「解雇になってしまった!明日からどうしよう!?」その解雇理由大丈夫?

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解雇とは、会社(使用者)が従業員(労働者)に対して一方的に雇用契約を解消する行為を指します。これは通常、従業員が会社からクビにされる状況を指します。解雇は会社によって一方的に行われるため、従業員の承諾は不要です。一方で、会社と従業員が双方合意の上で雇用契約を解除する場合は「合意解約」と呼ばれます。従業員が自らの意志で会社を辞める場合は「辞職」となります。

解雇が有効であれば、従業員はその会社での地位を喪失します。解雇には通常、解雇通知書や解雇予告通知書、解雇理由証明書などの書面が伴いますが、実際には「解雇」とはっきりと表現されていない場合でも、従業員が解雇されたと主張するケースもあります。

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「明日から来るな!」は絶対言うな!!勢いで解雇はできない?解雇の種類や就業ルールを徹底解説

わからない事に疑問をもつ

解雇には普通解雇、整理解雇、懲戒解雇と、主に3つの種類があります。

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労働者が労働契約の債務を履行しない場合や勤務態度が問題となる場合に行われるのが解雇です。
例えば、健康状態の悪化、能力不足、職務懈怠、職場規律違反などが挙げられます。普通解雇には制裁的な意味合いはなく、退職金が支給されるのが一般的です。

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会社が経営不振や業績不振などの理由で人員削減を目的として行う解雇です。
人員削減の必要性があるかどうか、解雇回避努力がなされたか、対象者に選定の妥当性があるか、手続の妥当性があるかなどの要件が厳格に求められます。退職金の給付が通常行われます。

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労働者が重大な非を犯した場合に行われる解雇で、制裁的な性質を持ちます。
例えば、不正行為や業務命令違反などが挙げられます。退職金の支給が一般的に行われず、再就職が難しくなる可能性があります。
裁判例では懲戒解雇に厳しい要件が求められ、様々な法的な制約があります。懲戒解雇を検討する際には、それぞれの解雇事由の特徴や法的要件を理解し、慎重に検討する必要があります。

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解雇には合理的な理由が必要です。むやみに「明日から来るな!」など言うと大きなトラブルになりかねません。以下の3つの観点から解雇理由の重要性を考えてみましょう。

不当解雇の回避

労働契約法16条では、「解雇は、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効とする」と規定されています。
そのため、解雇後に従業員が不当解雇と主張した場合、合理的な解雇理由がなければ企業は法的な責任を負う可能性があるのです。その場合、企業は多額の損害賠償を支払うことが求められます。したがって、解雇理由は法的に妥当である必要があるのです。

就業規則の確認

解雇前には、就業規則に記載された解雇理由を確認する必要があります。
解雇理由は就業規則に適切に明示され、その合理性が求められます。懲戒解雇や普通解雇を行う場合でも、就業規則に基づいた理由が存在しなければなりません。規則に基づいた手続きを踏むことが肝要なのです。

就業規則に関して詳しくはこちら↓
就業規則がないとどうなる?就業規則の基本から作成方法まで徹底解説!あなたの会社には就業規則はありますか??【社労士監修】

証明義務の履行

従業員が解雇理由に疑問を抱く場合、企業は解雇理由に関する証明書を提供する責務があります。労働基準法22条に基づき、従業員からの要求があれば解雇理由についての証明書を発行する必要があります。これにより、企業は解雇理由に対する透明性と説明責任を果たすことが求められます。
解雇を行う際には慎重なプロセスが求められ、合理的な理由が法的に認められるかどうかが鍵となります。また、労働者側もその解雇に正当な理由が存在するかどうかをしっかりと確認しなければなりません。

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普通解雇の場合

普通解雇は、悪質で重大な事案でない場合でも解雇が検討されることがあります。解雇理由は様々で、勤務態度、勤怠不良、他従業員とのトラブル、協調性の欠如、能力不足などが挙げられます。

解雇予告の重要性
普通解雇を行う場合、30日以上前に解雇予告が必要です。解雇予告が遅れた場合は解雇予告手当が発生します。

正当な解雇理由の条件
前述通りですが、解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。具体的には、就業規則に定める解雇事由への適合、規定内容の合理性、解雇が相当であることがポイントです。

解雇理由とその例

1.病気やけがによる就業不能
「身体、精神の障害等により業務に耐えられない」と認められたとき。
例: 休職期間経過後、復職可能性がなくなった場合など。

2.能力不足、成績不良
「勤務成績が不良で、就業に適さない」と認められたとき。
例: 新卒者や未経験者の場合は指導や配置転換後も勤務成績が不良であるなど。

3.協調性の欠如
「職場における協調性を欠き、注意や指導しても改まらない」とき。
例: 協調が不可欠な仕事であり、他の従業員とのトラブルが重大で改善されないなど。

4.頻繁な遅刻や欠勤
「正当な理由なく、無断で遅刻や欠勤を繰り返し、指導後も改善されない」とき。
例: 適切な指導後も頻繁に繰り返しているなど。

5.業務命令に対する違反
「会社の指示や規則に違反し、注意しても改善されない」とき。
例: 会社の命令に従わないことが明確で、今後も従わない意思があるなど。

これらのポイントと例を考慮しながら、解雇は法的かつ道徳的な枠組みで行われるべきです。特定のケースにおいては、社労士や弁護士に法的アドバイスを受けることが望ましいです。

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整理解雇の場合

整理解雇は、経営不振等での人員削減など会社側の責任において行われる解雇である為、その要件も厳しく、裁判所が確認する以下4つの主な要件(要素)が定められています。

これらの要件は解雇の有効性判断の際に基本となります

余剰人員が発生し、人員削減の必要性があること。
例: 売上減やコスト増により利益が著しく減少している。特定の部門が財務的に不振で大幅な赤字に陥っている場合など

解雇以外の手段による経費削減努力が行われていること。例えば、新規採用停止、契約社員の雇止め、希望退職者の募集など。
例: 早期退職者を募集する。経営陣の報酬を減額する。資産を売却してキャッシュフローを改善するなど、解雇以外の経費削減手段を実施する。

解雇の対象者が客観的な基準で選ばれ、選定方法が公正であること。
例: 解雇基準を設け、その基準に基づいて対象者の選定を行う。恣意的な人選を避け、客観的で公正な方法で選定する。

整理解雇に関して従業員や労働組合との十分な協議が行われ、手続きが適切であること。整理解雇は企業の経営事情に基づくものであり、法的要件の遵守だけでなく、社会通念上の正当性も検証されます。解雇の必要性や回避努力、対象者選定の合理性、説明・協議の適切な実施が求められます。
例: 従業員説明会を開催して人員削減の必要性を説明する。社内文書や協議を通じて労働者に周知する。組合や従業員代表と協議を行う。

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懲戒解雇の場合

懲戒解雇は、悪質で重大な行為が不可欠であり、普通解雇よりも厳格な条件が求められます。解雇事由や条件は主に就業規則を基に構築され、労働者への権利濫用を防ぐために客観的な合理性と社会通念上の相当性が重視されます。その難しさから、具体的な事案ごとに慎重な検討が必要であり、

1.就業規則に定める解雇事由に該当すること

概要: 就業規則で明確に規定された解雇事由に従業員が該当する必要があります。

2.就業規則の規定内容が合理的であること

概要: 就業規則の解雇事由が合理的であるかどうかが検証されます。合理的な規定であることが求められます

3.解雇が相当であること

概要: 解雇が相当であるかどうかが判断されます。悪質で重大な行為がある場合に相当とされます。
例:厚生労働省のモデル就業規則において、以下は懲戒解雇事由の一例です。

3-1.重要な経歴を詐称して雇用されたとき
例: 経歴を虚偽で申告し、それが判明した場合。


3-2.正当な理由なく無断欠勤が〇日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき

例: 正当な理由がなく、一定期間以上の無断欠勤があり、かつ出勤の督促に応じなかった場合。


3-3.正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、〇回にわたって注意を受けても改めなかったとき

例: 無断で繰り返し遅刻・早退・欠勤し、かつ何度も注意を受けても改善しなかった場合。


3-4.正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき

例: 業務上の指示や命令に故意に従わない行為が頻繁にあり、かつ正当な理由がない場合。


3-5.故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき

例: 故意かつ重大な過失により、会社に著しい損害を与えた場合。


3-6.その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき
例: 上記以外でも、就業規則に基づく不適切な行為があった場合。

資料をまとめる能力のある人

解雇理由証明書は、労働者がどのような理由で会社から解雇されたかを具体的に記載した書類です。この証明書は解雇予告日から退職日までの期間に労働者が解雇理由を請求した際に発行され、会社はこれを遅滞なく交付する義務があります。
解雇理由証明書が請求される主な理由や作成時の注意点については以下の通りです。

具体的な理由の明示

就業規則の特定の条項に基づく解雇の場合、その該当する内容や事実関係を具体的に示す必要があります。これは労働基準法22に基づくもので、労働者が求めた場合には適切に情報を提供することが求められます。

退職証明書と解雇理由証明書の違い

退職証明書と解雇理由証明書は異なる趣旨を持っています。
前者は退職時に契約内容などをまとめたもので、後者は解雇された理由を明確に示すものです。

交付の義務と罰則

労働基準法により、労働者からの請求があれば、解雇理由証明書を発行しなければなりません。遅滞なく発行しない場合、労働基準監督署から是正勧告を受けたり、労働基準法第120条により「30万円以下の罰金」が科される可能性があります。

解雇理由の証拠となる重要性

解雇理由証明書は労働者が不当解雇を主張する場合の証拠となります。口頭だけでなく書面での通知が求められ、これを適切に処理することが重要です。

解雇されたら必ず受け取るべき

会社から解雇通知書を受け取った場合は、解雇理由証明書を交付するよう要求するべきです。これにより、解雇が不当であれば裁判などでの訴訟時に有利な証拠を得ることができます。

解雇理由証明書の発行や交付に関する法的な義務と注意事項を理解し、解雇が正当であるかどうかを確認する際に活用することが重要です。必ずチェックしましょう!!

様々な規則を積み重ねる

高知放送事件:最高裁昭和52年1月31日第二小法廷判決(労経速報743号4頁)

早朝のニュース番組を複数回寝過ごしたために解雇処分を受けた高知放送の男性アナウンサーが、処分の有効性を巡って会社側と争った民事訴訟事件(解雇無効)

昭和52年1月31日に判決が言い渡され、最高裁判所第二小法廷(栗本一夫裁判長)は高知放送の上告を棄却する判決を出した。判決においては、アナウンサーが起こした放送事故について「定時放送を使命とする上告会社の対外的信用を著しく失墜するものである」とし、また二度目の放送事故後に事後報告を怠ったなどの点を加味した上でアナウンサー側の過失を認める判断を下した。その一方で、

・アナウンサーだけでなく記者も寝過ごしていたこと[注釈 1]

・アナウンサーは起床直後に放送中で謝罪し、また放送の空白もさほど長くないこと

・高知放送側が何ら同様の事態に対する対策を施していなかったこと

・3月の事故のもう一人の当事者である記者はけん責処分に処されており、また過去に放送事故を理由に解雇された事案が存在しないこと


などといった高知放送側の問題点を指摘した上で、上記の事情を以てアナウンサーを解雇することは苛酷であり、社会通念上相当であるとは認められないとして、解雇処分は無効であるとの判決を下した。

ユナイテッド・エアーラインズ(旧コンチネンタル・ミクロネシア)事件:東京地裁平成31年3月28日判決(労働判例1213号31頁)

吸収合併に基づく整理解雇が有効とされた事案

 本件は、グアム島に本社を置き国際旅客事業を業とするコンチネンタル・ミクロネシア・インク(以下「CMI」という。)に客室乗務員又は機内通訳(以下「FA」という。)として勤務し、解雇された原告A、B、C、Dが、同社を吸収合併した被告(ユナイテッド・エアーラインズ・インク)に対し、同解雇が無効であるとして、主位的に、労働契約に基づき労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成28年(2016年)6月から本判決確定の日まで、毎月25日限り、月額賃金、賞与、プロフィット・シェア(利益の一部を還元する制度に基づいて支給される金員)等の支払、予備的に、上記解雇が不法行為に当たるとして、不法行為による損害賠償請求の支払を求め、さらに、(2)乙事件:個人原告らが加入する労働組合である原告組合が、被告に対し、上記解雇が差別的な動機に基づく解雇であって違法であるとして、不法行為による損害賠償請求の支払を求めた事案である。判決は、原告らの請求をいずれも棄却した。

東京メトロ(諭旨解雇・本訴)事件:東京地裁平成27年12月25日判決(労働判例1133号5頁)

職務外で車内痴漢行為をした社員への懲戒解雇の有効性が争われた事案(労働者勝訴)

旅客鉄道事業の運営等を営む株式会社である被告Yと雇用契約を締結した原告Xが、XはYから懲戒処分である諭旨解雇処分を受け、平成26年4月25日付けでYを解雇されたところ、本件処分は無効である旨を主張して、Yに対し、Xが本件契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め、あわせて、本件契約に基づき、上記平成26年4月25日の翌日以降の各賃金及びこれらに対する遅延損害金の支払を求め提訴したもの。
東京地裁は、本件処分につき、懲戒事由該当性は認められるが、相当性はないとして、懲戒権の濫用があるとして、Xの請求を認容した。

ひらめくサラリーマン

解雇理由の重要性は法的な側面や企業の適切な運営において大きな影響を与えます。不当解雇を回避するためには、解雇理由が客観的かつ合理的であり、社会通念上相当であることが求められます。これにより、企業は法的な責任を回避し、損害賠償のリスクを軽減できます。

解雇理由の具体例としては、普通解雇では勤務態度、勤怠不良、協調性の欠如、能力不足などが挙げられます。懲戒解雇は普通解雇よりも厳格な条件が求められ、就業規則に基づく合理的な事由や社会通念上の相当性が特に重要です。また、整理解雇の際には人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、説明・協議の実施が要件とされます。

解雇理由証明書は解雇された労働者が解雇理由を確認し、不当解雇の主張に備えるための重要な文書です。具体的な理由の明示や法的な交付義務の遵守が求められ、遅滞がある場合には罰則が科せられる可能性があります。

最終的に、解雇が行われた場合は解雇理由証明書を適切に確認し、不当解雇の可能性がある場合は法的な手続きを検討することが重要です。

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