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【企業向け】社会保険料を正確に見える化するシミュレーター|人件費・手取り最適化のための完全ガイド
植本労務管理事務所 監修(社会保険労務士)
人件費は企業のコスト構造で最も大きな比率を占めます。特に、給与だけでなく法定福利費(企業負担の社会保険料)を含めた「総人件費」を正確に把握していないと、 「採用したものの利益を圧迫していた」「昇給を繰り返した結果、いつの間にか固定費が膨らんでいた」といった事態が起こりがちです。
本記事では、社会保険料シミュレーターを使って人件費を見える化する方法を、経営者・人事責任者の方向けに解説します。 最後まで読んでいただければ、「1人採用すると年間いくらかかるのか」「昇給で会社負担はいくら増えるのか」を、自社の数字で具体的にイメージできるようになります。 なお、本記事およびシミュレーターの結果は、あくまで概算の目安であり、最終的な金額は公的機関の情報等でご確認いただくことを推奨します。
📊 社会保険料込みの人件費を今すぐ試算
月給・賞与・雇用形態を入力するだけで、健康保険・厚生年金・雇用保険などを含めた会社負担分の目安を自動で算出。採用前や昇給前の「事前シミュレーション」に最適です。
なぜ今、社会保険料の見える化が経営にとって必須なのか
賃金水準の引き上げ要請、物価高、採用難…。こうした環境の中で人件費は年々増加傾向にあり、「人を増やすかどうか」「どの水準まで昇給させるか」がこれまで以上に重い判断になっています。
このとき、経営者が見ている数字が「額面給与」だけだと、実際よりもコストを安く見積もってしまいます。社会保険料の会社負担分は、健康保険の保険者や料率、介護保険料の有無などにもよりますが、 協会けんぽ加入の一般的なケースでは、ざっくり給与の1〜2割程度となることが多く、 年間で見ると1人あたり数十万円〜100万円以上の違いになるケースもあります。
だからこそ、従業員ごと・ポジションごとに総人件費を可視化し、「この採用・昇給に対して、会社はいくら投資するのか」を数字で把握することが重要なのです。
経営者がまず押さえるべき3つのポイント
ポイント1:総人件費=手取りではなく「会社負担分」まで含めて見る
日常会話では「給料◯◯万円の人を採用する」という表現をよく使いますが、会社が実際に負担しているのは、額面給与+社会保険料の会社負担分です。 社会保険料には、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険などが含まれ、特に健康保険と厚生年金は会社と従業員で折半する仕組みになっています。
例えば、月給30万円の正社員を採用した場合、会社は給与30万円だけでなく、そのおおむね1〜2割程度にあたる社会保険料も毎月負担しています。 賞与を支給する場合は、その都度、賞与にも社会保険料がかかります。
- 「額面給与」だけでなく「会社負担分」を含めた総人件費を把握する
- 賞与支給月は、社会保険料の負担も一時的に増加する
- 人件費を語るときは「手取りベース」か「総額ベース」かを明確にする
ポイント2:前提条件を変えて複数パターンを比較する
人件費は、「雇用形態」「月給」「賞与の有無」「労働時間」などの前提を少し変えるだけで、年間の総額が大きく変化します。 そのため、1パターンだけで判断せず、複数シナリオを比べることが重要です。
例えば、次のような比較が考えられます。
- 月給25万円でフルタイムの正社員を1名採用する場合
- 月給20万円の正社員+パートタイムスタッフで分担する場合
- 人を増やさず、既存メンバーの残業で対応した場合
社会保険料シミュレーターを使えば、これらのパターンごとに会社負担分の概算を比較でき、 「どのケースが最も現実的か」「どこまで人件費を許容できるか」を数字で検討できます。
ポイント3:人件費を「費用」ではなく「投資」として捉え、指標に落とし込む
人件費を単なるコストとして削るだけでは、採用力の低下やサービス品質の低下につながりかねません。 大切なのは、人件費を投資として捉え、その投資がどの程度リターンを生んでいるかを見ることです。
例えば、次のような指標を持っておくと判断がしやすくなります。
- 1人あたり売上高(または粗利)と、1人あたり総人件費の比率
- 採用にかけたコストを何か月で回収できるか(採用回収期間)
- 離職により追加で発生する採用・教育コストの概算
社会保険料シミュレーターは、こうした指標の「人件費側の数字」を素早く出すためのツールとして活用できます。
実務で使える「人件費シミュレーション」チェックリスト
実際にシミュレーターを使う際は、次の流れで情報を整理しておくとスムーズです。
- 社員ごとに「月額給与」「想定賞与」「雇用形態」「勤務時間」を一覧化する
- 最新の保険料率と適用開始月(改定月)を確認する
- シミュレーターに条件を入れ、月額と年間の会社負担額を試算する
- 複数シナリオ(採用有無・給与水準・賞与の有無)で比較する
- 1人あたり売上や業務量と照らし合わせ、投資として妥当かを検討する
「正社員を1人採用する」のではなく、「総人件費◯◯万円を投じて、このポジションを埋める」という考え方に変えると、外注・業務委託・システム導入など他の選択肢とも比較しやすくなります。
社会保険料シミュレーターの具体的な使い方
ここからは、実際にシミュレーターを使うときの基本的なステップを見ていきます。下の操作パネルに従って入力し、概算を出してみてください。
簡単ステップ(入力はたった4つ)
操作は以下の順で行ってください。※結果は概算です。正確な料率は年金事務所・協会けんぽ・健康保険組合等でご確認ください。
※ここでの月収は、残業代や各種手当を含めた「社会保険の対象となるおおよその支給総額(額面)」を想定しています。
社内の情報発信・共有のポイント(Web担当者・経営陣向け)
社会保険料シミュレーターは、経営者や人事担当者だけでなく、現場の管理職にも共有しておくと、「人を増やす・給与を上げる」決定の重みを共通認識として持ってもらいやすくなります。
- 社内ポータルや共有ドライブにシミュレーターへの導線を設置する
- 「月給◯◯万円の人を1人増やすと、年間総人件費はいくらか」という具体例を資料化しておく
- 人事評価・昇給面談の前に、管理職がシミュレーションしておく運用フローを作る
また、自社サイトで情報発信する場合は、「社会保険料」「人件費シミュレーション」などのキーワードを意識しつつ、読者が実際に計算したくなる導線(ボタン・リンク)をわかりやすく配置しておくことが重要です。
📈 人件費の「見える化」から始める経営改善
どのポジションに、どれだけの人件費を投じるか。それを数字で把握することが、攻めと守りを両立した経営の第一歩です。まずは自社の条件を入れて、現状を見える化してみてください。
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