退職給付金・失業手当どちらが先?受取タイミングで変わる最適戦略をシミュレーターで

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退職給付金・失業手当どちらが先?
退職給付金・失業手当どちらが先?受取タイミングで変わる最適戦略をシミュレーターで

退職給付金・失業手当どちらが先?受取タイミングで変わる最適戦略をシミュレーターで

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

退職給付金(退職金等)の入金時期と、雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)の受給開始時期の組み合わせによって、「何ヶ月安心して暮らせるか」「いつまでに再就職すべきか」は大きく変わります。本記事では、両者の受取タイミングをどう設計するかの考え方と、失業手当シミュレーターを使った確認ステップを整理します。最終的な受給可否・日額・日数・給付制限の有無は、所轄ハローワークの決定によりご確認ください。

「どちらが先か」で悩むポイント

実務のご相談では、次のような不安や疑問がよく挙がります。

  • 退職給付金の入金時期は分かるが、その前後の生活費をどうつなぐかが見えない。
  • 自己都合退職などで、失業手当の受給開始までに「待期+給付制限」の空白が生じる。
  • 早めに就職すると再就職手当のチャンスはあるが、失業手当の一部は受け取らずに終わる。
  • 退職給付金をどこまで生活費に充て、どこから老後資金などに回すかの線引きが難しい。
「退職給付金と失業手当のどちらを先に受けるか」というよりも、①入金タイミング ②総額 ③再就職までの想定期間を並べて比べることが重要です。

退職給付金と失業手当の性格の違い

項目 退職給付金(退職金等) 雇用保険の基本手当(失業手当)
制度の根拠 会社の就業規則・退職金規程・退職給付制度 雇用保険法に基づく公的給付
支給義務 法定義務ではなく、制度を定めた会社のみ支給 受給要件を満たせば、公的保険として給付
受給条件 勤続年数・退職理由など会社ごとの基準 被保険者期間・失業の状態・離職理由などの法定要件
受取タイミング 退職後1〜2か月以内の一括支給が多い 求職申込→待期7日→(給付制限)→4週間ごとの認定に応じ分割支給
税・社会保険 退職所得として有利な税制(退職所得控除等)がある 所得税・住民税・社会保険料の課税対象外

「どちらを先に使うか」を決める3つの軸

1. 空白期間をどう埋めるか(タイミングの軸)

多くのケースで、退職給付金は比較的早い段階で一括入金されるのに対し、失業手当は手続き・待期・給付制限・認定サイクルを経て、数週間〜数か月のタイムラグを伴って支給されます。特に自己都合退職などでは、待期7日+給付制限(原則1か月、一定の場合は3か月)により、退職直後の「無収入期間」が発生し得ます。

2. 生活可能月数(総額の軸)

受取順の議論の前提として、まずは合計で何ヶ月生活できるかを押さえます。

生活可能月数 ≒ (退職給付金のうち生活費に充てる金額 + 失業手当の総受給見込み額) ÷ 毎月の生活費

ここでの「失業手当の総受給見込み額」は、概ね
基本手当日額 × 所定給付日数 で把握できます(賃金日額×給付率〔おおよそ5〜8割〕をベースに算出し、年齢・賃金水準ごとの上限・下限が適用されます)。

3. 再就職までの想定期間(キャリアの軸)

再就職までにどの程度の時間をかけるかにより、「退職給付金を厚く残すべきか」「失業手当を活かして早期就職を目指すか」が変わります。早期就職を想定する場合は、一定の要件を満たしたときに支給される再就職手当・就業促進定着手当なども含めて全体像を確認する必要があります。

失業手当の受給開始タイミングの整理

「どちらが先か」を検討するうえで、失業手当の支給開始までの流れと給付制限を押さえておくことが不可欠です。

  1. 離職(退職)
  2. 離職票の交付・受領
  3. ハローワークで求職申込・受給資格の決定
    ・必要書類:離職票、本人確認書類、マイナンバー、写真、通帳等
    ・ここで離職理由区分、被保険者期間、所定給付日数、受給期間などが確定します。
  4. 待期期間(7日間)
    ・この間は、基本手当は支給されません。
  5. 給付制限(自己都合退職等の場合)
    ・正当な理由のない自己都合退職などでは、待期満了後に給付制限(原則1か月、過去の自己都合離職歴等により3か月の場合あり)がかかることがあります。
  6. 4週間ごとの失業認定と分割支給
    ・認定対象期間の失業の状態・求職活動の実績が認定され、その日数分の基本手当が、認定日の約1週間後を目安に指定口座へ振り込まれます。
退職給付金は「早期の一括入金」、失業手当は「時差を伴う分割給付」と整理できます。したがって、退職直後〜失業手当の受給開始までの空白期間を退職給付金でどこまでカバーするかが、受取順を検討する際の大きな論点になります。

タイミング別のイメージモデル

以下は、退職給付金と失業手当の受取タイミングを比較するためのイメージモデルです。金額や給付日数・給付制限の有無は、実際には個別の条件により異なります。

ケース 退職給付金(生活費に充てる分) 失業手当の受給開始 空白期間の主なカバー手段 考え方のポイント
自己都合退職・単身 150万円 退職後 約1.5〜2か月後(待期+給付制限) 退職給付金で2〜3か月分の生活費を確保 退職給付金を「当面の現金」に厚めに配分し、失業手当はその後の月次補填として位置づける。
会社都合退職・家族持ち 300万円 退職直後の待期7日後、給付制限なしで開始 失業手当で月々のベースを確保し、退職給付金は将来支出や予備に温存 退職給付金の取り崩しを抑え、「失業手当+一部取り崩し」でバランスを取る。
50代後半・持ち家 500万円 退職後 約1.5〜2か月後 退職給付金を老後資金・修繕費と生活費用に分けて配分 失業手当の受給期間・総額と「何歳まで働くか」のキャリアプランを合わせて検討する。

シミュレーターでまず確認すべき3つの数字

退職給付金と失業手当の「どちらを先に使うか」を判断するにあたり、失業手当シミュレーター等で最低限次の3点を押さえておくと整理がしやすくなります。

  1. 基本手当日額
    ・離職前6か月の賃金合計(賞与を除く)を180で割った「賃金日額」に給付率(おおよそ5〜8割)を掛けて算定され、年齢・賃金水準ごとに上限額・下限額が設けられています。
  2. 所定給付日数
    ・被保険者期間・離職時年齢・離職理由に応じて90〜360日の範囲で決まります。倒産・解雇等のケースや一定の有期契約満了などでは、一般の自己都合退職より手厚くなる場合があります。
  3. 給付制限の有無と長さ
    ・自己都合退職などの場合、待期満了後に原則1か月の給付制限がかかる取扱いとなっていますが、過去の自己都合退職歴等によっては3か月となる場合があります。会社都合退職などでは給付制限がかからないこともあります。

まずは「自分の失業手当」の目安を知る

年齢・離職理由・離職前6か月の賃金などを入力すると、基本手当日額・所定給付日数・給付制限の有無などの概算が分かる失業手当シミュレーターがあります。最終的な決定はハローワークになりますが、「退職給付金とどう組み合わせるか」を考えるうえでの前提情報として有用です。

退職給付金・失業手当を組み合わせる具体ステップ

ステップ1:退職給付金の用途を3つに分ける

  • ① 当面の生活費として使う分
  • ② 将来の大きな支出(住宅修繕・教育費・老後資金など)に充てる分
  • ③ 予備資金(緊急時の医療費・家電の買替え等)

「①生活費として使う分」が、退職直後の空白期間や、失業手当の受給終了後〜再就職までのブリッジとしてどの程度機能するかを見ていきます。

ステップ2:毎月の生活費の最低ラインを整理する

区分 主な項目 確認ポイント
固定費 家賃・住宅ローン、光熱費、通信費、保険料、教育費など 契約見直しや一時的削減の余地がないか、中長期的な観点で確認する。
変動費 食費、日用品、交通費、交際費、娯楽費など 退職後の生活スタイルに応じて、「最低限必要なライン」と「削減可能な部分」を切り分ける。

ステップ3:1年間程度のキャッシュフローをざっくり作る

退職給付金(生活費用)と、シミュレーター等で把握した失業手当の金額・時期を組み合わせ、退職後1年程度を目安に「どの月にいくら入るか/出るか」を一覧にすると、受取順のイメージが具体化します。

期間 主な収入源 備考
退職〜1か月目 退職給付金(生活費用) 離職票の到着・求職申込・待期期間など。失業手当はまだ支給されない。
2〜3か月目 退職給付金+失業手当(給付制限なしの場合) 自己都合退職で給付制限がある場合は、この期間も退職給付金が主な生活原資となる。
4か月目以降 失業手当+退職給付金の残額 再就職の時期や、再就職手当の可能性も含めて検討する。

「どちらを先に使うか」を判断するための3ステップ

  1. 退職給付金のうち、生活費に充てる金額と将来目的の金額を明確に分ける。
  2. 失業手当シミュレーターで、基本手当日額・所定給付日数・給付制限の有無の目安を確認する。
  3. 退職後1年程度の月次キャッシュフローを作成し、退職給付金でカバーすべき「空白期間」と、失業手当でカバーできる期間を見える化する。

受取タイミングで特に注意したい点

  • 失業手当の「受給期間」は、原則として離職日の翌日から1年間であり、この期間を過ぎると所定給付日数が残っていても受給できません。
  • 病気・けが・妊娠・出産・育児・介護・定年後の休養など、一定の事情がある場合には受給期間の延長制度がありますが、「受給できる期間」を後ろにずらす制度であり、給付日数そのものが増えるわけではありません。
  • 退職後しばらく仕事探しをせずに過ごすことを想定する場合、いつ求職申込をするか(=失業手当をいつから受けるか)によって、退職給付金の使用ペースが大きく変わります。
  • 60歳以降・年金受給年齢に近いケースでは、年金との併給調整や高年齢求職者給付金との関係なども含め、退職日と受給開始時期の組み合わせに注意が必要です。
  • 離職理由を実態と異なる形で処理した場合、不正受給と判断されるリスクがあり、最大3倍相当の返還・納付命令など厳しい処分があり得ます。離職票の記載は実態に沿った内容とすることが前提です。

よくある質問(FAQ)

  • Q:退職給付金が多いと、失業手当が減額されたり、受給できなくなったりしますか?
    A:退職給付金の金額そのものを理由として、雇用保険の基本手当の受給資格がなくなったり、基本手当日額が減額されたりすることは通常はありません。受給の可否や日額・給付日数は、主として離職前の賃金額・被保険者期間・離職理由などの条件に基づき決定されます。
  • Q:退職給付金を先に全額使ってから、後から失業手当を受け取ることはできますか?
    A:退職給付金の使い方自体は自由ですが、失業手当には原則として「離職日の翌日から1年間」という受給期間があります。この期間を過ぎると、所定給付日数が残っていても受給できませんので、「退職給付金だけで生活し、失業手当は後でまとめて」という設計は、受給期間との兼ね合いに十分な注意が必要です。
  • Q:この記事のモデルケースどおりの月数分、実際に生活できますか?
    A:本文中の試算はあくまで概算モデルです。実際の生活可能月数は、退職給付金の税引後手取り額、基本手当日額・所定給付日数、給付制限の有無、実際の生活費水準、再就職のタイミングなどにより変動します。具体的な給付内容は、離職票や求職申込時の内容に基づき、所轄ハローワークが決定することになります。

参考リンク

本記事は、執筆時点で公表されている雇用保険制度および退職給付制度に関する一般的な情報をもとに構成したものであり、すべての方の個別事情を反映したものではありません。実際の給付の有無・金額・日数・給付制限等は、離職票や求職申込時の内容に基づく所轄ハローワークおよび各制度の運営主体の判断が優先されます。

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