目次
- 1 退職給付金と失業手当、まず何を優先する?シミュレーターで即チェック
- 1.1 まず押さえる結論(ひとことで)
- 1.2 前提として押さえるべき「失業手当」の基本
- 1.3 優先判断のための3つの視点(実務フレーム)
- 1.4 実務での即チェック手順(5〜10分でできる骨格)
- 1.5 まずはシミュレーターで“あなたの数字”を概算する
- 1.6 数字で見る簡易比較(単身・家族持ちのイメージ)
- 1.7 退職金と失業手当の関係で誤解しやすいポイント
- 1.8 再就職手当・就業促進定着手当との関係
- 1.9 実務チェックリスト(優先決定のための最小ルール)
- 1.10 優先を決めるなら「数字」と「制度の枠」を並べて確認
- 1.11 よくある質問(FAQ)
- 1.12 参考・公式リンク
- 1.13 📊 社労士監修|様々なシミュレーターをご用意
退職給付金と失業手当、まず何を優先する?シミュレーターで即チェック
監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)
「退職金があるから安心」「失業手当で月々しのげるから退職金は温存」──どちらが正しいかはケースバイケースです。本記事では、雇用保険制度の一般的な仕組みを前提に、優先判断のための実務フレームと、失業手当シミュレーターで概算を把握するための具体手順を示します。数字で整理しつつ、最終的な受給資格や金額は必ず所轄ハローワークの判断で確認することが前提です。
まず押さえる結論(ひとことで)
短期の生活費が足りないなら「退職給付金で当座資金を一部確保」して空白を埋める。中長期でじっくり職探しをするなら「失業手当(基本手当)の受給を前提とした月次キャッシュフロー」を軸に考える。
なお、雇用保険の基本手当を受けるには、離職前の被保険者期間や離職理由、就職の意思と能力があることなど複数の要件があります。受給できるかどうか、また給付日数・日額がどの程度になるかは、最終的には離職票に基づきハローワークが決定します。本記事の内容はあくまで一般的な考え方の整理であり、特定の方の受給を保証するものではありません。
前提として押さえるべき「失業手当」の基本
退職給付金と失業手当を比較するには、まず雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)の基本的な仕組みを押さえる必要があります。
- 受給要件のイメージ:原則として、離職前2年間に「被保険者期間」が通算12か月以上あること(会社都合等一部のケースでは1年に6か月以上で足りる場合あり)。
- 失業の状態:離職しており、就職が内定・決定しておらず、「就職する意思」「就職できる健康状態と環境」があり、求職活動を行っていること。
- 手続きの流れ:離職票等を持参してハローワークで受給手続き → 7日間の待期期間 →(自己都合等の場合は一定期間の給付制限)→ 4週間ごとの失業認定 → 基本手当の振込、という流れになります。
- 給付額の目安:離職前6か月の賃金合計÷180=賃金日額、そのおよそ5〜8割が基本手当日額となり、賃金が低い方ほど給付率が高くなる仕組みです(年齢区分ごとの上限額・下限額あり)。
※実際の受給資格・所定給付日数・基本手当日額は、住居地を管轄するハローワークが離職票等に基づき個別に決定します。
優先判断のための3つの視点(実務フレーム)
退職給付金と失業手当を「どちらを先に使うか」「どれだけあてにするか」を考える際、次の3つの視点で整理すると、従業員にも説明しやすくなります。
-
空白期間(現金化のタイミング)
・退職金(退職一時金・退職年金の一時金部分など)の支給時期が、就業規則・退職金規程でいつになっているか。
・失業手当は、離職後すぐに自動で振り込まれるわけではなく、ハローワークで受給手続きを行い、7日間の待期期間と、離職理由に応じた給付制限期間を経てから支給が始まります。
・この間の「無収入期間(生活費の空白)」をどう埋めるかが、実務上の最初の論点になります。 -
総手取り(税・社会保険・控除を含めた実額)
・退職給付金の一時金部分には「退職所得控除」があり、勤続年数によっては所得税負担が大きく軽減されます。
・一方、失業手当は所得税・住民税の課税対象ではありませんが、国民健康保険料や住民税の計算、国民年金保険料の納付など、別のコスト要素があります。
・退職金の税負担と、失業手当の総受給見込み額(基本手当+早期再就職の場合の再就職手当等)を合わせて、「手取りベース」で比較する視点が重要です。 -
キャリア戦略(再就職手当・就業促進定着手当等の活用)
・早期に安定した就職をした場合、一定の要件を満たせば「再就職手当」(基本手当の残日数の一部を一時金で受給)が支給される場合があります。
・再就職後の賃金が離職前より下がった場合、追加で「就業促進定着手当」の対象となるケースもあります。
・退職金だけを頼りに早期就職してしまうと、こうした雇用保険上の一時金を結果的に活用できなかった、ということもあり得ます。もっとも、再就職手当等はあくまで一定の要件を満たした場合に限られるため、「必ずもらえる前提」で生活設計を組まず、可能性として評価するにとどめることが現実的です。
実務での即チェック手順(5〜10分でできる骨格)
実際のご相談対応では、細かいシミュレーションに入る前に、以下のような「ざっくり5ステップ」で状況把握を行うとスムーズです。
-
直近6か月の給与合計をメモする(賞与は通常除外)
・雇用保険の基本手当日額は、「離職前6か月の賃金総額 ÷ 180」をベースに算出されます。
・源泉徴収票や給与明細から、総支給額ベースで6か月分を把握しておくと試算がしやすくなります。 -
退職金の金額・支給予定日(会社規程)を確認する
・退職金規程・就業規則で「支給日(退職翌月○日払い」「年度末一括」など)」を確認します。
・分割支給(退職年金)と一時金を併用している場合は、それぞれのスケジュールも確認しておきます。 -
失業手当シミュレーターで「日額・支給日数・開始時期の目安」を出す
・年齢・離職理由・賃金情報などを入力すると、所定給付日数や基本手当日額の概算が把握できます。
・ただし、実際の給付開始時期は「ハローワークで受給手続きを行った日」「待期期間7日」「離職理由に応じた給付制限(自己都合退職等の場合)」により変動します。
・シミュレーターの結果はあくまで参考値であり、最終的な受給資格・日額・日数・支給時期はハローワークの審査結果が優先されます。 -
「空白期間分の必要現金」を計算し、退職金でどの程度カバーするかイメージする
・標準的な月間生活費(家賃・食費・光熱費・保険料・教育費など)を洗い出し、無収入期間が何か月程度生じそうかを想定します。
・「生活費 × 空白月数」で概算の必要現金を出し、そのうち退職金からどの程度当てるか、普通預金や他の貯蓄とどう組み合わせるかを考えます。 -
再就職手当や就業促進定着手当の可能性を確認し、早期就職のインセンティブを整理する
・ハローワークや公式リーフレット等で、再就職手当・就業促進定着手当の支給要件(待期満了後の就職、基本手当の残日数、1年以上の雇用見込みなど)を確認します。
・「一定期間は失業手当を受けながら職探し → 条件が合えば早期就職で再就職手当」という選択肢と、「退職金を軸に短期集中で次を決める」選択肢を、リスク・メリットの両面から比較します。
まずはシミュレーターで“あなたの数字”を概算する
年齢・直近6か月の賃金・離職理由などを入力することで、受給見込み(日額・所定給付日数・支給開始時期の目安)を試算できます。生活設計や退職給付金とのバランスを検討するうえで、有用な事前材料になりますが、実際の受給可否・金額等は必ずハローワークで確認してください。
数字で見る簡易比較(単身・家族持ちのイメージ)
以下は、ごく単純化したモデルケースです。実際の退職金額・基本手当日額・所定給付日数は、勤続年数・賃金水準・年齢・離職理由などにより大きく異なります。必ず個別の数値をシミュレーターやハローワークの判定で確認してください。
| モデル | 退職金(例) | 失業手当(概算・月) | 優先案(実務上のイメージ) |
|---|---|---|---|
| 単身(年収300万程度) | ¥200,000 | ¥90,000/月 程度 (離職前6か月の賃金水準・年齢により変動) |
退職金の一部で空白1〜2か月分の生活費を確保しつつ、その後は失業手当の月次給付で補填するイメージ。 |
| 家族持ち(年収500万程度) | ¥1,000,000 | ¥250,000/月 程度 (上限額・下限額の範囲内での概算) |
退職金から当座資金を確保しつつ、失業手当で家計のベースを維持。税負担(退職所得控除)と、再就職手当の可能性も合わせて検討。 |
※上記の月額はあくまでイメージです。基本手当日額は「離職前6か月の賃金総額 ÷ 180 × 給付率」で決まりますが、年齢区分ごとの上限額・下限額があり、実際の支給額は離職票に基づきハローワークで計算されます。
退職金と失業手当の関係で誤解しやすいポイント
退職給付金と雇用保険の関係について、従業員から特によくある誤解と、それに対する整理をまとめます。
-
「退職金を受け取ると失業手当は受けられないのでは?」
・退職金を受け取ったこと自体で、雇用保険の基本手当の受給資格が自動的に消滅することは一般的にはありません。
・基本手当の受給資格は、「離職前の被保険者期間」「離職理由」「失業の状態(就職の意思と能力)」などで判断されます。
・もっとも、高額の退職金により当面働く意思がないと見なされるようなケースでは、「失業の状態」の要件に影響し得るため、生活設計と就職の意思をどのように持つかが重要になります。 -
「早く次に就職すれば、必ず再就職手当がもらえるのでは?」
・再就職手当には、「受給手続き後7日間の待期満了後に就職していること」「基本手当の残日数が所定給付日数の一定割合以上あること」「1年以上の雇用見込みがあること」など、複数の要件があります。
・退職金を受け取ったかどうかではなく、雇用保険の手続き状況・残日数・就職時期・雇用形態などが審査対象です。
・したがって、「退職金だけで生活している間にすぐ働けば必ず再就職手当が出る」というわけではない点に注意が必要です。 -
「失業手当をもらうためには、すぐに求職申込みが必要か?」
・基本手当の受給期間は、原則として「離職日の翌日から1年間」です。この期間内に受給手続きをしないと、所定給付日数が残っていても受給できなくなる可能性があります。
・病気や育児、介護等で30日以上就職できない期間が続く場合などは、「受給期間の延長」を申請できる場合もありますが、これはあくまで例外的な取扱いです。
・退職給付金と失業手当のどちらを「先に使うか」を考える際には、この1年(延長を含む)の枠組みも念頭に置く必要があります。
再就職手当・就業促進定着手当との関係
早期に安定就労すれば、一定の要件を満たす場合に再就職手当(基本手当の残日数の一部を一時金として受給)を受けられることがあります。さらに、再就職後の賃金水準が離職前より下がった場合には、就業促進定着手当の対象となるケースもあります。
再就職手当の具体的な要件のイメージは、次のようなものです(実際には細かな条件があります)。
- 受給手続き後、7日間の待期期間満了後に就職または事業を開始していること。
- 就職時点で、基本手当の支給残日数が所定給付日数の一定割合(1/3以上等)以上残っていること。
- 1年を超えて勤務することが見込まれる雇用であり、雇用保険の被保険者となること。
- 離職した会社と実質的に同じ事業主ではないこと、など。
退職給付金だけを頼りに短期間で就職すると、タイミングや手続きによっては再就職手当の要件を満たさず、一時金を受け損なう可能性があります。一方で、再就職手当はあくまで「要件を満たした場合に支給されるもの」であり、将来の支給を前提に生活費を固定的に組み立てるのは慎重に考える必要があります。
退職給付金と失業手当のバランスを考える際は、「生活費の空白を最小化する」「再就職手当等の可能性を評価する」「受給期間(原則1年)の枠内でどう動くか」という観点で整理すると、従業員への説明もしやすくなります。
実務チェックリスト(優先決定のための最小ルール)
従業員から退職前後に相談を受けた場合、次の項目を最低限確認しておくと、退職給付金と失業手当の優先順位を整理しやすくなります。
- 離職票の発行予定時期と、退職金の支給予定日・支給方法(一時金・分割など)を会社として文書で案内する。
- 従業員に対し、失業手当の受給見込み(日額・所定給付日数・支給開始の目安)は、シミュレーターやハローワークで確認してもらうよう案内する。
- 生活費の目安(月額)を本人に試算してもらい、退職金のうち「当座資金」としてどの程度を確保するか、イメージを共有する。
- 早期就職を希望する場合、再就職手当を含めた雇用保険上のメリット・デメリットがあることを説明し、最終的な要件判断はハローワークで確認してもらう。
- 退職所得控除を含めた税負担や、国民健康保険料・国民年金保険料等の負担見込みについては、必要に応じて税務の専門資料や自治体窓口の情報もあわせて確認してもらう。
優先を決めるなら「数字」と「制度の枠」を並べて確認
退職給付金と失業手当の優先度は、「いくら必要か」という金額面に加え、「いつから・いつまで受け取れるか」という制度上の枠組みも含めて整理する必要があります。まずは失業手当シミュレーターで受給見込みの概算を出し、退職給付金との組み合わせを手取りベースで比較してください。そのうえで、実際の受給資格・金額・時期は、離職票をもとに所轄ハローワークで最終確認することが重要です。
よくある質問(FAQ)
-
Q:退職金を先に受け取ると失業手当はもらえなくなりますか?
A:退職金を受け取ったこと自体で、雇用保険の基本手当の受給資格が自動的に消滅するわけではありません。基本手当の受給要件は、離職前の被保険者期間や離職理由、「就職の意思と能力」を備えた失業の状態かどうか等で判断されます。ただし、高額の退職金により長期間働く意思がないと判断されるような場合には、失業の状態に当たるかどうかの評価に影響する可能性もありますので、具体の事情はハローワークで確認していただくことが適切です。 -
Q:シミュレーターとハローワークの判定に差はありますか?
A:シミュレーターは、一般的な計算式や条件に基づく概算ツールです。実際の所定給付日数・基本手当日額・給付制限の有無・開始時期などは、ハローワークが離職票等を確認したうえで個別に決定します。そのため、シミュレーターの結果とハローワークの決定が異なることはあり得ます。生活設計を固める際には、あくまで「目安」として利用し、最終判断はハローワークの説明と決定内容を踏まえて行ってください。 -
Q:自己都合退職の場合、どのくらい待たないと失業手当が出ませんか?
A:自己都合退職等の場合、原則として7日間の待期期間に加えて、一定期間の給付制限が設けられています。給付制限の期間や取扱いは、法改正や過去の自己都合退職の回数、教育訓練の受講状況などにより異なるため、最新情報は必ずハローワークで確認していただく必要があります。いずれにしても、退職直後からすぐに基本手当が支給されるわけではない点には注意が必要です。 -
Q:再就職手当を前提に生活設計をしても大丈夫でしょうか?
A:再就職手当は、早期かつ安定した就職を支援するための給付ですが、待期期間満了後の就職であること、一定以上の支給残日数があること、1年以上の雇用見込みがあることなど、複数の要件をすべて満たす必要があります。支給されないケースも少なくありませんので、「もらえたらプラス」と考え、生活の基礎部分は退職給付金と基本手当(受給できる場合)を中心に組み立てる方が安全です。
参考・公式リンク
監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士) — 本記事は、現行法に基づく一般的な実務ガイドです。最終的な給付金額・給付日数・給付制限・受給可否等は、所轄ハローワークの判断が優先されます。最新の法令・通達・運用は、厚生労働省およびハローワークの公式情報をご確認ください。
コメント