社労士が解説!退職給付金と失業手当の違い|“感覚”で判断してはいけない理由

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社労士が解説!退職給付金と失業手当の違い|“感覚”で判断してはいけない理由
社労士が解説!退職給付金と失業手当の違い|“感覚”で判断してはいけない理由

社労士が解説!退職給付金と失業手当の違い|“感覚”で判断してはいけない理由

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

「退職金があるからしばらく大丈夫」「失業手当も入るし、なんとかなるはず」――退職時のお金について、このような“感覚的な”把握だけで判断してしまう方は少なくありません。しかし、退職給付金(退職金)と失業手当(雇用保険の基本手当)は、制度の成り立ちも、支給条件も、税金の扱いもまったく異なる別物です。本稿では、両者の違いと押さえるべきポイントを整理し、「どちらで何ヶ月分を賄うのか」を冷静に判断できる状態を目指します。

結論:退職給付金と失業手当は「役割」と「ルール」が全く違う

まず押さえておきたいのは、次の3点です。

  • 退職給付金(退職金):会社が任意で設ける制度であり、就業規則や退職金規程に基づいて支給されるもの(法定義務ではありません)。
  • 失業手当:雇用保険法に基づき支給される「基本手当」などの失業等給付であり、一定の被保険者期間・離職理由・求職活動などの要件を満たした場合に支給される生活保障給付です。
  • どちらも「退職後のお金」ではありますが、目的・計算方法・税金・支給タイミング・手続きがすべて異なるため、混同して計画を立てると資金繰りの誤算につながります。

退職給付金(退職金)の基本:会社ごとの任意制度

退職給付金(退職金)は、法律で一律に支給が義務付けられているものではなく、会社が退職金制度を設けているかどうか、また制度がある場合にはその内容がどう定められているかによって支給の有無や金額が決まります。

  • 退職金制度があるかどうかは、就業規則や退職金規程で確認します。
  • 支給条件(勤続年数・退職事由・在籍区分など)や計算方法は会社ごとに異なります。
  • 自己都合退職・会社都合退職・懲戒解雇などで支給率や支給有無が変わることが一般的です。

なお、中小企業の場合は中小企業退職金共済制度など外部制度を活用しているケースもありますが、いずれにしても「会社として退職金制度を導入しているかどうか」が前提となります。

失業手当(基本手当)の基本:雇用保険に基づく法定給付

一方、失業手当は雇用保険の失業等給付のうち、一般被保険者(原則65歳未満)の方に支給される「基本手当」が中心です。退職前の賃金と被保険者期間、年齢、離職理由などに応じて所定給付日数と給付日額が定まり、再就職までの一定期間にわたり分割して支給されます。

  • 支給の前提として、離職前一定期間の雇用保険加入(被保険者期間)が必要です。
  • 自己都合か会社都合かなどの離職理由により、所定給付日数や給付制限(待期後の一定期間無給となる期間)の有無・長さが変わります。
  • 求職申込、受給資格決定、待期7日間、(必要に応じて給付制限)、4週間に1度の失業認定という流れで支給されます。

一覧で整理:退職給付金と失業手当の主な違い

項目 退職給付金(退職金) 失業手当(雇用保険の基本手当)
制度の根拠 会社が任意で設ける制度(就業規則・退職金規程など)。法令上の支給義務は原則なし。 雇用保険法に基づく失業等給付の一つ。一定の要件を満たした場合に受給できる公的給付。
目的 長期勤続への報奨・老後資金形成・退職後の生活基盤の一部補填など。 離職後の生活費を一定程度保障しつつ、再就職活動を支援すること。
支給主体 会社(または退職金共済制度等の外部機関)。 国(実務上はハローワークを通じて支給)。
支給形態 原則として一時金(一括)。企業年金等で分割(年金形式)される場合もあり。 原則28日ごとの失業認定に応じて、日額×認定日数分が分割で振込。
金額の決まり方 会社ごとの規程に基づき、勤続年数・等級・退職事由などで算定。 離職前の賃金日額、年齢、被保険者期間、離職理由等により、給付日額と所定給付日数が決定。
支給条件 就業規則や退職金規程で定める条件(勤続●年以上、自己都合か会社都合か等)。 一定の雇用保険被保険者期間、離職後の求職申込、就職の意思と能力があることなど。
税金の扱い 「退職所得」として有利な控除・計算方式(退職所得控除+1/2課税など)が適用。 「雑所得」として課税対象(多くのケースで源泉徴収・年末調整等により調整)。
使い方のイメージ 老後資金や将来の大きな支出(住宅ローン繰上返済・教育資金など)も視野に入れた長期資金。 再就職までの生活費(家賃・食費・光熱費など)を一定割合で補う短期~中期資金。
手続き 会社が社内ルールに基づき計算・支給。退職所得の源泉徴収や「退職所得の受給に関する申告書」の取得等。 本人がハローワークで求職申込・受給資格決定・失業認定等の手続きを行う。

“感覚”で判断すると起こりがちな3つの誤算

  • 誤算1:退職金だけで当面の生活費も老後資金も賄えると考えてしまう
    退職金はまとまった額で見えるため、「この金額なら数年は大丈夫」と感じがちですが、税引後の実額・老後までの残り年数・公的年金見込みを踏まえずに取り崩すと、老後資金が不足するリスクがあります。
  • 誤算2:失業手当の開始時期・金額を過大評価してしまう
    実際には、離職票到着・待期7日間・給付制限(自己都合等の場合)などの影響により、最初の振込までに数週間〜数か月かかるケースもあります。また、日額は退職前の賃金のすべてではなく一定割合です。
  • 誤算3:退職金の有無・条件を「なんとなく」で捉えている
    「うちの会社は退職金があるはず」「先輩がこれくらいもらっていたから自分も同程度」といった記憶や噂に頼ると、実際の制度変更や在籍年数、退職事由による差を見落とす可能性があります。

退職給付金と失業手当の「差」を数字で把握しておきましょう

退職金は会社の規程しだい、失業手当は雇用保険のルールしだいで金額も受け取り期間も変わります。退職金規程の内容と、失業手当シミュレーターでの概算結果を並べておくことで、「どちらで何ヶ月分の生活費をカバーするか」を具体的にイメージできるようになります。

ケース別:退職給付金と失業手当をどう組み合わせて考えるか

ケース 退職給付金の位置づけ 失業手当の位置づけ 注意しておきたいポイント
30〜40代・自己都合退職・転職前提 あれば「予備資金」。老後資金として極力温存しつつ、緊急時のみ取り崩し。 次の職に就くまでの生活費を一定割合で支える主役。 給付制限(自己都合などによる待機延長)の有無、受給開始までの空白期間を事前に確認しておく。
50代・会社都合退職・再就職予定あり 退職金のボリュームが大きくなりがち。老後資金と当面の生活費の配分設計が重要。 会社都合の場合、所定給付日数が長めとなることが多く、中期的な生活費の一部をカバー。 退職金を一度に生活費へ回し過ぎないよう、失業手当でカバーできる分とのバランスを確認。
60歳定年退職後、しばらく休養してから求職 老後資金の中核。分割受給の企業年金などがある場合は、公的年金・個人資産と合わせた長期プランを検討。 基本手当の受給期間延長(定年退職後の休養)なども選択肢となり得るが、開始時期に注意が必要。 「いつから働き始めるか」により基本手当の受給タイミングが変わるため、退職金の取り崩しと併せて計画的に検討。

退職前に確認しておきたいチェックリスト

  • 自社の就業規則・退職金規程を確認し、「退職金制度の有無」「支給条件」「支給日」を把握したか。
  • 退職予定日までの勤続年数と退職理由(自己都合・会社都合・定年等)を整理したか。
  • 雇用保険の加入期間(直近の会社だけでなく通算期間)を確認したか。
  • 退職後の希望(すぐ転職活動をするのか、一定期間休養するのか)を整理したか。
  • 退職後1〜3か月分の生活費を、退職金・貯蓄・失業手当のどれでどう賄うか、大まかなイメージを持っているか。

よくある質問(FAQ)

  • Q:退職金と失業手当は両方もらえますか?
    A:はい。退職金は会社の制度に基づく一時金、失業手当は雇用保険に基づく公的給付であり、性質が異なるため、双方の要件を満たせばどちらも受け取ることができます。
  • Q:退職金を先に受け取ると失業手当が減ることはありますか?
    A:一般に、退職金の受給そのものが理由で基本手当の支給日数や日額が直接減ることはありません。ただし、退職パターン(定年後再雇用の有無など)によっては「基本手当」ではなく「高年齢求職者給付金(一時金)」の対象となる場合があります。
  • Q:どちらを生活費の主力と考えるべきですか?
    A:退職金は老後や将来の大きな支出も見据えた中長期資金、失業手当は再就職までの生活費を補う短期〜中期のキャッシュフローと位置づけるのが実務的です。

退職給付金と失業手当の「役割分担」を数字で整理しておきましょう

退職を検討中、あるいは退職直後の方へ。退職金規程と雇用保険の加入状況・離職理由を確認し、「退職金で何ヶ月分」「失業手当で何ヶ月分」をカバーするかを事前にイメージしておくことで、資金面の不安を軽減できます。必要に応じて、具体的なシミュレーションや制度確認を通じて、より現実的なプランを組み立てることも可能です。

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士) — 本記事は、退職給付金(退職金)と雇用保険の失業手当(基本手当)の一般的な違いと実務上の整理ポイントをまとめたものです。具体的な支給可否・金額・給付日数・税額等は、各社の退職金規程および所轄ハローワーク・税務当局等の案内で最終確認してください。

参考リンク(社内説明用に紹介しやすい公的情報)

本記事は、退職給付金および雇用保険の失業給付に関する一般的な考え方と、人事・労務担当者が従業員へ説明する際のポイントを整理したものです。個別の受給要件・金額・給付日数等の詳細は、最新の法令・通達および所轄ハローワーク等の案内をご確認ください。

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