目次
- 1 失業・再就職のリアルケーススタディ集|自己都合・会社都合で実際にもらえる手当を具体試算
- 1.1 まず押さえるべき基礎(簡単まとめ)
- 1.2 ケーススタディ(詳解) — 計算の前提と方法
- 1.3 ケースA:自己都合退職 → すぐ再就職(短期ブランク)
- 1.4 ケースB:自己都合退職 → 再就職まで長引く(苦しい期間あり)
- 1.5 ケースC:会社都合退職 → 短期で次が決まった(比較的安心)
- 1.6 ケースD:年配・就職困難者向け(長期支給の例)
- 1.7 実務的アドバイス:申請〜受給までの具体手順(チェックリスト)
- 1.8 生活設計の観点から:受給見込みを家計にどう当てはめるか
- 1.9 よくある質問(FAQ) — 詳しく掘り下げ
- 1.10 図解・表で素早く分かるポイントまとめ
- 1.11 最後に:実践的な「やることリスト」
失業・再就職のリアルケーススタディ集|自己都合・会社都合で実際にもらえる手当を具体試算
植本労務管理事務所 監修
退職・失業・再就職のプロセスは人によって千差万別。この記事では、架空の実例を丁寧に分解し、「いつからもらえるのか」「何日もらえるのか」「再就職したらどれくらいの手当が出るのか」をわかりやすく示します。具体的な金額イメージも提示するので、あなた自身の生活設計に直接使える情報が得られます。
※以下の金額・支給率は例示です。正確な計算は離職票の数値(賃金日額の平均等)を元にシミュレーターで確認してください。
※実際の支給の有無や金額は、最終的にはハローワークの審査・決定によります。
まず押さえるべき基礎(簡単まとめ)
- 待期期間:ハローワークで求職申込みをした日から数えて原則7日間(この間は支給されない)
- 給付制限:自己都合退職の場合、通常は給付制限(原則2か月。ただし特定理由離職者など要件により免除される場合もある)が付く
- 所定給付日数:年齢・加入期間・退職理由で決まる日数(例:90日・150日など)
- 再就職手当:失業手当の受給中に安定した職業に就いた際、支給残日数に応じて支給される一時金(一定の要件をすべて満たした場合に限る)
ケーススタディ(詳解) — 計算の前提と方法
ここからのケースでは、説明をわかりやすくするために以下の前提を置きます(便宜上の例です)。
- ・「賃金日額」は退職前6か月の平均賃金を日割りした値とする
- ・便宜上、賃金日額を「8,000円」「10,000円」「12,000円」などで試算
- ・再就職手当の支給率は例示(残日数により変動)として示す(実際はハローワークが算出)
計算の目安(例)
例)賃金日額が 10,000円 の場合:
- 日額の何割が支給されるか(基本手当日額の目安)→ 仮に 50% とすると 5,000円/日
- 所定給付日数 90日の場合:5,000円 × 90日 = 450,000円
- 月換算(目安)→ 450,000円 ÷ 3か月(90日) ≒ 150,000円/月
※実際の基本手当日額は賃金日額の範囲や年齢で算出式が異なります。ここでは生活イメージをつかむための概算です。
ケースA:自己都合退職 → すぐ再就職(短期ブランク)
【人物】田中さん(35歳、会社員、賃金日額想定10,000円、加入期間:5年)
【状況】家庭の事情で自己都合退職。求職申込みは退職後すぐ(待期7日+給付制限2か月の扱い)。ただし、2か月後に条件の良い職場が見つかり早期就職。
試算(簡易)
- 基本手当日額(仮)= 10,000円 × 50% = 5,000円
- 所定給付日数 = 90日(加入期間5年の目安)
- 総支給見込み = 5,000円 × 90日 = 450,000円
- 再就職手当(早期就職、残日数が多ければ)仮に 支給残日数の60% 相当 → 例:残60日なら 5,000円×60日×60% ≒ 180,000円
- 再就職手当の支給額は、「就職日の前日までに失業の認定を受けたうえで残っている所定給付日数(支給残日数)×所定の支給率」で計算されます。 すでに受け取った分を再就職手当から差し引かれるわけではなく、 「残りの分の何割かを一時金として先にまとめて受け取る」イメージです。
- なお、自己都合退職で給付制限が付く場合、待期満了後1か月間は、 ハローワークまたは許可・届出のある職業紹介事業者の紹介による就職でなければ再就職手当の対象になりません(この期間を経過すれば自己応募も対象となる可能性があります)。
- また、再就職手当を受けるには、1年を超えて勤務することが確実と認められる雇用であり、かつ原則として雇用保険の被保険者となることなど、複数の要件をすべて満たす必要があります。
生活イメージ:失業期間が短ければ、失業手当の総額は減るが、再就職手当でまとまった金が得られる可能性が高い。結果的に受給トータルが変わるため、早期就職が有利なケースが多いです。
※再就職手当の支給要件や具体的な金額は、必ず管轄ハローワークで確認してください。
ケースB:自己都合退職 → 再就職まで長引く(苦しい期間あり)
【人物】佐藤さん(30歳、契約社員→自己都合退職、賃金日額想定8,000円、加入期間:3年)
【状況】辞めた後の再就職活動が長引き、申請が遅れ気味。給付制限があるため最初の2か月は支給なし。申請や求職のタイミング次第で実受給が減る可能性あり。
試算(簡易)
- 基本手当日額(仮)= 8,000円 × 50% = 4,000円
- 所定給付日数 = 90日
- 総支給見込み = 4,000円 × 90日 = 360,000円
- 給付制限(自己都合)で受給開始が後ろにずれると、生活費の不安が長引く
生活イメージ:貯金が少ない場合、申請や求職の遅れが致命的。失業手当をあてにしすぎず、申請準備や早期受給のための行動(ハローワーク相談)を早めに行うことが重要です。
ケースC:会社都合退職 → 短期で次が決まった(比較的安心)
【人物】鈴木さん(42歳、正社員、賃金日額想定12,000円、加入期間:12年)
【状況】会社都合(解雇)で退職。給付制限なし。数か月の求職の後に再就職が決まり、トータルでの受給計画を立てやすい。
試算(簡易)
- 基本手当日額(仮)= 12,000円 × 60%(年齢・賃金により変動) = 7,200円
- 所定給付日数 = 150日(加入期間12年での目安)
- 総支給見込み = 7,200円 × 150日 = 1,080,000円
- 月換算(150日=約5か月)→ ≒ 216,000円/月
会社都合は受給日数が長く、生活設計を立てやすいのが特徴。ハローワークの就職支援も活用しましょう。
ケースD:年配・就職困難者向け(長期支給の例)
【人物】高橋さん(55歳、雇用保険加入歴20年、会社都合で退職)
【状況】年齢的に再就職が難しく、長期の失業支援が必要なケース。就職困難者としての扱いになる場合、所定給付日数がさらに増える可能性がある。
試算(簡易)
- 基本手当日額(仮)= 10,000円 × 60% = 6,000円
-
所定給付日数 = 240日〜330日相当(年齢と条件次第)。
※実際には、障害の有無や疾病、年齢などにより「就職困難者」としてハローワークの認定を受けた場合に、一般の離職者より長い日数が設定されます。 - 総支給見込み(仮)= 6,000円 × 240日 = 1,440,000円
年齢や「就職困難者」と認められるかで大きく変わるため、個別の判断が重要です。実際の日数は、離職票や診断書等をもとにハローワークが決定します。
実務的アドバイス:申請〜受給までの具体手順(チェックリスト)
- 離職票が届いたらすぐに内容(離職日・賃金・離職理由)を確認
- ハローワークで求職申込→受給手続き(必要書類:身分証、離職票、通帳、印鑑、給与明細など)
- 求職活動の記録を残す(ハローワークの紹介状、面接日、応募メールなど)
- 再就職が決まったらハローワークに報告し、再就職手当の申請要件を確認
- 不明点は早めにハローワークへ確認。不審な点があっても実態と異なる申告はしない(不正受給に該当する可能性があるため)
生活設計の観点から:受給見込みを家計にどう当てはめるか
受給見込み金額をそのまま月の生活費に当てはめると危険です。理由は、失業手当は原則日額支給であり、受給のタイミングが分散するためです。以下の考え方で計画を立てましょう。
- 受給見込みを「総額」で把握:総額を把握して、最低限の生活費(家賃・光熱・食費)を何か月分まかなえるか計算
- 毎月のペース配分:受給が分散するため、毎月の入金額が不安定になり得る。貯金の取り崩し計画を併用
- 再就職手当の使いみち:一時的なまとまった資金として、引越・資格取得・生活再建費に使うなど計画的に活用
よくある質問(FAQ) — 詳しく掘り下げ
Q1. 再就職手当はいつもらえる? ▾
Q2. 自己都合退職でも再就職手当をもらえる? ▾
主な要件として、
・就職日の前日までの失業認定を受けたうえで、基本手当の「支給残日数」が所定給付日数の3分の1以上あること
・1年を超えて勤務することが確実と認められる雇用であり、原則として雇用保険の被保険者となること
・離職前の事業主や関連会社への再就職でないこと などがあります。
とくに、自己都合退職などで給付制限が付く場合、待期満了後1か月間は、ハローワークまたは許可・届出のある職業紹介事業者の「紹介」による就職でなければ再就職手当の対象になりません。
給付制限の有無や残日数を確認して、シミュレーターで目安を出したうえで、詳細はハローワークで確認してください。
Q3. 失業手当の金額はどうやって決まる? ▾
Q4. 受給期間内に就職できなかったら? ▾
Q5. 金額が合わない、計算が難しいと感じたら? ▾
Q6. 再就職したら「就業促進定着手当」がもらえることはある? ▾
支給額はおおむね、(離職前の賃金日額 − 再就職後6か月間の賃金の1日額)×6か月分の日数で計算され、上限は「基本手当日額 × 支給残日数 × 20%」です(2025年4月1日以降、給付率は一律20%)。
再就職後に賃金が下がった場合は、該当するかどうかをハローワークで確認してください。
図解・表で素早く分かるポイントまとめ
| 項目 | 自己都合 | 会社都合 |
|---|---|---|
| 給付制限 | あり(原則2か月。条件により免除のケースあり) | なし |
| 待期期間 | 原則7日間 | 原則7日間 |
| 所定給付日数の目安 | 短め(例:90日) | 長め(例:150日以上) |
| 再就職手当 | 条件あり(支給残日数が所定給付日数の3分の1以上/給付制限が付く場合、待期満了後1か月間は紹介経由のみ対象) | 条件あり(支給残日数が所定給付日数の3分の1以上 など) |
最後に:実践的な「やることリスト」
- 離職票を受け取ったらすぐ内容確認 → エラーがあれば会社に連絡
- ハローワークで受給手続きの予約・相談を行う(離職票がなくても相談可)
- シミュレーターで複数パターンを試算(最悪ケース・最良ケース)
- 再就職手当や就業促進定着手当の対象になり得るか、条件面(雇用期間・週の労働時間・賃金水準など)を確認
- 生活費の見直し(最低ラインの把握)と、必要に応じた家計の調整
雇用保険の手当を受ける際に、「離職理由を実際より重い会社都合にしてもらう」「求職活動や就労の事実を隠す」といった行為は、不正受給となるおそれがあります。不正受給となった場合、給付の3倍の納付を命じられたり、刑事罰の対象となる可能性もあるため、実態どおりに申告することが重要です。
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