目次
・「明日から来るな!!」と言った場合のリスク
・そもそも解雇とは?
・リスク回避の為、解雇に必要な条件
・解雇の種類
・解雇の案件は植本事務所にご相談を!
「明日から来るな!!」と言った場合のリスク
労働者の皆様の中には表題のようなことを言われた方はいらっしゃいませんか?
また、経営者の方々で口を滑らせてしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
その発言!口から出る前にちょっと深呼吸しましょう。
※人は感情がヒートアップしてから理性が働くまで約6秒ほどかかるようです。
では、即時解雇がどんなリスクを伴うのか、見ていきましょう。
1.多額の解雇予告手当が発生する可能性!
上記でも記載した通り、解雇には30日以上前に予告する必要があります。
それを無視すると30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。
例えば、<時給1,200円・週2日・1日8時間>という条件で1か月ほど働いた従業員を即時解雇した場合・・・。
即時解雇の場合の解雇予告手当は平均賃金の30日分です。
時給者の場合、平均賃金の日額は直前の賃金締切日の賃金総支給額合計を労働日数で割って60%をかけたものとなります。
それを30日でかけたものが解雇予告手当の金額となるのです。
つまり・・・、
賃金総支給額 1,200円×8時間×2日=19,200円
賃金総支給額(19,200円)×労働日数(2日)÷60%=5760円(平均賃金日額)
平均賃金日額(5,760円)×30日=172,800円(解雇予告手当)
1ヶ月で2日しか働かなった従業員に対して、
172,800円!!
即時解雇をした場合これだけの解雇予告手当がかかる可能性が発生します。
2.バックペイが発生する可能性!!
解雇が無効とされる場合、解雇から復職までの不就労期間中の賃金(バックペイ)を支払わなければなりません。(民法536条2項)
例えば、月給20万円の労働者の場合。
解雇から復職までの期間が6カ月から12カ月としてだと…。
20万円×(6~12カ月)=120万円~240万円(プラス:夏季賞与、冬季賞与)
3.慰謝料支払いの義務が発生する!
解雇の違法性が強く、労働者に精神的損害が発生し、不法行為の要件を満たす場合には慰謝料請求が認められることがあります。(数十万円単位)
4.再就職に係る費用を負担しなければならないかも。
解雇権濫用性が明白であり、しかもその経緯・態様からみて労働者が職場復帰に見切りをつけて転職活動に移らざるを得ないことも多くあります。
そのような場合、解雇された労働者は、慰謝料の請求にとどまらず、転職に通常要する期間の賃金相当額を相当因果関係のある財産的損害(逸失利益)として請求できると考えられます。
(雇用情勢、年齢、学歴、資格などの能力、病気等の有無 等を考慮して認定される)
5.請求金額の相場はこんなにも!?
中央値で見た場合、労働審判における総請求金額は約290万円です。
それに対して、裁判上の和解における総請求金額は約840万円にもなります!!
参照ページ
「労働政策研究報告書No.226 労働審判及び裁判上の和解における雇用終了事案の比較分析」
https://www.jil.go.jp/institute/reports/2023/0226.html
そもそも解雇とは
使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了の事を言います。しかし、
解雇は使用者が好き勝手に行えるものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者を解雇することはできません。
(労働契約法第16条)
例えば、勤務態度に問題がある場合や、職務規律や業務命令に違反するなど労働者に落ち度がある場合でも、その程度によっては解雇に至らないと判断される可能性があるのです。
また、解雇を行うには様々な条件があります。
リスク回避の為、解雇に必要な条件とは?
・使用者は、就業規則に解雇事由を記載しておかなければならない
・解雇を行う際には少なくとも30日前に解雇の予告をする必要がある
・予告を行わない場合には、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならない
・予告の日数が30日に満たない場合には、その不足日数分の平均賃金を、解雇予告手当として、支払う必要がある。例えば、解雇日の10日前に予告した場合は、20日×平均賃金を支払う必要があります。(労働基準法第20条)
・労働者が解雇の理由について証明書を請求した場合には、会社はすぐに労働者に証明書を交付しなければなりません。(労働基準法第22条)
解雇の種類
解雇には、大きく分けて、普通解雇、整理解雇、懲戒解雇の三種類があります。
普通解雇
普通解雇とは、労働契約の継続が難しい事情に基づいて従業員を解雇することであり、従業員の能力不足、協調性の欠如、就業規則違反、業務外での傷病による業務遂行不能などが理由となります。
普通解雇は従業員の同意を得ることなく、企業が一方的に通知を行い、従業員の雇用を終了させるものです。
そのため、解雇の要件は非常に厳格に適用されます。解雇の合理性や妥当性がない場合、解雇は無効とされる可能性が高いため、企業は慎重に有効性を検討する必要があります。
整理解雇
整理解雇(せいりかいこ)とは、企業が経営上の理由に基づいて行う解雇の一つで、
通常の解雇とは異なります。この解雇手続きは、従業員の能力や行動に起因せず、経営不振や人員の余剰による必要性に基づいて行われます。
整理解雇は従業員に責任がない分、普通解雇よりも厳格な要件が必要となります。
整理解雇には、権利濫用を防ぐために以下の「整理解雇の4要件」が確立されております。
1.人員整理の経営上の必要性
まず、整理解雇を行う企業は、人員整理の必要性が経営上の合理的な理由に基づいていることを証明する必要があります。
経営不振や経済的な困難がその主な理由となり、解雇の正当性を確立するための出発点です。
2.解雇回避努力義務の履行
企業は、解雇を選択する前に、解雇回避のために努力しなければなりません。
このため、配置転換や希望退職者の募集など、他の手段によって解雇回避の努力を行う必要があり、解雇は最終手段です。
3.被解雇者選定の合理性
解雇対象者の選定基準は客観的で公正である必要があります。
従業員の選定は、経験、資格、業績などの客観的な要因に基づいて行われ、個別の人事評価に基づいていないことが求められます。
被解雇の公平な選定をするための重要な要素となります。
4.手続きの妥当性(協議説得義務)
最後に、解雇手続き自体が適切であるかどうかが検証されます。
従業員との協議や説明が行われ、納得を得るための努力がなされる必要があります。
解雇手続きが公平で透明であることは、従業員の権利を保護するために不可欠です。
整理解雇の4要件は、従業員を保護し、企業と従業員のバランスを保つために重要です。
これらの要件を満たすことができない場合、解雇は無効とされ、法的な紛争が発生する可能性が高まります。
整理解雇は、企業の経営の厳しい状況下でも、従業員の権利を尊重しながら実施されるべき重要な手続きです。
懲戒解雇
懲戒解雇とは、企業が極めて重大な職場規律違反や企業秩序違反を行った従業員に対して、労働契約を一方的に解約する処分のことです。
懲戒処分の中で最も厳しい制裁であり、従業員の行動が非常に悪質である場合にのみ実施されます。以下、懲戒解雇に関連するポイントです。
1.法的根拠の欠如
懲戒解雇は法律上の根拠が存在しないため、労働契約に基づく民事的な手続きです。
しかし、裁判所は、企業秩序を維持する権限として懲戒処分を認めており、懲戒解雇はその一部として位置づけられています。
2.重大な職場規律違反
懲戒解雇は、従業員が極めて悪質な職場規律違反や企業秩序違反を犯した場合に適用されます。
この解雇は、労働者にとって非常に重大で、その後の再就職が極めて難しいため、ある意味「死刑宣告」とも例えられます。
3.就業規則に基づく事
懲戒解雇は、企業の就業規則に明確に規定された懲戒事由に基づいて行われます。
労働者が懲戒処分の対象となる行動を知っており、企業はこれらの事由を適用するための法的根拠を提供する必要があります。
4.解雇権の濫用防止
裁判所は、懲戒解雇について、解雇権の濫用を防ぐために厳格に審査します。
従業員の行為がそれほど悪質でない場合や、適切な改善指導が行われなかった場合には、解雇は無効と判断されやすいため、企業は要注意です。
5.再就職の難しさ
懲戒解雇が確定した場合、その後の再就職が極めて難しいことが一般的です。
多くの企業は懲戒解雇の経歴を持つ従業員を採用しません。
6.公的な影響
一部の懲戒解雇は、社会的な影響が大きい不正行為に基づいて行われるため、マスメディアで報道されることがあります。
また、懲戒解雇を隠して再就職した場合、経歴詐称などの法的な問題となる可能性もあります。
懲戒解雇は、従業員と企業の関係において極めて厳しい処分であり、その要件とプロセスが厳格に遵守されなければなりません。
従業員が懲戒解雇の対象となった場合、法的アドバイスを受けることが重要であり、企業も法的要件を遵守し、公平な手続きを提供する責任があります。
解雇の案件は植本事務所にご相談を!
要するに、即時解雇は経営者にとって高額なコストを伴う行為であり、その結果、経済的負担と法的問題を抱えることになりかねません。感情が高ぶった瞬間に口から出た言葉が、深刻な結果を招くこともあるため、注意が必要です。解雇の際は専門家のアドバイスを受け、慎重に行動することをお勧めします。
是非このようなトラブルの際は経験豊富な当事務所へご相談下さい。
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