退職給付金+失業手当で何か月生活できる?|実額シミュレーションで確認

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退職給付金+失業手当で何か月生活できる?|実額シミュレーションで確認
退職給付金+失業手当で何か月生活できる?|実額シミュレーションで確認

退職給付金+失業手当で何か月生活できる?|実額シミュレーションで確認

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

退職の相談場面では、「退職金と失業手当を合わせれば、当面は◯年くらい暮らせるはずだ」という漠然としたイメージで判断されることが少なくありません。しかし、実際に「毎月どれくらいお金が出ていき、退職給付金と失業手当で何か月分の生活費をまかなえるのか」を数字で見ておかないと、数年後に家計が苦しくなるリスクがあります。本稿では、モデルケースを用いて、退職給付金と失業手当を組み合わせた実額シミュレーションの考え方を整理します。

1. 退職給付金と失業手当を「生活費ベース」で見る理由

退職給付金(退職金)は老後・将来の長期資金、失業手当は退職から再就職までの短期資金、という役割分担が基本です。ただ、従業員の方が実際に気になるのは、「いくらもらえるか」ではなく「何か月暮らせるか」です。そこで、

  • ① 毎月の生活費(退職後の社会保険料・税金などを含む)
  • ② 退職給付金のうち「当面の生活費に回してよい部分」
  • ③ 失業手当として見込まれる受給総額

の3つを並べてみることで、おおよその「生活できる期間」をイメージしやすくなります。

2. 失業手当の概算額と給付日数の目安

実務上、退職面談などで「失業手当はいくらくらいか」の感覚を共有する際には、月収ベースのざっくりとした目安を示す方法が現実的です。

離職前の平均月収(額面・賞与除く) 月あたりの基本手当受給額の目安
15万円程度 約11万円
20万円程度 約13.5万円(60〜64歳は約13万円)
30万円程度 約16.5万円(60〜64歳は約13.5万円)

※ 実際の基本手当日額は、「離職前6か月の賃金総額÷180×給付率(45〜80%)」で算定され、さらに年齢区分ごとの上限・下限が適用されます。ここでは目安としての水準感を示しています。

さらに、給付される「日数」の目安として、自己都合退職など一般的なケース(特定受給資格者等以外)では、被保険者期間と年齢に応じておおむね次のとおりです。

雇用保険の被保険者期間 所定給付日数(全年齢・一般的な離職理由)
1年未満 90日
1年以上5年未満 90日
5年以上10年未満 90日
10年以上20年未満 120日
20年以上 150日

実際の所定給付日数は、離職理由(会社都合か自己都合か等)、年齢区分、被保険者期間によって変動します。退職面談ではあくまで「目安」としてのレンジを示し、正確な日数・金額はハローワークで確認してもらう前提とする運用が無難です。

3. モデルケースで見る「何か月生活できるか」シミュレーション

3-1. 前提条件の設定

分かりやすくするため、以下のケースを仮定します。

項目 前提
年齢 45歳
離職前の平均月収 額面25万円(賞与除く)
退職給付金(退職金) 300万円支給
雇用保険の被保険者期間 15年(自己都合退職を想定)
所定給付日数 120日(約4か月分)
退職後の毎月の生活費 20万円(家賃・食費・光熱費・保険料・税金等を含む)

3-2. 失業手当の総額イメージ

月収25万円の場合、前掲の表から、失業手当の月あたり受給額は「20万円と30万円の中間程度」と考えると、おおよそ15万円前後とみてよい水準です。

  • 月あたりの基本手当受給額(概算):約15万円
  • 所定給付日数:120日 ≒ 4か月

とすると、失業手当の総額イメージは、

15万円 × 約4か月 = 約60万円

3-3. 「退職給付金+失業手当」の合計と生活可能月数

退職給付金300万円と失業手当約60万円を単純に合計すると、手元に入るお金は約360万円となります(退職金は税引前・失業手当は非課税のため、実際にはもう少し差が出ますが、ここでは概算とします)。

これを、毎月の生活費20万円で割ると、

360万円 ÷ 20万円 = 18か月分

という計算になり、「退職給付金と失業手当を全て生活費に充てた場合、単純計算で約1年半分の生活費に相当する」というイメージが持てます。

3-4. 「退職金のうちいくらを生活費に回すか」で期間が変わる

もっとも、退職給付金は老後・将来資金としてできるだけ温存したいお金です。たとえば「退職給付金300万円のうち、生活費に使ってよいのは100万円まで」と考え、残り200万円を老後資金にキープすると、

  • 生活費に回す退職給付金:100万円
  • 失業手当(概算):60万円
  • 当面の生活費に充てられる総額:160万円

この場合、

160万円 ÷ 20万円 = 8か月分

となり、「退職後8か月分くらいの生活費は、退職給付金の一部+失業手当でまかなえる」という見立てになります。企業として従業員に説明する際も、「退職金を全部生活費に使う前提」ではなく、「老後用にいくら残すか」をセットで考える視点を促すことが重要です。

4. パターン別シミュレーションのイメージ

人事・労務担当が従業員と話す際には、次のような簡易パターンを例示するとイメージしやすくなります。

パターン 前提条件(例) 退職給付金+失業手当の生活費換算
ケースA
30代・勤続10年
・年齢:35歳
・平均月収:22万円
・退職給付金:150万円
・所定給付日数:90日(約3か月)
・生活費:月18万円
・失業手当:月約14万円×3か月=約42万円
・合計:約192万円
・192万円÷18万円≒約10.6か月分
ケースB
50代・勤続25年
・年齢:55歳
・平均月収:30万円
・退職給付金:600万円
・所定給付日数:180日(約6か月)
・生活費:月25万円
・失業手当:月約16.5万円×6か月=約99万円
・合計:約699万円
・699万円÷25万円≒約27.9か月分
※退職給付金のうち300万円を老後資金として確保すると、
 生活費に充てられるのは約399万円→約15.9か月分
ケースC
60歳・定年退職
・年齢:60歳
・平均月収:28万円
・退職給付金:500万円
・所定給付日数:150日(約5か月)
・生活費:月23万円
・失業手当:月約14.6万円×5か月=約73万円
・合計:約573万円
・573万円÷23万円≒約24.9か月分
※退職給付金のうち250万円を老後資金として確保すると、
 生活費に充てられるのは約323万円→約14.0か月分

上記はあくまで「水準感」を示すためのモデルです。実際には、退職理由・被保険者期間・年齢・自治体ごとの保険料水準などにより、給付額・給付日数・生活費はいずれも変動します。

退職前に確認しておきたい「ざっくりシミュレーション」3ステップ

  • 退職給付金の見込み額を確認する
    自社の退職金規程に基づき、自己都合・会社都合など退職理由別の支給水準を概算で把握しておく。
  • 失業手当の概算額・給付日数を押さえる
    平均月収と被保険者期間から、おおよその月額・給付月数を試算し、従業員に「◯万円×◯か月程度」というイメージを共有する。
  • 退職後の月次出費を洗い出す
    家賃・ローン・保険料・税金などを含めた毎月の出費を整理し、「合計金額÷月次出費=生活できるおおよその月数」を本人に計算してもらう。

社内では「制度と考え方」「おおまかな水準感」の提供にとどめ、具体的な給付額や受給可否の最終判断は、必ず所轄ハローワークで確認してもらう運用が現実的です。

5. 企業として従業員に伝えておきたいポイント

  • 退職給付金をすべて生活費にしない前提を共有する
    「老後資金として最低◯割は残す」など、あらかじめ長期資金と短期資金を分けて考える視点を促す。
  • 失業手当は「もらえたらラッキー」ではなく保険としての権利であること
    在職中に保険料を負担してきた結果として、要件を満たせば受けられる給付であることを説明する。
  • 離職理由と被保険者期間が給付内容を左右すること
    離職票の離職理由が実態に合っているか、人事側で事実関係を整理したうえで案内する。
  • 退職後1〜2年の資金繰りと老後資金を分けて話す
    「退職直後の1〜2年」と「老後(65歳以降)」の二段階で資金計画を考えることが、退職の判断ミスを減らすうえで有効です。

6. まとめ:数字で見ると、判断の精度が上がる

退職給付金と失業手当を合わせると、どれくらいの期間の生活費になるのかは、「退職給付金の額」「失業手当の額と日数」「退職後の月々の出費」の3つが分かれば、概ねのイメージを持つことができます。退職面談の場で、これらをざっくりと数字で確認してから判断してもらうことで、「退職金があるから当面は大丈夫だろう」という感覚的な判断を避けやすくなります。

企業としては、自社退職金制度と雇用保険制度の基本的な枠組みを整理しつつ、「退職給付金=長期資金」「失業手当=短期のつなぎ資金」として、両方を数字で確認することの重要性を従業員に伝えておくことが望ましいといえます。

自社の退職金制度と失業手当を踏まえた運用を検討したい場合

本稿の内容をベースに、自社の退職金規程や人事制度に即したシミュレーション・説明資料を整えておくと、退職面談やキャリア面談の場面でスムーズにご案内しやすくなります。制度の確認や運用上の整理が必要な場合は、下記からお気軽にご相談ください。

参考・公式情報

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士) — 本記事は、退職給付金と失業手当の一般的な制度趣旨およびシミュレーションの考え方を説明するものであり、具体的な受給可否・金額・給付日数等は個別事情により異なります。詳細は、所轄のハローワーク等の公的機関の案内をご確認ください。

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