その残業代!大丈夫!?今こそ給与明細を確認しよう!社会保険労務士が教える正しい残業計算

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目次

1.今更ながら残業代とは??
2.法定労働時間?所定労働時間?何が違うの??
・法定労働時間
・所定労働時間
3.残業による割増率や残業手当の計算方法
残業による割増率の基本は25%以上
注意すべきポイント
残業代の計算方法
深夜労働と休日労働について
4.フレックスタイム制の場合
5.変形労働時間制の場合
6.裁量労働制(みなし労働)の場合
7.その他の場合
日給制
年俸制
管理職
8.実際に残業代を計算してみよう!!
残業代の計算に基づく月給の算出方法
残業代の計算に含む手当と除外可能な手当
残業代に含む手当の例
除外可能な手当の例
賃金の割増率
残業の種類と最低割増率の例
残業代計算の具体例
9.具体的な計算例
9-1 まず、1時間あたりの賃金を求めます。
9-2 次に、各残業時間ごとの残業代を計算します
9-3 したがって、各残業種別の残業代とその計算式は以下の通りです。
10.まとめ



わからない事に疑問をもつ

残業代とは労働基準法によって定められた法定労働時間を超えて働いた従業員に支払われる割増手当の一つです。法定労働時間は1日8時間、週40時間と定められており、これを超える労働時間に対しては、通常の労働時間に対する割増賃金が支払われます。

残業代の計算には、残業時間や割増率、基本給・諸手当などが考慮されます。通常の労働時間に対する賃金に、法定労働時間を超えた残業時間に応じた割増率を乗じた額が残業代となり、たとえば、法定労働時間を超えた1時間の残業時間については通常の賃金に1.25倍を掛けた金額が支払われます。

労働基準法には、法定内残業と法定外残業という区分もあります。
法定内残業は、法定労働時間内での残業であり、通常の賃金に割増賃金を支払う必要はありません。ただし、法定外残業は法定労働時間を超えた残業であり、割増賃金の支払いが義務付けられます。

法定外残業を行う場合は労使間での36協定が必要です。残業代の支払いは労働基準法の規定に従い、労働者の権利保護と公平な労働条件の確保が求められます。(36協定の届出様式はこちら)

また、深夜労働や休日労働についても同様に割増手当が支払われます。深夜労働は、22時から翌朝の5時までの間に労働することを指し、休日労働は法定休日や所定休日に労働することを指します。

労働者にとっては、残業代は労働時間や労働条件の改善を促す一つの手段として重要です。企業側も、法定労働時間を超えた労働に対して適切な報酬を支払うことで、労働者のモチベーションや生産性を維持し、労使関係の円滑な運営を図ることが求められます。

ちょっと困ってしまった事

法定労働時間

  1. 労働基準法で定められた労働時間の上限を指します。具体的には、1日8時間、週40時間が法定労働時間の基準です。
  2. 労働基準法第32条によれば、「1日8時間」「1週間40時間」を超えての労働は原則禁止されています。ただし、特別な事情がある場合や36協定が成立している場合などに例外が認められることもあります。
  3. 法定労働時間を超える労働に対しては、通常の賃金に割増手当を支払う必要があります。

所定労働時間

  1. 企業が個別に定める労働時間のことであり、通常は従業員の勤務時間を規定した就業規則(就業規則についてはこちら!)や雇用契約書などで明示されます。
  2. 法定労働時間とは異なり、企業ごとに異なる労働時間の制度です。例えば、9時から17時までが所定労働時間である企業もあれば、10時から18時までが所定労働時間である企業もあります。
  3. 所定労働時間内での労働は通常の賃金で支払われますが、所定労働時間を超えて法定労働時間までの残業については割増手当を支払う必要はありませんが、多くの企業で法定労働時間と同様に割増手当を支給するケースが見受けられます。 

労働者や企業は、法定労働時間や所定労働時間を遵守しつつ、労働条件や賃金に関する取り決めを適切に行うことが重要です。これにより、労働者の権利保護と労働条件の公平性が確保され、労働者と企業の間での信頼関係が築かれます。

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1.残業による割増率の基本は25%以上

  1. 残業や時間外労働に対する割増率は通常25%以上であり、残業時間に応じて賃金が増加します。
  2. 例えば、時給が2,000円の場合、2時間の残業を行った場合は、2,000円 × 2時間 × 1.25 = 5,000円が残業代として支払われます。

2.注意すべきポイント

  1. 残業時間が60時間を超える場合は、超過した時間分は割増率50%以上で給与を計算する必要があります。
  2. 大企業だけでなく、中小企業も割増率50%以上のルールが2023年4月から適用されたため、これに対応する必要があります。
    厚生労働省よりの案内

3.残業代の計算方法

  1. 残業代の計算は、基本的には「(基本給+諸手当/1か月の所定労働時間数) × 割増率 × 残業時間」で行います。

但し、諸手当のうち①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金(結婚手当など)、⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)は割増賃金の計算から除外されます。
①から⑦以外の手当は原則すべて算入しなければなりません。また、①から⑦の算定除外手当に該当するか否かは、単なる名称ではなく、実態で判断されます。特に住宅手当は、住宅に要する費用に応じて算定されるものでなければ該当されません。

※残業代の1時間あたりの賃金は、給与形態によって異なり、月給制や日給制の場合は算出する必要があります。

4.深夜労働と休日労働について

深夜労働と休日労働は、労働基準法に基づき割増賃金が支払われる重要な労働形態です。

  1. 深夜労働
    • 深夜労働は、22時から翌5時までの労働を指します。
    • 深夜労働に対する割増率は25%以上で、残業代の計算時に考慮されます。
    • 例えば、深夜に残業した場合は、通常の残業代に加えて25%の割増率が適用され、合計の割増賃金が支払われます。
  2. 休日労働
    • 休日労働は、法定休日に労働を行うことを指します。
    • 休日労働に対する割増率は35%以上で、通常の労働時間に加えて割増賃金が支払われます。
    • 例えば、法定休日に深夜労働した場合は、通常の深夜労働に加えて35%の割増率が適用され、合計の割増賃金が支払われます。

また、月の残業時間が60時間を超えた場合、さらに割増率は50%以上となります。

これらの割増率を適切に考慮し、労働者に公正な報酬が支払われるよう努めることが重要です。深夜労働や休日労働に関するルールや割増率を遵守することで、労働者の健康と労働条件の改善が図られます。

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フレックスタイム制は、労働者が自らの都合に合わせて始業や終業の時間を決めることができる制度です。この制度下では、労働時間が1日8時間や1週間40時間を超えても、必ずしも残業代が発生するわけではありません。

ただし、フレックスタイム制では、「清算期間」と呼ばれる期間内に労働者が労働すべき総労働時間が定められています。この期間内で労働時間が規定を超えた場合には、超過した時間に応じて残業代が支払われます。

清算期間

清算期間は通常1ヶ月で設定されます。この期間内で、労働者が労働すべき総労働時間は、週平均40時間(一部の特例措置を受けた場合は44時間)以内である必要があります。月の残業時間がこの基準を超える場合には、超過した分に対して残業代が支払われます。

フレックスタイム制の残業代計算

フレックスタイム制下での残業代の計算は、一般的な残業代の計算と同様です。清算期間内の労働時間が所定労働時間を超える場合に、超過した時間に対して割増賃金が支払われます。残業代の計算式は以下の通りです。

残業代=1時間当たりの賃金×割増率×残業時間残業代=1時間当たりの賃金×割増率×残業時間

フレックスタイム制の残業手当の例

例えば、清算期間が1か月で、清算期間内の所定労働時間が171.4時間実労働時間が185時間1時間当たりの賃金が2,000円の場合、残業手当の計算は以下のようになります。

185時間−171.4時間=13.6時間

残業代=2,000円×1.25×13.6時間=34,000円

したがって、この場合、34,000円の残業手当が支給されることになります。

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変形労働時間制は、労働者が所定労働時間を日ごとや月ごとに柔軟に設定できる制度です。繁忙期や閑散期に応じて労働時間を調整することができ、労働時間のバラつきを調整します。

この制度では、平均して1週間あたりの労働時間が40時間を超えないようにすることが基本です。労働基準法に基づく規定を守りつつ、繁忙期には労働時間を増やし、閑散期には短縮することが可能です。

変形労働時間制の具体的な設定方法として、「1カ月単位の変形労働時間制」が代表的です。この制度では、1カ月を単位として、労働時間を調整します。労働日ごとや週ごとに労働時間を設定し、月の総労働時間が40時間以内(特例措置対象事業場は44時間)となるよう調整します。

例えば、繁忙期と閑散期を考慮して、第1週と第3週を繁忙期とし、第1週に47時間、第3週に45時間の労働を設定し、その他の週は短縮して平均労働時間を40時間に調整します。

変形労働時間制を導入する際には、労使協定や就業規則で以下の項目を定める必要があります。

  • 対象となる労働者の範囲
  • 対象期間とその起算日
  • 労働日ごとの労働時間設定
  • 労使協定の有効期間

変形労働時間制では、1日8時間を超える所定労働時間を設定する場合、超過した部分が残業として扱われ、割増賃金が支払われます。残業手当の計算は、通常の残業代の計算方法に準じます。

変形労働時間制は、労働者と企業の両方に柔軟性をもたらし、効率的な業務遂行を促進します。


裁量労働制(みなし労働)

テレワークで頑張る様子

裁量労働制は、従業員に始業と終業の時間を自由に決めさせ、一定の時間分の労働があったとみなす制度です。裁量労働制には①専門業務型裁量労働制と②企画業務型裁量労働制があります。この制度では、業務の遂行に必要とされる時間を「みなし労働時間」として、「みなし労働時間」が1日8時間の法定労働時間を超えている場合(例:1日9時間)、毎月一定額の「固定残業代」が支給され、実際の労働時間に関わらず一定の時間の残業があったとみなされます。

しかし、裁量労働制であっても深夜労働や休日労働が発生した場合は、割増賃金の支払いが必要です。したがって、従業員の労働時間の管理は重要です。

裁量労働制では、実際の労働時間に関わらず一定の労働時間があったとみなされるため、毎月定額の固定残業代が支給される場合があります。しかし、規定のみなし労働時間が法定労働時間を超える場合は、超過分が残業として扱われ、割増賃金が支払われます。

また、深夜労働や休日労働に関しても裁量労働制は適用されず、割増賃金の支払いが必要です。企業が裁量労働制を導入する際には、厳格なルールがあり、それらを遵守しなければなりません。

裁量労働制は、従業員に柔軟な働き方を提供する一方で、労働時間の管理や残業代の支払いについても注意が必要な制度です。

みんながくれるヒント

日給制

日給制の残業代計算では、まず1時間あたりの賃金を計算し、その後残業時間に応じて残業代を支給します。
例えば、日給1万4,000円の仕事で、9時から17時まで(休憩1時間)働いた場合、1日の労働時間は7時間です。
従って、1時間あたりの給与は1万4,000円 ÷ 7時間 = 2,000円となります。

もし従業員が19時まで残業した場合、17時から18時までの1時間は法定労働時間内であるため2,000円ですが、18時から19時までの1時間は時間外労働として25%増しの2,500円の残業代が発生します。

したがって、日給1万4,000円に2,000円 + 2,500円 = 4,500円を加算し、1日の給与額は1万8,500円となります。

年俸制

年俸制の場合、年俸を1年間の所定労働時間で割って1時間あたりの賃金を計算します。その後の残業代計算や割増賃金率は一般的なケースと同様です。

管理職

管理職の場合、労働基準法において「管理監督者」として認定された従業員は、管理職手当を受け取る代わりに、法定労働時間や休憩・休日の制限を受けません。

単純に役付き=労基法上の管理監督者とは限らず、
①出退勤の自由があるか(タイムカ-ドを押印が義務づけられていても労務管理上の目安程度か。)
②採用や解雇の人事権を有しているか
③他の従業員と比較して高額な報酬を得ているか

といったところが労働基準法上の「管理監督者」の判断基準とされています。

つまり管理職として扱われる従業員は経営方針の決定などに関与している場合がほとんどであり、係長や課長、部長など一般的な管理職には該当しないことがあります。また、管理監督者であっても22時から5時の間に働いた場合には深夜労働手当が加算されることがあります。

業務を任せられる信頼性

残業代は、各企業の就業規則や賃金規定に基づいて計算されます。以下に残業代の計算方法を具体的に解説します。

時給制で働くパートやアルバイト従業員の場合は、時給がそのまま1時間あたりの賃金です。ただし、シフト時間が法定労働時間を下回る場合は、法定内残業のため残業代の支給対象外です。しかし、法定労働時間を超えた分については、パートやアルバイト従業員に対しても残業代を支払う必要があります。

月給制で働く正社員などの場合は、まず1時間あたりの賃金を求めます。
1時間あたりの賃金は、月給(基本給+諸手当)を1ヵ月の平均所定労働時間で割ったものです。

残業代の計算に基づく月給の算出方法

残業代の計算に含む手当と除外可能な手当

残業代の計算には、特定の手当を含めるか除外するかがあります。以下に含む手当と除外可能な手当の例を示します。

残業代に含む手当の例

  • 役職手当
  • 資格手当
  • 技術手当
  • 精勤手当
  • 営業手当
  • 在宅勤務手当

除外可能な手当の例

  1. 家族手当(扶養手当):
    家族を扶養している従業員に対して支給される手当です。配偶者や子供など、扶養している家族の人数に応じて支給額が変動する場合があります。ただし、法律で定められている範囲内で支給される場合に限り、残業代の計算から除外されます。
  2. 通勤手当:
    通勤にかかる交通費や交通手段に応じて支給される手当です。電車やバスの定期券代、自家用車のガソリン代などが含まれます。通勤手当は、実際の通勤にかかる費用を基準として支給される場合は残業代の計算から除外されます。
  3. 別居手当:
    単身赴任や遠方での勤務に対して支給される手当です。通常の住居と別の場所で生活する従業員に対して、住居費や生活費の補償として支給されます。別居手当も残業代の計算から除外される場合があります。
  4. 子女教育手当:
    海外赴任などの理由で、子供の教育費がかかる場合に支給される手当です。子供の教育にかかる費用を補償するために支給されます。この手当も残業代の計算から除外される場合があります。
  5. 住宅手当:
    住居費の一部を支給する手当です。家賃補助や住宅ローン補助などが含まれます。住宅手当も、実際の住宅費に応じて支給される場合は残業代の計算から除外されます。
  6. 臨時手当:
    特定のイベントや業績達成などの特別な理由で支給される手当です。結婚手当や出産手当などが該当します。この手当は、残業代の計算から除外されることが一般的です。
  7. 賞与:
    年末賞与やボーナスなど、定期的な期間ごとに支給される手当です。通常、1か月を超える期間ごとに支給されるため、残業代の計算から除外されます。

これらの手当は、従業員の生活や業務に関する補償や報奨として支給されるため、残業代の計算には含まれないことがあります。ただし、手当の内容や支給条件は企業によって異なるため、具体的な内容は各企業の就業規則や労働契約書などを確認する必要があります。

賃金の割増率

残業代の計算においては、通常の賃金に割増率を乗じます。割増率は法律で定められており、下限が定められています。

残業の種類と最低割増率の例

  • 時間外労働:25%
  • 1か月60時間超の労働:50%
  • 深夜労働(22~5時の労働):25%
  • 時間外労働+深夜労働:50%
  • 時間外労働(1か月60時間超)+深夜労働:75%
  • 法定休日労働:35%
  • 法定休日労働+深夜労働:60%

残業代計算の具体例

<例えばこんな人の場合>
・基本給:180,000円
・役職手当:20,000円
・資格手当:30,000円
・家族手当:20,000円
・住宅手当:20,000円
・総支給額:270,000円

そして、月の所定労働時間を162時間とした場合の残業代の計算式は以下の通りになります。

ひらめくサラリーマン

1時間あたりの賃金 = 月給 / 月間の所定労働時間

月給 = 基本給 + 役職手当 + 資格手当
月給 = 180,000円 + 20,000円 + 30,000円

= 230,000円(家族手当と住宅手当は除かれております。)

1時間あたりの賃金 = 230,000円 ÷ 162時間= 1,419円

さまざまな提案する会社員

時間外労働(平日の残業):
残業代 = 1時間あたりの賃金 × 時間外労働時間 × 残業割増率
残業代 = 1,419円 × 65時間 × 25%=22,932円

さらに60時間を超えた分に関しての残業代
=1時間あたりの賃金 ×60時間を超えた分の時間 × 残業割増率
=1,419円 × 5時間 × 25%=3,548円

深夜労働(22時〜5時の残業):
深夜残業代 = 1時間あたりの賃金 × 深夜労働時間 × 残業割増率
深夜残業代 = 1,419円 × 12時間 × 25%=5,362円

休日労働:
休日労働代 = 1時間あたりの賃金 × 休日労働時間 × 残業割増率
休日労働代= 1,419円 × 30時間 × 35%=15,807円

みんながくれるヒント

時間外労働:26,480円(平日の残業+60時間を超えた分)
深夜労働 :5,362円
休日労働  :15,807円

これらの合計47,649円が、該当月の残業代の総額となります。

自信をもってサポートします

残業代の計算は様々な要素が絡んでくるため、単純なものではありません。法定労働時間や残業時間、割増率などを把握し、正確な計算を行うことが重要です。また、会社ごとに導入されている労働制度によっても計算方法が異なる場合があります。

変形労働時間制やフレックスタイム制度など、柔軟な労働時間設計が可能な制度もあります。そのため、1日8時間・1週40時間を超えても残業代が発生しない場合もあります。

定額の残業代が支給される場合もありますので、毎月の給与明細を確認し、疑問があれば専門家に相談することも大切です。会社に問い合わせてもよいでしょう。

残業代の計算には難解な部分がありますが、正確な計算を行い、トラブルを避けるためにも、計算方法を把握しておくことが重要です。
当法人では残業代の計算の他に就業規則の作成なども承っております。ぜひ一度ご相談ください。


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