退職給付金がある人ほど確認してほしい失業手当チェックリスト(シミュレーター推奨)

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退職給付金がある人ほど確認してほしい失業手当チェックリスト(シミュレーター推奨)

退職給付金がある人ほど確認してほしい失業手当チェックリスト(シミュレーター推奨)

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

退職給付金(退職金等)があると、「当面は退職金で生活できるので、失業手当の手続きは急がなくてよい」と考えられがちです。しかし、雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)は、離職日の翌日から原則1年間の受給期間の中でしか受給できません。退職給付金が十分にあっても、手続きが遅れれば本来受けられたはずの給付を取り逃すおそれがあります。本記事では、人事・総務担当者向けに、退職給付金がある方ほど押さえておきたい失業手当のポイントをチェックリスト形式で整理します。

前提整理:退職給付金と失業手当の関係

項目 退職給付金(退職金等) 雇用保険の基本手当(失業手当)
制度の根拠 就業規則・退職金規程等、会社独自の制度 雇用保険法に基づく公的給付
支給の位置づけ 退職までの勤務に対する会社からの給付 失業中の生活と再就職活動を支える保険給付
金額決定の要素 勤続年数、退職時の賃金、退職理由など会社制度による 離職前6か月の賃金、被保険者期間、年齢、離職理由など
相互の関係 金額の多少が直接、失業手当の受給資格や金額を左右することは通常ない 退職給付金の有無ではなく、雇用保険の要件で判断される
時間的な制約 退職後1〜2か月以内に一括支給されることが多い 「離職日の翌日から原則1年」の受給期間内に限り支給可能
退職給付金が高額であることだけを理由に、基本手当が減額・不支給とされることは通常ありません。一方で、退職給付金がある安心感からハローワークでの手続きが遅れ、受給期間1年の枠を越えてしまう取りこぼしは、実務上しばしば見られます。

チェック1:退職前に必ず整理しておきたい事項

人事・総務として確認したいポイント

  • 退職給付金(退職金等)の支給予定額(税引前)と、支給予定日を本人に書面等で明示しているか。
  • 雇用保険上の離職理由(自己都合・会社都合・契約満了・特定理由離職者相当など)の事実関係を、退職面談記録等で整理しているか。
  • 退職後に失業手当を受給するには、求職申込と受給資格決定が必要であり、受給期間は「離職日の翌日から原則1年」であることを本人に説明しているか。
  • 定年退職や健康上の理由など、受給期間延長制度の対象となり得るケースについて、その存在だけでも事前に案内しているか。
離職票の離職理由は、「事実に基づいて」記載する必要があります。そのうえで、健康上の理由や家族の介護など、特定理由離職者に該当し得る事情がある場合には、退職面談の記録や診断書の有無などを控えておくと、ハローワークでの確認がスムーズになります。

チェック2:退職直後〜ハローワーク初回手続き

  • 退職後、会社から「離職票-1」「離職票-2」を原則として10日以内を目安に交付しているか。
  • 本人が、自身の住民票上の住所地を管轄するハローワークを把握しているか(転居予定があればその点も含めて案内しているか)。
  • 初回手続きに必要な書類(離職票、マイナンバー確認書類、本人確認書類、写真、通帳等)の一覧を案内しているか。
  • 「求職申込・受給資格決定 → 待期7日 →(自己都合等の場合の給付制限)→ 4週間ごとの失業認定 → 振込」というおおまかな流れを説明し、退職給付金があっても手続きは早めに行う必要があることを伝えているか。
自己都合退職等の場合、待期7日後に原則1か月(一定要件で3か月)の給付制限がかかります。この間は基本手当が支給されないため、退職給付金で生活をカバーすることになりますが、「退職給付金で1年生活してから残りの失業手当をまとめて受け取る」ことはできません

チェック3:失業手当の受給要件(「失業の状態」と被保険者期間)

受給の2本柱

  • ① 「失業の状態」にあること
    ・就職しようとする積極的な意思があること。
    ・いつでも就職できる健康状態・環境にあること。
    ・求職活動をしているにもかかわらず職に就けていない状態であること。
    ※専業の起業準備、専業主婦(夫)として家事専念、在学専念のみの場合は、原則として「失業」とは認められません。
  • ② 雇用保険の被保険者期間が足りていること
    ・通常:離職前2年間に「賃金支払基礎日数11日以上」等の月が通算12か月以上。
    ・倒産・解雇等の一定の場合:離職前1年間に同条件の月が通算6か月以上。
退職給付金が多いか少ないかは、上記の受給要件とは直接関係しません。退職給付金がある方についても、他の離職者と同様に、「失業の状態」と被保険者期間の要件を満たすかどうかで判断されます。

チェック4:退職前に基本手当額の「目安」を共有できているか

退職給付金との組み合わせを考えるうえで、退職者本人に失業手当のおおよその金額感を把握してもらうことは有用です。基本手当日額は「離職前6か月の賃金合計÷180」に給付率を掛け、年齢区分ごとの上限・下限を適用して計算されますが、ここでは概算イメージとして月額ベースの目安を示します。

離職前の平均月収(賞与除く) 離職時の年齢例 基本手当の月額イメージ 補足
20万円程度 40代前半 約13.5万円 月収の7割弱を想定(上限・下限の範囲内)
30万円程度 40代後半 約16.5万円 月収の6割強を想定
35万円程度 50代後半 約18万円 年齢区分ごとの上限額に近づく水準

実際の基本手当日額・月額は、離職前6か月の賃金額や年齢区分ごとの上限・下限額によって異なります。最新の上限・下限額や詳細な算定方法は、厚生労働省「離職されたみなさまへ<失業給付(基本手当)のご案内>」等でご確認ください。

チェック5:シミュレーター利用前に本人と共有しておく4つの情報

退職給付金と失業手当を組み合わせた資金計画を検討する際は、失業手当シミュレーターで概算を把握してもらうとわかりやすくなります。その前提として、少なくとも次の4点を本人と共有しておくとスムーズです。

  • 離職日と離職時の年齢(受給期間の起算日と、所定給付日数・基本手当日額の上限額の判定に影響)
  • 離職理由の区分(自己都合・会社都合・特定理由離職者など)(給付制限の有無や必要な被保険者期間の要件に影響)
  • 離職前6か月の総支給額(賞与を除く)(賃金日額と基本手当日額を概算する前提)
  • 雇用保険の被保険者期間(通算年数)(所定給付日数=90〜360日の区分を確認するために必要)

失業手当シミュレーターで「退職給付金+失業手当」の全体像をつかむ

年齢・離職理由・離職前6か月の賃金・被保険者期間などを入力すると、基本手当日額・所定給付日数・給付制限の有無といった概算値を確認できる失業手当シミュレーターがあります。退職給付金と失業手当を組み合わせた生活資金のイメージづくりにご活用ください。実際の給付内容は離職票等に基づき所轄ハローワークが決定する点は、あわせてご説明ください。

チェック6:退職給付金+失業手当で「何か月暮らせるか」の見える化

退職給付金がある方の場合、「退職給付金だけで生活する」のか、「失業手当を活用して取り崩しペースを抑える」のかで、再就職までの余裕期間が変わります。人事・総務として、次の観点で本人に整理してもらえるよう案内しておくと、退職後の不安軽減につながります。

  • 毎月の最低限の生活費(固定費+変動費)をおおまかに算出しているか。
  • 退職給付金を「①退職後1〜2年の生活費」「②老後資金・教育費・住宅修繕費」「③突発的支出の予備」に分ける方針を決めているか。
  • シミュレーター等で把握した失業手当の総額(概算)を加え、「退職給付金(生活費用)+失業手当」を毎月の生活費で割ったときの生活可能月数のイメージを持てているか。
退職給付金を老後資金まで含めて一体で使ってしまうと、再就職が長引いた場合に老後資金が大きく目減りするリスクがあります。退職直後から失業手当も織り込んだうえで、「どの程度の期間を目安に、どの水準の条件で再就職を目指すか」を本人と共有しておくことが望ましいといえます。

退職給付金がある人ほど多い「誤解」チェック

  • Q:退職給付金が多いと、失業手当は減らされますか?
    A:通常、退職給付金の金額を理由として、雇用保険の基本手当が減額・不支給になることはありません。基本手当日額や所定給付日数は、主として離職前6か月の賃金額、被保険者期間、離職理由などに基づき決定されます。
  • Q:退職給付金だけで1年生活し、その後に失業手当をまとめて受給できますか?
    A:基本手当には「離職日の翌日から原則1年間」という受給期間があり、この期間を過ぎると、所定給付日数が残っていても受給できません。受給期間の延長制度はありますが(病気・出産・育児・介護・定年後の休養等)、いずれも要件や申請期限が定められており、無条件に延ばせるものではありません。
  • Q:失業中にアルバイトをすると、退職給付金や失業手当に影響しますか?
    A:退職給付金そのものとは直接関係しませんが、失業手当の観点では、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合などは「就職」とみなされ、基本手当が受給できなくなります。また短時間就労でも、収入状況等によっては基本手当が減額または不支給となる場合があります。働いた事実を申告しないと不正受給とみなされ、返還・納付等の厳しい措置を受ける可能性があります。

まとめ:退職給付金がある人ほど「時期」と「情報整理」をチェック

  • 退職給付金の有無や金額自体は、失業手当の受給資格や金額を直接左右しないが、安心感から手続きが遅れ、受給期間1年の枠を超えて取りこぼすリスクは高まりやすい。
  • 退職前に、退職給付金の支給予定額・支給時期、離職理由、被保険者期間を整理し、退職後できるだけ早くハローワークで求職申込を行うよう本人に案内することが重要である。
  • 失業手当シミュレーター等で基本手当日額・所定給付日数・給付制限の有無(概算)を把握し、「退職給付金(生活費用)+失業手当」を毎月の生活費で割ることで、「何か月くらい求職活動に専念できるか」を具体的にイメージできる。
  • 退職給付金が高額な場合ほど、「生活費用」「老後資金」「予備資金」を分けて考え、失業手当をどの時期から受給するかを前提に資金計画を整理しておくことが望ましい。

本記事は、雇用保険制度および退職給付制度に関する一般的なルールに基づいて、退職給付金がある場合の失業手当のチェックポイントを整理したものです。実際の退職給付金額・税額・基本手当日額・所定給付日数・給付制限の有無等は、会社の制度および雇用保険の運用により異なります。具体的な給付内容は離職票および求職申込時の内容に基づき、所轄ハローワークの決定に従ってご確認ください。

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