失業手当で生活を守る！計算方法と注意点

退職後の生活を支える失業手当（基本手当）。「いくらもらえるの？」「いつまで受給できる？」「手続きはどうすればいい？」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、失業手当の給付日数・金額の計算方法から、受給要件、手続きの流れ、よくある誤解、注意すべきポイントまで、社労士の視点からわかりやすく解説します。最後には、あなたの給付額を簡単にシミュレーションできるツールもご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

失業手当（基本手当）とは？

失業手当は、雇用保険に加入していた方が離職し、失業状態にある場合に支給される給付金です。正式には「基本手当」と呼ばれ、安定した生活を送りながら1日も早く再就職できるよう支援することを目的としています。

雇用保険の失業等給付には、失業された方が安定した生活を送りつつ、1日も早く再就職できるよう求職活動を支援するための給付として「求職者給付」があり、その中に一般被保険者に対する「基本手当」が含まれています。

失業手当の目的

失業手当は、単なる生活費の補填ではなく、再就職活動を支援するための給付です。そのため、受給するには「失業の状態にあること」が前提となります。

失業手当を受給できる条件

失業手当を受給するには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

① 失業の状態にあること

次の条件をすべて満たしている状態を「失業」といいます。

• 積極的に就職しようとする意思があること
• いつでも就職できる能力（健康状態・環境など）があること
• 積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていないこと

② 雇用保険の被保険者期間の要件

原則として、離職前2年間に12か月以上の被保険者期間が必要です。

ただし、以下のいずれかの条件を満たす場合は、離職前1年間に6か月以上の被保険者期間で足ります。

• 倒産・解雇等の理由により離職した場合
• 期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職した場合

被保険者期間の計算方法

被保険者期間は、離職日から1か月ごとに区切っていった期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と計算します。

また、1か月ごとに区切っていった期間が満1月ない場合でも、その期間の日数が15日以上あり、かつ、その期間内に賃金が支払われた日数が11日以上あるときは、その期間を2分の1か月として計算します。

空白期間がある場合の注意点

被保険者期間に1年を超える空白期間がある場合は、空白の期間の前の被保険者期間は含まず、再就職後から離職までの被保険者期間で算定を行います。

例えば、前職を離職してから現職に転職をするまでの期間が1年超の場合は、現職の被保険者期間のみで算定することになります。

ただし、離職前2年間（倒産・解雇等の場合は1年間）の間に疾病、負傷、出産、育児、海外出向などの理由により引き続き30日以上賃金の支払を受けることができなかった場合は、これらの理由により賃金の支払を受けることができなかった日数を加えた期間（加算後の期間が4年間を超えるときは4年間が最長）により受給に必要な被保険者期間があるか判断します。

失業手当を受給できないケース

以下のような場合は、失業の状態に該当しないため受給できません。

失業手当の金額はいくら？計算方法を解説

失業手当の1日あたりの金額（基本手当日額）は、離職前の賃金をもとに計算されます。

基本手当日額の計算式

具体的な支給額の目安

月額の給与総支給額から、おおよその支給額を確認できます。

基本手当日額の上限・下限

基本手当日額には、年齢区分に応じた上限額・下限額が設定されています。

年齢区分に応じた賃金日額・基本手当日額の上限額（2025年8月1日～）

賃金日額・基本手当日額の下限額

失業手当の給付日数は？離職理由で大きく変わる

失業手当の所定給付日数は、雇用保険の被保険者であった期間、年齢、離職理由によって決定します。

このうち、倒産・解雇等の理由により離職した方（「特定受給資格者」に該当する方）又は期間の定めのある労働契約が更新されなかったことにより離職した方（一部の「特定理由離職者」に該当する方）については、所定給付日数が手厚くなる場合があります。

一般の離職者（自己都合退職など）

自己都合で退職した場合など、一般の離職者の給付日数は以下のとおりです。

特定受給資格者・特定理由離職者

倒産・解雇等の理由により離職した方（特定受給資格者）や、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことにより離職した方（一部の特定理由離職者）は、給付日数が手厚くなります。

特定受給資格者・特定理由離職者の給付日数

特定受給資格者・特定理由離職者とは？

倒産・解雇、契約更新なしなど、会社都合で離職を余儀なくされた方が該当する可能性があります。[id:11074]

特定受給資格者や特定理由離職者に該当するかどうかの判断は、離職理由の詳細によって異なりますので、詳しくはハローワークにご確認ください。

失業手当の受給手続きの流れ

失業手当を受給するには、ハローワークでの手続きが必要です。

受給手続きの基本的な流れ

必要書類チェックリスト

ハローワークでの手続きには、以下の書類が必要です。

失業認定日とは？求職活動の実績が必要

失業手当を受給するには、原則として4週間に1回、ハローワークで失業認定を受ける必要があります。

失業認定日の手続き

求職活動として認められる活動

失業認定を受けるには、求職活動の実績が必要です。

求職活動実績に該当するもの

求職活動として認められないもの

• ハローワーク、新聞、インターネットでの求人情報の閲覧のみ
• 単なる知人への紹介依頼
• インターネット等による民間職業紹介事業者への単なる登録

必要な求職活動の回数

認定日に来所できない場合

認定日に来所しないと、その認定日前日までの認定を受けられず、基本手当は支給されません。

やむを得ない理由がある場合は、事前にハローワークに連絡し、認定日の変更手続きを行ってください。

変更が認められる理由

• 就職（認定日当日のみ働く短期間のものを含む）
• 求人者との面接、選考、採用試験等
• 各種国家試験、検定等資格試験の受験
• 病気、けが（14日以内）
• 本人の婚姻
• 親族の看護、危篤または死亡、婚姻
• 子弟の入園式・入学式または卒園式・卒業式への出席

変更理由を証明する書類（採用証明書、面接証明書、医師の診断書等）が必要です。

失業中に働いた場合の取扱い

失業手当の受給中に働いた場合、必ず申告が必要です。申告を怠ると不正受給となり、厳しい処分が科されます。

労働時間による区分

「内職・手伝い」と判断された場合

収入があった直後の認定日に収入額を申告する必要があります。収入額に応じて、働いた日数分の基本手当が減額されることがあります。

「就労・就職」と判断された場合

その日は基本手当の支給対象外となり、支給は行われません。

週20時間以上の継続的な労働（パート・アルバイト等を含む）の場合は「就職」とみなされ、基本手当の受給資格を喪失する可能性があります。

業務委託・個人事業主としての労働

業務委託契約や個人事業主としての活動も「労働」に該当するため、必ず申告が必要です。

労働時間や収入の実態により、「内職・手伝い」または「就労・就職」と判断されます。継続的かつ週20時間以上の業務であれば「就職」とみなされ、基本手当の受給資格を喪失する可能性があります。

よくある誤解と注意点

❌ 誤解1：退職したらすぐに失業手当がもらえる

正解：受給手続き後、7日間の待期期間があり、さらに自己都合退職の場合は原則1か月間の給付制限があります。実際に受給できるのは、退職から1か月以上後になることが一般的です。

❌ 誤解2：失業手当は何もしなくても自動的に振り込まれる

正解：原則4週間に1回、ハローワークで失業認定を受ける必要があります。認定日に来所しないと、その期間の基本手当は支給されません。

❌ 誤解3：アルバイトをしても申告しなければバレない

正解：失業中に働いた場合は必ず申告が必要です。申告しないと不正受給となり、厳しい処分（3倍返し）が科されます。

⚠️ 注意点1：受給期間は原則1年間

失業手当を受給できる期間は、離職日の翌日から1年間に限られています。この期間を過ぎると、所定給付日数が残っていても受給できなくなります。離職票が届いたら速やかに手続きを開始しましょう。

⚠️ 注意点2：65歳以上は給付内容が異なる

退職日が65歳到達前（誕生日の前々日）か到達後（誕生日の前日）によって、給付日数や支給方法が異なります。65歳以上の方は一時金として一括支給されます。

⚠️ 注意点3：年金との併給調整

65歳未満の方が失業手当を受給する場合、老齢厚生年金・退職共済年金の支給が停止されます。65歳以上であれば、失業手当と年金の両方を受給できます。

雇用保険（基本手当）を受給するための手続きをすると、65歳になるまでの雇用保険（基本手当）と老齢厚生年金・退職共済年金との併給調整が行われ、雇用保険（基本手当）の支給を受ける間は、老齢厚生年金・退職共済年金の支給が停止となります。これは、雇用保険（基本手当）の支給内容が変更されるのではなく、あくまでも年金の支給が停止されるものです。

失業手当を最大限活用するために

受給期間の延長制度

再就職手当で早期就職を応援

ハロートレーニング（職業訓練）の活用

ハロートレーニングとは、厚生労働省が実施している公的職業訓練の愛称です。求職者や在職者を対象に、就職に必要な知識・技能を身につけるための職業訓練を提供する制度です。

職業訓練を受講している期間中は、失業手当の受給期間が延長される場合があります。詳しくはハローワークにご相談ください。

あなたの失業手当をシミュレーションしてみませんか？

ここまで失業手当の計算方法や注意点について解説してきましたが、「結局、自分はいくらもらえるの？」と気になる方も多いのではないでしょうか。

よくある質問（FAQ）

まとめ

失業手当は、退職後の生活を支える重要な制度です。この記事のポイントをまとめます。

失業手当のポイント

失業手当の制度は複雑で、個々の状況によって受給内容が大きく異なります。まずはシミュレーターで概算を確認し、詳しい内容については住居所を管轄するハローワークでご相談ください。