「就業規則変えてみた!で変えるのは待て!変更方法と注意点を解説【社労士監修】」

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<目次>

そもそも就業規則とは

常時10人以上の従業員を使用する使用者は、労働基準法第89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないとされています。
就業規則を変更する場合も同様に、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

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就業規則がないとどうなる?就業規則の基本から作成方法まで徹底解説!あなたの会社には就業規則はありますか??【社労士監修】

就業規則を変更する場合の主なケース

就業規則は企業や事業所において労働条件や法令遵守に関する基本的な規則を定めた文書です。しかし、変更の必要性が生じる場合があります。
では、就業規則を変更する主なケースはいったい何でしょうか?

1.労働関連の法令が改正されたとき

労働基準法や他の労働関連法令が改正されると、既存の就業規則が新しい法令に合致しなくなる場合があります。たとえば、介護休暇法が改正された場合、就業規則を変更して介護休暇の取得条件を合法に適合させる必要があります。

2.経営状況が悪化したとき

企業の経営状況が悪化し、賃金水準の維持が難しい場合、賃金規定の変更が検討されます。しかし、従業員に不利益をもたらす変更を行う場合は、合理性が求められます。

3.労働基準監督署の是正勧告があったとき

労働基準監督署の調査により、就業規則の不備や作成漏れなどが指摘された場合、是正措置として就業規則の作成や変更が必要になります。

4.就業規則が実態に合わないとき

企業の成長や業務の変化に伴い、現行の就業規則の内容が実態と合わなくなることがあります。この場合、就業規則の見直しや変更が必要です。

5.その他の要因

その他にも、創業以来就業規則の見直しを行っていない場合や、労働時間や休日、賃金体系の変更、手当の新設・廃止、在宅勤務制度の導入、変形労働時間制の採用、経営状況の悪化など、様々な要因が就業規則の変更を必要とするケースに該当します。


就業規則の変更は、労働条件や法令遵守に関する重要な要素であり、適切な変更手続きを行うことが不可欠です。必要に応じて法的アドバイスを受けながら、適切な変更を行いましょう。


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就業規則の変更方法と手続きについて

就業規則は企業の中で重要な文書であり、変更が必要な場合があります。ただし、変更する際には一定の手続きとルールを守らなければなりません。
それでは、就業規則の変更方法と手続きを、順を追って説明いたします。

  1. 変更箇所の決定と理由の検討
    まず、就業規則のどの部分を変更するかを決定し、変更理由を検討します。
    変更理由は、法令の改正や経営状況の変化などが一般的です。変更箇所が明確で、従業員にとって理解しやすい場合、変更はスムーズに進むでしょう。
  2. 意見書の作成
    就業規則の変更に際して、労働者の過半数を代表する者の意見を聴取し、その内容を記した意見書を作成します。
    意見書の様式は決まっておらず、基本的には以下の項目を含むことが一般的です:

  ・事業所の名称・代表者の名前
  ・意見書に記入した日付
  ・意見の内容
  ・労働組合の名称または代表者の職名・氏名・押印

  1. 就業規則変更届の作成
    労働基準監督署に提出するための「就業規則変更届」を作成します。この届け出には以下の情報が含まれます:

  ・提出日付
  ・労働基準監督署の名前
  ・変更事項(変更前と変更後の内容)
  ・労働保険番号
  ・事業所名と所在地
  ・使用者の氏名と押印
  ・業種
  ・労働者数

  1. 新しい就業規則の作成
    新しい就業規則を変更箇所に合わせて作成します。
    これは変更後のルールを明確に示すものです。
  2. 必要書類の提出
    「就業規則変更届」、「労働者代表者の意見書」、「変更後の新しい就業規則のコピー」を2部ずつ用意し、所轄の労働基準監督署に提出します。提出方法は窓口持参または郵送が選択できます。
  3. 変更の周知
    変更された就業規則は、従業員に周知されなければなりません。掲示板や社内の共有ファイルなどでアクセス可能な場所に公開し、従業員がアクセスできるようにします。

就業規則の変更は慎重に行う必要があります。法令を遵守し、従業員の意見を考慮しながら変更手続きを進めることが重要です。経営陣と労働者が協力し、変更に関する合意を築くことが成功の鍵です。


変更の際の注意点

  1. 事業場単位の変更
    就業規則の変更は事業場単位で行う必要があります。ただし、複数の事業場で同一の就業規則が適用される場合は、内容が完全に一致している場合にのみ一括提出が可能とされています。
  2. 労働者代表の条件
    労働者代表として選出される人物は、管理監督者ではない必要があります。選出プロセスは民主的な方法に基づいて行われるべきです。
  3. 労働者の同意は不要
    労働者の同意は法的に必要ありませんが、労働者代表の意見を聴くことは法的義務です。変更が労働者に不利な場合でも、意見を聴いた後、所轄労働基準監督署へ提出すれば変更手続きは完了します。

就業規則の変更は、法的手続きを適切に遵守することが重要です。労働者代表の意見を尊重し、透明性のあるプロセスを確保することで、労使間の信頼関係を維持することができます。


就業規則の不利益変更で注意すべきポイント

1.就業規則の改定による不利益変更

労働契約法では、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」(労働契約法9条本文)としつつ、

①変更後の就業規則を労働者に周知させ

かつ

②その変更が合理的

さまざまな提案する会社員

であれば、労働条件は変更後のものとなります(同法10条)

ただし、労働者と使用者との間で就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、労働契約法12条(就業規則の最低基準効)に該当する場合を除き、就業規則による不利益変更はできません(同法10条ただし書)。

2.そもそも、「就業規則の変更」=「不利益変更」なのか?

「就業規則の変更」自体が「=不利益変更」に当たるわけではありません。

しかし、その就業規則の変更が合理的なものかどうかという判断の入口における「不利益変更」の存否に関しては、新旧就業規則の外形的比較において不利益とみなし得る変更があればよいという傾向にあります。

3.不利益の合理性(相当性)はどのような場合に認められるのか?

では、不利益変更に該当する場合は、どのような変更であれば合理性(相当性)が認められるのでしょうか?

労働契約法10条は、「就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき」と規定していますので、同条に挙がっている事情が判断要素となります。

  • 不利益の程度

不利益変更が従業員にほとんど影響を及ぼさない場合、変更の合理性が高まる可能性があります。
特に、賃金、賞与、退職金など従業員の重要な権利に関係する項目を変更する場合は、
従業員に与える不利益を最小限に抑えるように心がけましょう。

  • 労働条件の変更の必要性

特に賃金、賞与、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の変更については、当該不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであることが必要となります。

ハクスイテック事件(大阪地判平成12年2月28日)では賃金制度の変更に当たって、労働生産性とは結びつかない年功的賃金制度は合理性を失い、労働生産性を重視し、能力、成果に基づく賃金制度を採る必要性が高くなっていることは明白であるとして、変更の高度の必要性を認めています。

  • 就業規則の内容の相当性

変更後の就業規則の内容の相当性は「賃金原資の合理的な分配、適正な人事評価、不利益を受ける労働者に対する経過措置・代償措置」などを厳格に評価して総合的判断がなされるべきとされています。

不利益な変更を行う場合、従業員の生活に大きな影響を与える可能性があります。そのため、代償措置を設けたり、変更までに一定の日数を設ける経過措置を検討することが重要です。代償措置として、再雇用制度の設定などが考えられます。

  • 労働組合等との交渉の状況

労働組合がある場合には、労働組合に対して十分な説明を行うことが必要です。

また、労働組合がない会社でも全従業員に対する説明会の開催や、個々人に対する懇切丁寧な説明が必要です。

  • その他の就業規則の変更に係る事情

その他の就業規則の変更に係る事情には従来の最高裁判例における合理性判断要素として挙げられていた「代償措置その他関連する他の労働条件改善状況」、「他の労働組合又は他の従業員の対応」、「同種事項に関するわが国社会における一般的状況」等が含まれると解されています。


会議を行い情報を共有する

就業規則の変更と労働者の同意

労働者の同意は法的に必要ありませんが、変更が不利益な内容である場合でも変更手続きは進められます。ただし、一方的に不利益な変更を行う場合、合理性が求められ、労働者代表の意見や協議が不可欠です。最高裁の判例では、高度の必要性がある場合に限って変更が認められています。

就業規則の不利益変更を受け入れやすくする3つのポイント

1.同意書を多くの社員に書いてもらう
2.代償措置や経過措置を設ける
3.従業員の過半数代表者と十分に話し合う

会社の事で悩む社長

不利益な変更の合理性

労働契約法第10条では、変更の合理性の基準が示されており、不利益な変更が検討される際には、労働者の受ける不利益、変更の必要性、変更後の内容の適切さ、協議の状況、その他の事情が考慮されます。

社会保険労務士がなぜ必要??

就業規則は労働者を縛り付けるものではなく、労働者が安心して働けるようにするものであり、企業側が勝手に都合よく変えていいものではありません。

社会保険労務士がいれば企業と労働者との間に不平等が生じない就業規則の作成ができ、また会社の都合上どうしても不利益変更になってしまうような場合にもいかにトラブルにならないかをご提案することができます。

当法人におきましても様々な業種・業態での経験から必ず期待にお応えできると自負しております。ぜひ一度ご相談ください。


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