退職給付金があっても失業手当はもらえる?金額で確認すべき理由

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退職給付金があっても失業手当はもらえる?金額で確認すべき理由
退職給付金があっても失業手当はもらえる?金額で確認すべき理由

退職給付金があっても失業手当はもらえる?金額で確認すべき理由

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

本記事は、人事・総務担当者の方向けに、「退職給付金(退職金)があっても失業手当(雇用保険の基本手当)は受給できるのか」という従業員からの典型的な質問を整理し、「結局いくら・どのくらいの期間受け取れるかは、個別に計算しないと分からない」理由を解説するものです。ここで述べる内容は制度の概要であり、最終的な受給可否や金額は所轄ハローワークが個別に判断します。

まずは「失業手当」がどのくらいになりそうか把握する

退職給付金は自社の退職給付規程に基づいて決まりますが、失業手当は雇用保険のルールと個人の賃金・被保険者期間・離職理由などから算出されます。従業員対応の前に、失業手当シミュレーターで基本手当日額や所定給付日数の目安を把握しておくと、説明が行いやすくなります。

退職給付金があっても失業手当は「原則受給可能」

「退職金(退職給付金)をもらうと失業手当はもらえないのではないか」という質問がありますが、両者は制度上まったく別の給付です。退職給付金が支給されること自体を理由に、雇用保険の基本手当が一律に不支給になるわけではありません。

項目 退職給付金(退職金) 失業手当(雇用保険の基本手当)
法的な位置づけ 会社が任意で設ける制度。就業規則・退職金規程が根拠。 雇用保険法に基づく公的給付。離職理由・被保険者期間などにより受給内容が決定。
支給主体 会社(または中退共などの共済機構) 国(雇用保険)
受給要件 自社規程で定めた勤続年数・退職理由などを満たすこと。 「失業の状態」にあること+一定の雇用保険被保険者期間があること。
金額の決まり方 自社の算定式(ポイント制・基本給連動など)による。 離職前6か月の賃金日額と給付率、所定給付日数などにより算定。
退職給付金との関係 有無・金額・支給時期は会社ごとに異なる。 原則として、退職給付金の有無だけで受給権が否定されることはない。

人事・総務としては、「退職給付金があるから失業手当は出ない」という説明は行わず、あくまで雇用保険の受給要件(失業の状態かどうか・被保険者期間など)で判断されることを前提に案内することが重要です。

失業手当の受給可否を決める主な要素

退職給付金の有無とは別に、失業手当の受給可否を決める主な判断要素は次の2点です。

  • 離職し、「失業の状態」にあること(就職の意思・能力があり、積極的に求職活動を行っているが職に就けないこと)。
  • 離職前の一定期間、雇用保険の被保険者期間があること(一般的には2年のうち通算12か月以上、倒産・解雇等は1年のうち通算6か月以上)。

※ここでいう「被保険者期間」は、賃金支払基礎日数が11日以上ある月を1か月とカウントします。空白期間が長い場合などは通算方法が異なるため、個別の判断が必要です。

「退職給付金があるから受給できない」と誤解されやすいケース

1. 高額の退職給付金を一括で受け取るケース

退職給付金が高額な場合、「貯蓄が十分にあるから失業手当は出ないのでは」と従業員から質問されることがありますが、雇用保険の基本手当は資産・貯蓄額ではなく、あくまで「失業の状態かどうか」と「被保険者期間」で判断されます。

退職給付金が高額であっても、失業の状態にあり、必要な被保険者期間があれば、原則として受給資格は発生します。「金額の多寡ではなく、要件で決まる」という整理が有用です。

2. 定年退職後に年金と並行して受給するケース

定年退職時に退職給付金を受け取り、かつ年金も受給できる年齢の場合でも、雇用保険の基本手当の要件を満たせば受給資格は発生します。ただし、65歳前の老齢厚生年金との間には「年金側の支給停止」(併給調整)があるため、年金との関係を踏まえた個別の確認が必要となります。

※失業手当と年金の関係は、「基本手当が減る」のではなく、「年金側が一定期間停止される」仕組みです。詳細は年金制度の資料での確認が前提になります。

それでも「結局いくらもらえるかは計算しないと分からない」理由

1. 退職給付金側:会社ごとの差が大きい

退職給付金は、制度の有無・算定基準・退職理由ごとの支給率・支払時期など、企業ごとの差が非常に大きい給付です。

  • 制度そのものがない会社もある。
  • 勤続年数と退職時基本給を掛け合わせる方式の会社。
  • ポイント制で役職・評価を加味する会社。
  • 自己都合退職は大きく減額し、会社都合は満額とする会社。

こうしたばらつきのため、一般論として「勤続○年なら退職金は○○万円」といった金額提示はできず、自社規程に基づいた個別の算定が前提となります。

2. 失業手当側:複数の変動要素が組み合わさる

一方、失業手当の受給額は、次のような複数の要素が組み合わさって決まります。

要素 内容の概要 金額・日数への影響
賃金日額 離職前6か月の賃金(賞与除く)合計÷180で算出される額。 基本手当日額の基礎となる。高いほど日額も高くなるが、年齢区分ごとの上限あり。
給付率 賃金日額に対する一定の割合(おおむね45〜80%の範囲)。 賃金が低いほど給付率が高くなる設計。結果として低賃金層への手厚い補填となる。
所定給付日数 年齢・被保険者期間・離職理由により決定(90〜最大360日)。 倒産・解雇等の特定受給資格者や一部の特定理由離職者は、一般より長くなる場合がある。
離職理由区分 自己都合・会社都合・契約満了・やむを得ない自己都合など。 必要な被保険者期間や給付制限の有無・所定給付日数に影響する。
受給開始時期 待期7日+自己都合などの場合の給付制限の有無。 申請が遅れると、離職日の翌日から1年間という受給期間内に支給しきれない可能性がある。

このように、退職給付金と失業手当はそれぞれ多くの変動要素があるため、「退職給付金が○○万円なので、失業手当と合わせて合計○○万円」といった一律の説明はできません。個々のケースごとに、退職給付金規程と雇用保険の条件を前提とした試算が不可欠です。

人事・総務が説明できる範囲/説明を控えるべき範囲

1. 説明してよい範囲(会社として明示できる事項)

  • 自社の退職給付金制度の有無と概要(支給対象・算定方法・退職理由ごとの取扱いなど)。
  • 個々の従業員の退職給付金見込額と、その支払予定日・支払方法(一括・分割など)。
  • 離職票の発行予定日・送付方法・問い合わせ窓口。
  • 雇用保険の制度概要(受給要件・賃金日額と基本手当日額の関係・所定給付日数の考え方など)の一般的な説明。
  • 退職給付金があっても、雇用保険上の要件を満たせば原則として受給資格が発生し得ること。

2. 断定を避けるべき範囲(公的機関が最終判断する領域)

  • 個々の従業員の失業手当の受給可否(離職理由の最終区分など)。
  • 基本手当日額や所定給付日数の「確定した」金額・日数。
  • 特定受給資格者・特定理由離職者・就職困難者などの該当の有無。
  • 再就職手当・就業促進定着手当などの支給可否・金額。

これらは離職票や求職申込みの内容に基づき、所轄ハローワークが判断する領域です。人事・総務としては、制度の仕組みやチェックポイントの説明にとどめ、「最終的な受給内容は公的な手続きと判断によって決まる」という前提を共有しておくことが適切です。

退職前に従業員へ案内しておきたいチェックポイント

「退職給付金があるから大丈夫」「失業手当がこれくらい出るはず」といった思い込みにより、退職後の生活資金にギャップが生じるケースを防ぐため、次の事項を事前に案内しておくと有用です。

  • 自社の退職給付金制度の有無・概要と、退職理由(自己都合・会社都合等)による支給率の違い。
  • 退職給付金の支払予定日(退職当月か、数か月後か、分割かなど)。
  • 離職票の発行スケジュールと、紛失・未着時の対応方法。
  • 雇用保険の被保険者期間や離職理由により、失業手当の受給資格や日数が変わること。
  • 失業手当シミュレーター等を使い、賃金日額・基本手当日額・おおよその総額を従業員自身で確認しておく必要があること。

退職給付金と失業手当の「合計イメージ」を数値で押さえる

退職給付金の見込額(社内算定)と、失業手当のおおよその金額・日数(シミュレーターによる概算)を並べて整理しておくと、「退職後○か月はこのくらいの生活費をカバーできる」といった具体的なイメージが持ちやすくなります。

まとめ:退職給付金の有無ではなく、要件と金額で確認する

退職給付金は会社ごとの任意制度であり、失業手当は雇用保険法に基づく公的給付です。退職給付金があっても、失業の状態にあり、必要な被保険者期間があれば、原則として失業手当の受給資格は生じ得ます。

ただし、「退職したら合計いくら受け取れるか」は、退職給付金規程の内容・賃金水準・雇用保険の加入状況・離職理由・年齢など、複数の要素で変動するため、最終的には個別の金額試算が欠かせません。人事・総務としては、会社側で明示できる情報(退職給付金の条件・支払時期、離職票の取扱いなど)を整理しつつ、失業手当については制度の仕組みと「金額で確認すべき理由」を丁寧に伝えていくことが求められます。

参考・公式情報

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士) — 本記事は、退職給付金と失業手当の制度概要および実務上の留意点を整理したものです。最終的な受給可否・給付額は、所轄の公的機関による判断・手続きにより決定されます。

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