アルバイトやパート社員であっても解雇する際には、民法、労働基準法、労働契約法などに従った適切な手続きが必要です。
労働契約法第16条(引用:労働契約法( 平成19年12月05日法律第128号) – 厚生労働省)により、解雇には合理的な理由があり、かつ社会通念上相当である必要があります。したがって、適切な手続きを踏まずに解雇された場合は、不当解雇として法的なトラブルに発展する可能性があるのです。
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目次
・アルバイト・パートを解雇する正当な理由とは?
1.就業規則の解雇事由に該当する場合
2.不正行為があった場合
3.職場に損害を与えた場合
4.経営不振による解雇(リストラ)
・アルバイト・パート解雇のルールと落とし穴 ~法的手続きを理解しよう~
1.解雇予告と解雇予告手当
2.有期契約労働者の解雇について
3.アルバイトの解雇方法やルール
・アルバイトやパート社員の解雇 ~慎重な選択と法的リスク~
1.解雇の不当性の例
2.不当解雇によるリスク
・アルバイト・パートを解雇する手順
1.退職勧奨の提示
2.解雇の検討
3.解雇予告手当の検討
4.解雇通知書の作成
5.面談と手続き
6.ハローワーク・年金事務所への手続き
・アルバイト・パートの解雇に退職金は必要?
1.法的な規定
2.解雇理由と支給の有無
3.労働条件通知書や就業規則の確認
4.問い合わせと説明
・まとめ
アルバイト・パートを解雇する正当な理由とは?
アルバイトやパート社員を解雇する際には、解雇の手続きだけでなく、正当な理由が必要です。正当な理由には以下のようなものがあげられます。
1.就業規則の解雇事由に該当する場合
会社の就業規則に定められた解雇事由に該当している場合、解雇は正当と認められる場合があります。ただし、形式的に該当していても実質的には該当していない場合や、解雇が社会通念上相当でない場合は無効となります。
※就業規則に関する記事はこちら
(就業規則がないとどうなる?就業規則の基本から作成方法まで徹底解説!あなたの会社には就業規則はありますか??【社労士監修】)
2.不正行為があった場合
横領、背任、窃盗、器物損壊などの刑事上罰すべき行為や法令違反行為があった場合、解雇の正当な理由となります。このような行為は会社と従業員の信頼関係を著しく毀損するため、解雇が認められることがあります。
3.職場に損害を与えた場合
ネット上に店の評判を落とすような書き込みをしたり、高価な備品を破損させたり、他の従業員に対するハラスメントや暴力行為を行った場合、解雇の正当な理由となります。これらの行為は名誉毀損罪や暴行罪に該当する場合があります。
4.経営不振による解雇(リストラ)
経営不振による整理解雇は正当な理由とされます。しかし、整理解雇を行う場合は、経営上の必要性があり、解雇回避の努力がなされたこと、対象者の選定基準が客観的合理的であること、組合や労働者との説明や協議が行われたことが必要です。
つまり、アルバイトやパート社員を解雇する主な理由には、職場とのミスマッチ、勤務態度の問題、会社の経営状況や方針変更などがあります。これらの理由であれば解雇が行われる場合でも解雇の正当性が検討されます。
アルバイト・パート解雇のルールと落とし穴
~法的手続きを理解しよう~
1.解雇予告と解雇予告手当
・普通解雇や整理解雇の場合、解雇を事前に労働者に伝える解雇予告が必要です。本来、解雇予告は30日前の期間を必要としますが、解雇予告を適切に行えなかった場合に解雇予告手当が発生します。
・解雇予告手当は、30日前の予告期間に対応する30日分の平均賃金に相当し、予告期間を短縮する場合は、短縮した日数1日につき平均賃金の1日分を予告手当として支給することになります。
2.有期契約労働者の解雇について
・有期雇用契約の労働者に対する契約期間中の解雇は、やむを得ない事由がなければ行うことができません。
・やむを得ない事由とは、期間満了を待たずに直ちに契約を終了させざるを得ないような重大な事由を指します。この基準は、無期雇用契約の解雇に比べて厳格です。
3.アルバイトの解雇方法やルール
・解雇予告は、30日以上前に行う必要があります。この予告は口頭でも有効ですが、文書で残すことが望ましいです。
・解雇予告手当は、解雇予告期間を遵守できない場合に支払われます。適切な解雇予告手当の支払いは、不当解雇訴訟などのリスクを軽減します。
・雇止めは、契約期間満了時に契約を更新せず行われるものであり、定められた条件に基づいて行われる必要があります。
以上の事から、アルバイトやパート社員を解雇する際には、これらの注意点を理解し、法的な手続きを適切に行うことが重要です。労働者とのトラブルを避け、解雇が正当に行われるようにするために、関連する法律や規定に従うことが必要です。
アルバイトやパート社員の解雇
~慎重な選択と法的リスク~
解雇は企業や雇用主にとって、慎重に検討すべき重要な決定です。記事の冒頭でも説名しましたように、アルバイトやパート社員だからと適当な解雇をしてしまうと不当な解雇となり、法的なリスクを伴います。以下では、不当解雇の具体的なケースやそのリスクについて詳しく見ていきましょう。
解雇の不当性の例
軽微なミスや遅刻による解雇
ごくわずかなミスや遅刻は、解雇の正当な理由にはなりません。誰もが時折ミスをするものであり、解雇理由としては不十分です。
契約期間中の解雇
通常、契約期間中の解雇は困難です。解雇の正当性を主張するには、特に力強い根拠が必要です。
労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とした解雇
労働者が持つ国籍、宗教、信条、人種、性別、障害、年齢、社会的身分などの個人的特性や属性を理由に、雇用関係を終了させる行為を指します。このような差別的な解雇は労働者の権利を侵害するものとして法律で禁止されています。(労働基準法第3条)
業務上の負傷や疾病のための療養期間およびその後30日間、ならびに産前産後休暇の期間およびその後30日間の解雇
労働者が業務上の負傷、疾病、産前産後休暇を取得した際に、そのための療養期間や休暇期間、さらにそれに続く30日間の間に解雇されることを指します。しかし、労働者が健康上の理由で休暇を取得したり、療養期間を必要とすることを理由に解雇することは法律で禁止されております(参考資料:退職(解雇制限、解雇の予告、退職時の証明) | 徳島労働局)
労基法やそれに基づく命令違反を申告した労働者に対する、それを理由にした解雇
労働基準法(労基法)やその他の労働関連法律に基づく命令の違反を申し立てた労働者が、その申し立てを理由に雇用関係を終了されることを指します。しかしこちらの解雇も客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合にあたり、その権利を濫用したものとして、無効となります。
労働組合に加入したことなどを理由とする解雇
労働者が労働組合に加入したこと、または労働組合の活動に参加したことを理由に、雇用関係が終了されることです。しかし、労働組合法では、労働者が労働組合に加入したことを理由として、使用者がその労働者を解雇、又はその他不利益な取扱をすることを不当労働行為として禁止しています。(労働組合法第7条1号)
不当労働行為を労働委員会等に申し立てなどをしたことを理由にした解雇
労働委員会の調査・審問等において、労働者が証拠を提出したり、発言したことを理由とする解雇です。
このような労働者への不利益取り扱いは労働組合法で禁止されており、労働組合や労働者は、使用者による不当労働行為を受けた場合には、労働委員会に対して救済申立てを行うことができます。
また、労働委員会は、申立てに基づいて審査を行い、不当労働行為の事実があると認められる場合には、使用者に対して、復職、賃金差額支払い、組合運営への介入の禁止等といった救済命令を出します。(労働組合法第7条4号)
女性であることを理由とした解雇
男女雇用機会均等法により、解雇に限らず募集・採用、配置・昇進・降格・教育訓練、一定の福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨・定年・労働契約の変更など各雇用ステージにおける、性別を理由とした差別は禁止されております。(男女雇用機会均等法)
不当解雇によるリスク
解雇が不当と判断された場合、以下のようなリスクが企業に生じます。
法的リスク
適正な手続きを経ない解雇をした場合、民法709条にもとづき、アルバイトから民事訴訟される可能性があり、企業側には損害賠償の義務が生じる可能性があります。さらに、適法な手続きを取らない解雇は労働基準法違反により懲役や罰金の刑事リスクもあります。
信頼失墜
不当解雇は従業員や社会からの信頼を失う可能性があります。企業のイメージや信頼性にも影響を及ぼすことがあります。
法的手続きと対処法
アルバイトやパート社員を解雇する際には、労働基準法や労働契約法などの関連法規を遵守し、適切な予告期間を与えることが重要です。また、解雇理由や手続きについての記録を適切に保管し、必要に応じて労働基準監督署や労働相談機関、弁護士、社会保険労務士などの専門家に相談することも重要です。
そもそも解雇は法的なリスクを伴う重大な決定であり、企業は慎重に対処する必要があります。正当な解雇に関する労働法の知識や適切なアドバイスを専門家に求めることが、法的リスクを最小限に抑える鍵です。
アルバイト・パートを解雇する手順
今回の記事で何度も述べているように、解雇は企業にとって慎重かつ法的に複雑なプロセスです。アルバイト・パートを解雇する場合も同様であり、以下の手順を丁寧に踏むことが求められます。
1.退職勧奨の提示
解雇に至る前に、まずはアルバイト・パートに対して自発的な退職を促すための退職勧奨を行います。ただし、これは相手の意思を尊重したものであり、無理強いは違法です。また、退職勧奨の過程でアルバイトとの対話を重ねることが大切です。
2.解雇の検討
アルバイト・パートが退職勧奨に応じない場合、解雇を検討します。この際には、解雇の正当性を確認し、就業規則や労働法に基づいた適切な解雇理由を整理します。普通解雇や懲戒解雇など、解雇の形態を選択します。
3.解雇予告手当の検討
解雇予告期間や解雇予告手当の支払いについて検討します。普通解雇や懲戒解雇の場合、解雇予告期間を通常30日以上設ける必要があります。また、解雇予告手当の支払いについても、労働基準法に基づき計算します。
4.解雇通知書の作成
解雇予告を行う際には、解雇通知書を作成します。解雇通知書には解雇の日付、解雇の理由、解雇予告手当の内容などを明記します。通知書は書面で提出し、アルバイト・パートとの面談時に手渡します。
5.面談と手続き
解雇通知書を提出した後、アルバイト・パートと面談を行います。この際には解雇の理由や手続きについて詳細に説明し、アルバイト・パートの意見や疑問にも丁寧に対応します。また、面談後には解雇に関連する書類の提出や手続きを遂行します。
6.ハローワーク・年金事務所への手続き
解雇後は、ハローワークや年金事務所への手続きを行います。これには雇用保険被保険者資格喪失届や健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届の提出が含まれます。これらの手続きは法律で定められた期限内に行う必要があります。
解雇は労働者にとって深刻な影響を与えることがありますので、解雇を検討する際には十分な配慮と透明性が求められます。
アルバイト・パートの解雇に退職金は必要?
アルバイトの解雇に際して、退職金を支給するかどうかは、法的な義務ではなく企業の判断に委ねられています。しかし、一部の企業ではアルバイトにも一定の勤務期間や条件を満たす場合に退職金を支給することがあります。以下に詳しく解説いたします。
1. 法的な規定
労働基準法や労働契約法などの労働法には、アルバイトの解雇時に退職金を支給する義務は明示されていません。つまり、企業が退職金を支給するかどうかは、その企業の方針や就業規則によって異なります。
2. 解雇理由と支給の有無
解雇理由や解雇の性質によって、退職金の支給の有無が異なります。懲戒解雇の場合は、明らかに反社会的な行為をした場合などを除き、退職金が支給されることはまれです。一方で、組織改編や業務の廃止などの理由での会社の都合による解雇の場合には、通常は退職金が支給されます。
3. 労働条件通知書や就業規則の確認
アルバイト・パートが雇用される際には、労働条件通知書や就業規則によって、退職金の支給の有無や支給される場合の条件が明示されます。これらの書類をよく確認することで、退職金の支給の有無や条件を把握することができます。
4. 問い合わせと説明
アルバイト・パートが退職金の支給について不明点や疑問点がある場合は、直接店長や人事部などの責任者に問い合わせるか、就業規則を確認することが重要です。彼らから明確な説明を受けることで、疑問や不安を解消することができます。
アルバイト・パートの解雇に際して退職金を支給するかどうかは、企業の方針や労働条件によって異なります。解雇の際には、就業規則や契約書をよく確認し、必要に応じて問い合わせを行うことが重要です。
まとめ
アルバイト・パートを解雇する際は、解雇理由や解雇の種類についての十分な理解と、アルバイト・パートへの丁寧な対応が求められます。過度な退職勧奨や解雇理由の妥当性に注意し、契約の更新状況に応じて慎重な手続きを行いましょう。
また、トラブルを避けるためには、社労士や弁護士に相談することも一案です。社労士や弁護士の助言を得ることで、労働者との交渉をスムーズに進めたり、訴訟等を未然に防ぐことができます。労働トラブルの可能性がある場合は、早めに相談することが賢明です。
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