目次
・そもそも就業規則の意見書って何?
・意見書の作成方法は?
・就業規則の意見書作成時の重要事項
・就業労働者の異議があっても問題ない? 就業規則の意見書に関する注意点
・まとめ
そもそも就業規則の意見書って何?
就業規則の意見書は、従業員代表者が就業規則に対する意見をまとめた文書です。
労働条件や規律を定めたものであり、常時10人以上の従業員がいる事業所では作成・届出することが義務づけられています。この就業規則の変更や新規作成時に、労働者の代表者や労働者の過半数との対話の結果をまとめたものが意見書です。
また、就業規則の作成や変更に際して労働基準監督署への届け出は法的な義務です(労働基準法第89条)。同時に、この届け出に意見書が添付されます(同第90条)。
今回はこれらの手続きがなぜ重要か、そして具体的な意見書について詳しく解説いたします。
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意見書ってそんなに必要?
就業規則の意見書が必要な理由は、企業が単独で規則を決定しそれに対して労働者が無知である場合に一方的に不利なルールの導入を防ぐためです。
意見書の提出は、双方の合意形成が促進され、トラブルの未然防止や解決に寄与します。
意見書の内容ってどんなもの?
意見書には以下の項目が含まれます。
1.会社名と代表取締役の氏名
2.話し合いの実行日付
3.就業規則に対する労働者の意見
4.労働組合や労働者代表のフルネーム
5.労働者代表者の選出方法
これらの内容は、労働者代表が意見を確認し、署名または記名押印して提出します。
就業規則の意見書は、法的手続きにおいて不可欠な要素であり、企業と労働者の双方にとって公平で健全な労働環境を確保する役割を果たします。
労働基準法の定めに基づき、労働者代表者が率直な意見を提出することで、企業と労働者のコミュニケーションが促進され、持続可能な労働関係が構築されます。
意見書の作成方法は?
就業規則の意見書の作成は、一般的には難しい作業ではありません。この書類は、労働者が特に異議がない場合や具体的な変更要望がある場合に使用されます。
以下では、「異議がない場合」と「異議がある場合」の意見書の作成方法について解説します。
1. 異議がない場合の作成
労働者が就業規則に異議がない場合、以下のような簡潔な表現を用います。
「異議はありません。」
「特に異議はありません。」
「内容を確認しましたが、特に意見はありません。」
これらの表現を用いて、異議がない旨を明確に伝えます。労働者側が就業規則に問題がないと判断した場合に使います。
2. 異議がある場合の作成
異議がある場合、具体的な変更要望を箇条書きでまとめます。例えば、
「勤務時間は、7時間として頂きたい。」
「時間単位の年次有給休暇制度を導入して頂きたい。」
「特別休暇を新設して頂きたい。」
これらのように、変更を希望する具体的な規定とその要望を明示的に記載します。これにより、労働者の立場や希望が理解しやすくなります。
3. 意見書不添付理由書の作成
労働者が何らかの理由で意見書の提出を拒んだ場合、意見書不添付理由書を作成して添付します。その際には、拒否の理由や背景を明確に説明します。
4. ポイント
同意の有無を確認: 就業規則に対して異議がない場合も、しっかりと確認しましょう。同意が得られた場合は、それを明示することが重要です。
具体的な変更要望
異議がある場合は、具体的な変更要望を箇条書きで示しましょう。これにより、双方が理解しやすくなります。
意見書不添付理由書の明確化
意見書提出の拒否がある場合、その理由を詳細に説明することで、労働基準監督署や関係者との円滑なコミュニケーションが可能となります。
就業規則の意見書の作成は、異議がある場合や提出が拒まれる場合でも適切なコミュニケーションを図る手段となります。同意が得られた場合は円滑に進みますが、異議がある場合も具体的な要望を示し、問題解決に向けた対話を大切にしましょう。
就業規則の意見書作成時の重要事項
1. 労働者の意見を尊重
就業規則の意見書を作成する際に最も重要なのは、労働者の意見を十分に尊重することです。労働者は就業規則が自身の働き方や権利に影響を与えるものと理解しておらず、話し合いの時間が確保できない場合もあります。しかし、法的には労働者の意見を聞かずに就業規則を制定することは違法であり、罰金の対象になります(労基法第120条:30万円以下の罰金)。
オンラインでのコミュニケーションやメールを通じてでも、できるだけ多くの意見を収集するよう心がけましょう。
2. 労働者に同意を強要しない
経営者は労働者に対して圧力をかけて同意を引き出すことはできません。賛成を強要する行為は無効とされ、法的にも認められていません。労働者は対等な権利を持っており、その自由な意思決定を尊重することが求められます。就業規則の変更に関する意見書は、強制的な同意ではなく、労使双方が納得できる合意形成を目指すべきです。
3. 労働者代表の選定と役割
「労働者代表は労働者の過半数で組織される労働組合がある場合はその組合」、ない場合は「労働者の過半数を代表する者」です。この代表者は、就業規則の意見書の作成において、労働者の立場を代弁し、適切な意見を提出する責任があります。経営者が代表者を指定することは認められず、選定プロセスは民主的かつ透明性が求められます。
4. 適切な選出手順
労働者代表の選出は公正かつ民主的な手続きで行われるべきであり経営者が代表者を指定することは認められません。就業規則の作成や変更に関する意見を述べる者を選ぶためには、投票や挙手、労働者同士の話し合い、持ち回り決議などが考えられます。これにより、労働者代表が労働者全体の意向を適切に反映しやすくなります。
5. 管理監督者の制限
就業規則の意見書を作成する際、管理監督者は労働者代表として指定できません。彼らは経営者としての地位にあるため、労働者全体の代表には選ばれません。管理監督者が代表者となることは、労働者の権利を守るためにも避けるべきです。
就業労働者の異議があっても問題ない?
就業規則の意見書に関する注意点
1. 同意書の提出は必須ではない
労働者が就業規則に異議を唱えても、同意書が提出されなかった場合でも、労働基準監督署への届け出は可能です。就業規則の変更や制定に関しては、労働者の意見を聴くことが重要ですが、同意が得られない場合でも法的に問題はありません。周知が行われ、異議があることが分かれば、届け出が行えます。
2. 意見書不添付理由書の作成が必要
労働者代表が就業規則の提出を拒否した場合、「意見書不添付理由書」の作成が必要です。これは、労働者代表に就業規則の説明を行い、意見を聞いたにもかかわらず同意書が提出されなかった経緯を詳細に記載するものです。この報告書は、会社が労働者の意見を求めていたことを示し、同意が得られなかった事実を確実に記録するものです。
3. 労働者代表に聴取なしで提出は違法
労働者代表に意見を聴かずに就業規則の意見書を作成し提出するのは法的に違法です。
この場合、最悪の場合、労働基準法に基づき30万円以下の罰金(労働基準法120条1号)が科される可能性があります。労働者代表の声を無視することは、労使間の信頼を損なうことに繋がりかねません。
4. 会社は就業規則に拘束されないが…
法的には、就業規則に対して労働者代表の同意が必要とされていません。しかし、就業規則は労働条件に影響を与えるものであり、労使双方の合意が重要です。合意が得られない場合、労使間の対立や不和が生じる可能性があり、注意が必要です。
5. 意見書の提出拒否に備えて
従業員代表が同意書の提出を拒否した場合、その旨を記載した報告書を作成し、労働基準監督署に提出すれば、就業規則の届出は受理されます。この報告書は、会社が労働者代表に対して意見を求め、それに応じなかった状況を示すものです。
まとめ
就業規則の意見書は、会社を創立したり就業規則を変更する限り提出が求められる書類です。これに気づいていない経営者もいるかもしれませんが、新たな会社を設立する場合は特に注意が必要です。一旦就業規則が定まれば、労働者全体に周知することが必要で、これを怠るとトラブルの元となります。
就業規則を作成または変更した際には、意見書を作成し、これを添付して所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。従業員代表の選出は民主的な方法で行い、意見を聴取した結果に基づいて意見書を作成します。ただし、意見がなくても手続きは適切に行う必要があります。
就業規則の作成・変更が労働者に周知されていれば効力が発生しますが、意見聴取を怠ると手続き違反となり、最大で30万円以下の罰金(労基法120条)が科せられる可能性があります。これらのトラブルを未然に防ぐためにも、速やかに意見書の取得手続きを行うことが重要です。
法的な義務を遵守するだけでなく、意見書の取得手続きは将来の労務トラブルに備えるためにも不可欠です。取得手続きに関する疑問や懸念がある場合は、我々のような専門家に相談することが望ましいでしょう。
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