております。ぜひこちらもご覧ください。
一般的な就業規則違反の例
・タイムカードの不正打刻
・正当な理由のない欠勤や遅刻
・会社のルールに違反した副業
・機密情報や顧客情報の持ち出し
・取引先からの個人的なリベートの受領
・不注意による会社への損害
・クレームの隠蔽
・経費精算の不正
・業務命令違反や指示に対する違反
・転勤の拒否
・ハラスメント
これらの行動は、従業員が就業規則に定められたルールに違反することになります。
企業ごとに就業規則の内容は異なりますが、一般的に共通するルールは以上のようなものです。
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就業規則違反を社員に伝える際のポイントは
1. 違反行為の明確な伝達
社員に対して違反行為が何であったのかを具体的に伝えることが重要です。抽象的な言葉ではなく、詳細な説明を行い、社員が自身の行動に責任を持つよう促します。
伝える際には悪意を持たず、事実に基づく情報提供を心がけてください。それにより社員に公正な判断を求めることができます。
2. 証拠の収集
懲戒処分を行う際には、違反行為が事実であることを裏付ける証拠が不可欠です。ただし、証拠になり得るものはすべて収集するのではなく、違反行為と直接関連しているかどうかを慎重に判断してください。
3. 退職勧奨の回避
社員に対して退職を促すような言動や態度は避ける必要があります。特に、パワーハラスメントに該当する発言は慎重に避けましょう。
退職勧奨には社会的、法的リスクが伴うため、適切な言葉選びや伝え方が重要です。
4. 不当解雇への対策
解雇に至るまでのプロセスをしっかりと整備し、不当解雇を回避するために努める必要があります。解雇に至るプロセスには「懲戒解雇に該当する事由」を就業規則に明確に定めていることが重要です。
懲戒解雇に関する事前の説明や機会をしっかりと与えることで、社員に対する適切な取り扱いを行うことができます。
5. 関係者からの事情聴取
就業規則違反があった場合、関係者から事情を聴くことが重要です。労働者には弁明の機会を与え、処分を決定する際には客観的な判断を行うことが必要です。
事情聴取は公平で透明性があり、社員に対する適切な処置が行われることを保証します。
これらのポイントに留意しながら、違反行為に応じた適切な処分を行いましょう。
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就業規則違反があった時の対処
就業規則違反が発覚した場合、即座に懲戒解雇などの最重罰を科すのではなく、適切な処分を与えることが重要です。そのために、事前に就業規則に懲戒規定を設け、違反の程度に応じて処分を選択することが必要です。以下は、就業規則違反に対する処分の種類と内容についての詳細です。
戒告(かいこく)
・軽微な違反の場合に口頭や書面で厳重注意を行う処罰。
・給与や昇給に影響を与えない場合が多い。
譴責(けんせき)
・戒告に加え、社員に始末書の提出を求め、同じ違反を繰り返さないように戒める。
・始末書提出を拒否した場合は、人事考課に影響を与えるなどの規定を設けることもある。
減給
・給与の一部を差し引く処罰で、労働基準法で金額の上限が定められている。
・1回あたりの減給額や総額には制限がある。
出勤停止
・一定期間出勤を停止し、その間の賃金は支払わない。
・出勤停止期間中は有給休暇の利用もできない。
降格
・役職や給与等級の引き下げを含む処罰。
・降格に伴う給与の減額については、就業規則に明記が必要。
諭旨解雇(ゆしかいこ)
・社員に退職を促す懲戒処分。
・弁明の機会を与えた後に適用される場合がある。
懲戒解雇
・最も重い処分で、即日解雇が可能。
・重大な違反行為や懲戒解雇に該当する行為があった場合に適用される。
就業規則違反の事実が発覚した場合は、まず事実確認と証拠の保全を行い、その後適切な懲戒処分を選択します。処分の根拠となる就業規則の規定や手続きに従って、公正かつ合法的な処分を行うことが重要です。
懲戒処分についての詳しい記事はこちらもご覧ください。
「懲戒処分」ってよく聞くけど、結局何のこと?クビになるの??
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従業員への懲戒処分について注意すべき点
懲戒事由の明確化
懲戒処分の正当性を確保するためには、懲戒事由が明確であることが重要です。企業の就業規則に違反した行為が、懲戒処分として正当化されるべき理由であることを示すことが重要です。就業規則で定められた懲戒事由に該当するかどうかを事前に確認し、適切な根拠を示すことが重要です。
減給処分の制限
懲戒処分として減給を行う際には、労働基準法に基づいて減給の上限額を考慮する必要があります。就業規則違反が軽微な場合でも、減給処分を行う際には、労働基準法の規定に準拠することが重要です。
適切な処分
懲戒処分は、就業規則に基づいて行う必要があります。特に、懲戒処分の種類や内容は、適切に選択する必要があります。社員に対する懲戒処分の程度や種類は、適切な根拠に基づいて決定する必要があります。例えば、軽微な就業規則違反に対して重い懲戒処分を科すことは違法です。
労働者の自由意思の尊重
懲戒処分を避けるために退職勧奨を行う場合、労働者の自由意思を尊重し、退職を強要しないようにすることが重要です。特に、強制的な退職勧奨は違法です。退職勧奨は、労働者が自由意思で退職を選択することができるものでなければなりません。
パワーハラスメントの防止
懲戒処分や退職勧奨を行う際には、パワーハラスメントにならないように十分に注意する必要があります。特に、不適切な言動や行動を行わないようにすることが重要です。パワーハラスメントは、企業にとって大きなリスクをもたらす可能性があるため、慎重に行動することが重要です。
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従業員の就業規則違反を予防するためには
定期的な就業規則の変更・改訂
法律の改正への対応:
労働関連法令は頻繁に改正されます。会社側はこれらの法改正に適合するよう、就業規則を定期的に変更・改訂する必要があります。例えば、長時間労働の規制が強化されるなど、法律に従わなければならない項目を規定する必要があります。
会社の状況への適合:
会社の規模や業種によって、就業規則を変更する必要が生じることがあります。例えば、製造業では3交代制の勤務が多いため、その勤務制度に適した規定を盛り込む必要があります。
就業規則の周知徹底
就業規則の内容を定期的に確認:
従業員にとって就業規則は自明の事実であるべきですが、実際には就業規則に目を通していない従業員もいるかもしれません。定期的なアナウンスやポスターなどを通じて、就業規則の重要性を再確認し、周知させることが必要です。
セミナーや教育プログラム:
就業規則に関するセミナーや教育プログラムを開催し、従業員に理解させることが重要です。このような場で質問や意見を出せるようにすることで、従業員が就業規則に対してより積極的に関わっていくことが期待できます。
モチベーションの向上
評価制度の整備:
社内での成果や貢献度を評価し、それに応じて報酬を与える評価制度を整備します。このような制度があれば、従業員はより仕事に対するモチベーションが高まります。
社内の適正な人材配置:
適切な職場環境とキャリアアップの機会を提供することで、従業員のモチベーションを高めます。これにより、就業規則違反を減少させることができます。
違反事例のケーススタディ
ケーススタディを通じた理解の促進:
就業規則違反の実例をケーススタディとして社員と議論することで、従業員が実際に問題行動のもたらす影響を理解しやすくなります。この結果、社員は自らの行動に対する責任感を高め、就業規則を守る意識が強まります。
相談しやすい環境の整備
コミュニケーション促進:
上司や人事部とのコミュニケーションを通じて、従業員が就業規則に関する疑問や問題を遠慮なく相談できる環境を整備します。
匿名性の確保:
相談窓口には匿名性を確保し、社員が違反行為に関する疑問や不安を安心して相談できるようにします。
これらの手段を組み合わせ、従業員の就業規則違反を予防し、より良い労働環境を提供します。
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就業規則違反の放置は危険!!
就業規則違反を放置することは、労働者にとっても会社にとっても大きなリスクを伴います。放置することで、労働者同士の間に不公平感が生じ、職場の雰囲気が悪くなります。さらに、正当に就業規則に適合している労働者は、他の労働者と同じ扱いを受けることができないため、モチベーションや働く意欲が低下します。それにより、生産性の低下や、企業の業績の低下を招くことがあります。
また、会社側も就業規則違反を放置することで、法律や労働基準法に違反するリスクを抱えることになります。特に、労働基準法に違反した場合、労働基準監督署からの指摘や制裁、または労働者からの損害賠償請求が可能となります。それに加えて、労働者の間での不満や紛争が発生することで、会社の評判や信頼性が損なわれることも考えられます。それらの影響は、長期的な経営にも影響を及ぼす可能性があります。
したがって、就業規則違反を放置することは、企業の信頼性や労働者のモチベーション、生産性に深刻な影響を及ぼす可能性があります。したがって、従業員の就業規則違反は企業として適切な対処をする必要があります。
![様々な提案をする会社員2](https://uemoto-jimusyo.com/wp-content/uploads/2023/10/kai.png)
まとめ
就業規則は、企業が従業員に守ってほしいルールを定めた文書であり、違反行為には多様な形態があります。例えば、勤務時間の不正、業務命令への違反、機密情報の漏洩、ハラスメントなどがあります。
就業規則違反が発生した場合、企業は適切な対処をすることが重要です。懲戒処分や適切な指導、教育プログラムの実施、就業規則の周知徹底などが挙げられます。また、就業規則の適切な改訂や法律への適合、労働者とのコミュニケーションを促進することも重要です。
さらに、就業規則違反を放置することは、企業と労働者の双方にとってリスクを伴います。不公平感の増加やモチベーション低下、生産性の低下、法的リスクの増加などが考えられます。
したがって、就業規則違反は企業にとって重要な問題であり、適切な対処と予防策が求められます。
当法人ではその事業所に合った就業規則の作成を得意としております。是非一度ご相談ください。
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