退職給付金の一括受給と失業手当の関係を金額例でわかりやすく

失業手当シミュレーター 新着記事

退職給付金の一括受給と失業手当の関係を金額例でわかりやすく
退職給付金の一括受給と失業手当の関係を金額例でわかりやすく

目次

退職給付金の一括受給と失業手当の関係を金額例でわかりやすく

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

退職給付金(退職金等)を一括で受け取ったうえで、その後に雇用保険の基本手当(失業手当)を受け取ると、「合計いくら手元に残るのか」「何か月くらい生活費をカバーできるのか」が気になるところです。本記事では、退職給付金200万円・300万円・600万円の3つの金額モデルを用いながら、失業手当との関係を金額ベースで整理します。記載の数字はすべてモデル例であり、実際の受給可否・日額・日数・給付制限の有無等は所轄ハローワークの決定が優先されます。

退職給付金と失業手当は「別の制度」だが、生活費としては一体で考える

項目 退職給付金(退職金等) 雇用保険の基本手当(失業手当)
根拠 会社の就業規則・退職金規程・退職給付制度 雇用保険法に基づく公的給付
支給義務 制度を定めた会社のみ支給(法定義務ではない) 受給要件を満たせば、公的保険として支給
支給方法 退職後1〜2か月以内に一括支給が多い 求職申込→待期7日→(給付制限)→4週間ごとの認定に応じて分割支給
税・社会保険 退職所得として課税(退職所得控除・1/2課税などの優遇あり) 所得税・住民税・社会保険料ともに非課税
相互の影響 金額が多い/少ないこと自体で失業手当が減額・不支給になることは通常ない 基本手当日額は離職前6か月の賃金から算定され、退職給付金額とは直接連動しない
退職給付金の一括受給額が多いからといって、そのことだけを理由に失業手当が減額されたり、受給できなくなったりすることは通常はありません。重要なのは、両者を足した「総額」と、それを「毎月いくら使うか」という生活費の基準です。

前提となる失業手当の金額イメージ

モデルケースでは、離職前の平均月収と年齢から、おおよその基本手当月額を次のように置いています。

離職前の平均月収(賞与除く) 離職時の年齢例 基本手当の月額イメージ 補足
20万円程度 40代前半 約13.5万円 月収20万円水準のおおよそ7割弱を想定
30万円程度 40代後半 約16.5万円 月収30万円水準のおおよそ6割強を想定
35万円程度 50代後半 約18万円 上限額に近づく水準を想定

※ 実際の基本手当日額は、「離職前6か月の賃金合計÷180」で算出した賃金日額に給付率(おおよそ45〜80%)を掛け、年齢区分ごとの上限・下限を適用して決定されます。最新の上限額・下限額は厚生労働省公表資料をご確認ください。

前提となる受給期間・給付制限の整理

退職給付金の一括受給とあわせて失業手当を考える際に、最低限押さえておきたい受給ルールのポイントは次の3点です。

  • 受給期間:原則「離職日の翌日から1年間」の中で、所定給付日数分を受給する(延長制度を除く)。
  • 待期:求職申込をして受給資格が決定した日から通算7日間は「待期期間」となり、この期間は支給なし。
  • 給付制限:正当な理由のない自己都合退職等の場合、待期満了後に原則1か月の給付制限がかかる(5年以内に3回以上の自己都合離職等がある場合は3か月)。
したがって、自己都合退職では「退職直後〜失業手当が振り込まれるまで」の空白期間が生じやすく、この間を退職給付金の一括受給分でどうカバーするかが重要になります。

金額例①:退職給付金200万円(自己都合・所定給付日数90日)

まずは、比較的コンパクトな退職給付金200万円を、生活費に全額充てる前提のモデルです。

  • 退職給付金(税引後の手取り):200万円(全額を生活費に充当)
  • 離職前の平均月収:20万円
  • 基本手当の月額イメージ:13.5万円
  • 所定給付日数:90日(約3か月)
  • 離職理由:自己都合(待期7日+給付制限1か月と仮定)
  • 毎月の生活費:15万円

1. 退職給付金+失業手当の総額イメージ

項目 計算式 金額(概算)
退職給付金(生活費に充てる分) 200万円
基本手当の総額 月13.5万円 × 約3か月 約40万円
合計 200万円+40万円 約240万円

この約240万円を、毎月15万円の生活費に充てた場合の生活可能月数は次のとおりです。

240万円 ÷ 15万円 ≒ 16か月分

2. 時系列で見たキャッシュフローイメージ

期間 主な収入源 収入内訳(概算) ポイント
退職〜1か月目 退職給付金の一括入金 200万円(うち15万円を1か月目の生活費へ) 離職票の到着・求職申込・待期7日+給付制限1か月で、まだ失業手当は支給されない。
2〜4か月目 退職給付金+失業手当 失業手当:月13.5万円/生活費:月15万円 毎月のうち1.5万円だけ退職給付金を取り崩せばよく、残りは失業手当でカバーできる。
5か月目以降 退職給付金のみ 退職給付金の残額:約200万円−(1か月+3か月×1.5万円)≒ 約193.5万円 193.5万円 ÷ 15万円 ≒ 12.9か月分の生活費をカバーできる。

金額例②:退職給付金300万円(会社都合・所定給付日数120日)

次に、会社都合等で給付制限がなく、所定給付日数もやや長い典型的なモデルです。

  • 退職給付金(税引後の手取り):300万円
    • うち200万円:生活費に充当
    • うち100万円:将来支出(教育費・住宅修繕等)用として温存
  • 離職前の平均月収:30万円
  • 基本手当の月額イメージ:16.5万円
  • 所定給付日数:120日(約4か月)
  • 離職理由:会社都合(給付制限なし)
  • 毎月の生活費:25万円

1. 退職給付金(生活費用)+失業手当の総額

項目 計算式 金額(概算)
退職給付金(生活費に充てる分) 200万円
基本手当の総額 月16.5万円 × 約4か月 約66万円
合計 200万円+66万円 約266万円

266万円で、毎月25万円の生活費を賄う場合の生活可能月数は次のとおりです。

266万円 ÷ 25万円 ≒ 約10.6か月分

2. 時系列で見たキャッシュフローイメージ

期間 主な収入源 収入内訳(概算) ポイント
退職〜1か月目 退職給付金の一括入金+失業手当(途中から) 退職給付金300万円+失業手当16.5万円(待期7日経過後) 給付制限がないため、待期満了直後から失業手当が支給開始。
1〜4か月目 失業手当+退職給付金の一部 生活費25万円−失業手当16.5万円=約8.5万円を退職給付金から補填 4か月で退職給付金から補填するのは約34万円(8.5万円×4か月)に抑えられる。
5か月目以降 退職給付金(生活費用) 退職給付金生活費部分の残額:約200万円−34万円≒166万円 166万円 ÷ 25万円 ≒ 約6.6か月分の生活費をカバー可能。

金額例③:退職給付金600万円(50代後半・所定給付日数150日)

最後に、50代後半で退職給付金600万円を一括受給するようなケースです。老後資金と生活費を分けて考える前提とします。

  • 退職給付金(税引後の手取り):600万円
    • うち300万円:老後資金・住宅修繕など将来目的
    • うち300万円:当面の生活費に充てる
  • 離職前の平均月収:35万円
  • 基本手当の月額イメージ:18万円
  • 所定給付日数:150日(約5か月)
  • 離職理由:自己都合(給付制限1か月)
  • 毎月の生活費:22万円

1. 退職給付金(生活費用)+失業手当の総額

項目 計算式 金額(概算)
退職給付金(生活費に充てる分) 300万円
基本手当の総額 月18万円 × 約5か月 約90万円
合計 300万円+90万円 約390万円

390万円で、毎月22万円の生活費を賄う場合の生活可能月数は次のとおりです。

390万円 ÷ 22万円 ≒ 約17.7か月分

2. 「退職給付金をどこまで温存するか」の考え方

パターン 退職給付金の使い方 失業手当の位置づけ メリット・留意点
パターンA
(生活費中心)
生活費22万円全体を退職給付金から厚めに捻出し、老後資金300万円にも一部手を付ける可能性を許容する。 給付制限後〜5か月間の生活費を部分的に補う。 退職直後の生活不安は小さいが、老後資金の減少スピードが速くなりやすい。
パターンB
(老後資金重視)
生活費22万円のうち、退職給付金からの取り崩しを月数万円程度に抑え、老後資金300万円は手つかずに近い状態で維持する。 できるだけ早期に受給開始し、生活費のベースとして利用。 退職給付金の残高を大きく保てる一方で、早期の求職活動が前提になりやすい。

退職給付金一括受給と失業手当を組み合わせる3ステップ

ステップ1:退職給付金を「生活費用」と「将来目的」に分ける

  • ① 退職後1〜2年の生活費として使う部分
  • ② 老後資金・住宅修繕・教育費など、将来の大きな支出に充てる部分
  • ③ 予備資金(医療費・家電買い替えなど、突発支出用)

金額例では、①に200万〜300万円程度を配分し、②を別枠にすることで、「生活のためにどこまで崩してよいか」を可視化しています。

ステップ2:毎月の生活費の最低ラインを把握する

区分 主な項目 確認ポイント
固定費 家賃・住宅ローン、光熱費、通信費、保険料、教育費など 短期的に削減しにくいため、「最低限必要な金額」として把握しておく。
変動費 食費、日用品、交通費、交際費、娯楽費など 退職後は一時的に水準を抑えられるか、削減余地を検討する。

ステップ3:失業手当シミュレーター等で3つの数字を確認する

おおよそのキャッシュフローを組むために、少なくとも次の3つを押さえます。

  1. 基本手当日額・月額(離職前6か月の賃金から計算される1日あたりの給付額)
  2. 所定給付日数(年齢・被保険者期間・離職理由により90〜360日の範囲で決定)
  3. 給付制限の有無・月数(自己都合等か会社都合等か、過去5年の自己都合歴などによる)

簡易的なシミュレーションに便利なツール

年齢・離職理由・離職前6か月の賃金などを入力すると、基本手当日額・所定給付日数・給付制限の有無といった概算値を確認できる失業手当シミュレーターがあります。実際の給付内容は離職票と求職申込時の内容に基づきハローワークが決定しますが、退職給付金と組み合わせた生活資金のイメージづくりには有用です。

退職給付金一括受給と失業手当に関するよくある質問

  • Q:退職給付金の一括受給額が多いと、失業手当は減らされますか?
    A:通常、退職給付金の金額を理由として、雇用保険の基本手当が減額・不支給になることはありません。基本手当日額や所定給付日数は、主として離職前6か月の賃金額、被保険者期間、離職理由などに基づいて決まります。
  • Q:退職給付金だけでしばらく生活し、その後に失業手当をまとめて受給することはできますか?
    A:失業手当には原則「離職日の翌日から1年間」という受給期間があり、この期間を過ぎると所定給付日数が残っていても受け取れません。退職給付金だけで当初半年〜1年生活する設計をする場合でも、この1年の枠内で求職申込と受給を行う必要があります(病気等による受給期間延長制度などは別途要件あり)。
  • Q:失業中にアルバイトをすると、退職給付金との関係で問題がありますか?
    A:退職給付金との直接の関係はありませんが、失業手当の観点では、「週20時間以上かつ31日以上の雇用見込み」等に該当すると就職とみなされ、基本手当が受給できなくなります。また、短時間就労でも収入状況によっては基本手当が減額または不支給になる場合があります。働いた事実を申告しないと不正受給となり、最大3倍相当の返還・納付を命じられる可能性があります。

まとめ:一括の退職給付金を「時間で割る」ために失業手当をどう位置づけるか

  • 退職給付金の一括受給額と失業手当の総額を合計し、「毎月の生活費」で割ると、おおよその生活可能月数が見えてくる。
  • 自己都合退職では、待期+給付制限による「空白期間」を退職給付金でどう埋めるかが重要な論点になる。
  • 会社都合退職では、退職直後から失業手当を活用しやすく、退職給付金の取り崩しを抑えつつ生活費を賄える可能性が高い。
  • 退職給付金が高額な50代後半以降では、「生活費用」「老後資金」「予備資金」に分けたうえで、失業手当をどの時期に受給するかを検討すると、退職後の資金計画が整理しやすくなる。

本記事は、雇用保険制度および退職給付制度に関する一般的なルールに基づき、モデルケースとして金額例を示したものです。実際の退職給付金額・税額・基本手当日額・所定給付日数・給付制限等は、会社の制度および雇用保険の運用により異なりますので、具体的な給付内容は離職票および求職申込時の内容に基づき、所轄ハローワークの決定に従ってご確認ください。

📊 社労士監修|様々なシミュレーターをご用意

退職・出産・病気・給与・休暇など、ライフイベントに対応したシミュレーターをまとめてご利用いただけます。

関連記事

この記事へのコメントはありません。

カテゴリー
アーカイブ