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- 1 失業手当をもらい切れる人・途中で終わる人の決定的な違い
失業手当をもらい切れる人・途中で終わる人の決定的な違い
監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)
「所定給付日数はまだ残っているはずなのに、失業手当が途中で終わってしまった」という相談は少なくありません。失業手当(基本手当)は、本来「○日分」と決まった日数まで支給される制度ですが、受給期間の満了や就職・起業・病気などの事情により、途中で支給が止まることがあります。本記事では、「もらい切れる人」と「途中で終わる人」の違いを、受給期間1年の仕組みや延長・中断のルールとあわせて整理します。
まずは「総日数」と「1年の受給期間」を数値で把握
失業手当シミュレーターで、所定給付日数と1日あたりの給付額を確認しておくと、「本来はいくら・何日もらえるのか」を前提に、途中で終わらせないためのスケジュールが立てやすくなります。実際の受給期間や取扱いはハローワークで確認されます。
結論(先に押さえておきたいポイント)
- 失業手当には「もらえる総日数(所定給付日数)」と「実際に受給できる期限(受給期間=原則1年)」があり、この2つの違いを理解しているかどうかが、もらい切れるかどうかの分かれ目です。
- 途中で終わる典型パターンは、「手続きが遅れて受給期間の1年を使い切ってしまう」「就職・起業・長期の病気等で受給資格がなくなり、残日数が消える」場合です。
- 妊娠・出産・育児・病気・介護・起業など、一定の事情があれば「受給期間の延長」や「事業開始等による特例」により、1年の期限を最大4年まで伸ばせる場合があります。延長は「給付日数を増やす」制度ではありません。
「もらえる総日数」と「受給できる期間」の違い
失業手当の仕組みを理解するうえで重要なのが、「所定給付日数」と「受給期間」の違いです。
| 用語 | 概要 | 途中で終わる主な理由 |
|---|---|---|
| 所定給付日数 | 離職理由・年齢・被保険者期間に応じて決まる「もらえる最大日数」。例:90日、120日、150日など。 | 原則として途中で減ることはなく、「残日数」として管理される。 |
| 受給期間 | 失業手当を受け取れる期限。離職日の翌日から原則1年間(高年齢求職者給付金等は別ルール)。 | 1年が経過すると、所定給付日数が残っていても受給できなくなる。延長申請をしなかった場合も同様。 |
受給期間は「離職日の翌日から1年」であり、「ハローワークで手続きをした日から1年」ではありません。離職票の受け取りや手続きが遅れると、その分だけ実際に受給できる期間が短くなります。
「もらい切れる人」の共通点
所定給付日数をきちんともらい切る方には、次のような共通点があります。
- 離職後、できるだけ早く離職票を受け取り、ハローワークで受給手続きを済ませている。
- 4週間ごとの認定日に欠かさず来所し、求職活動実績や就労状況を正確に申告している。
- 就職・起業・長期の病気・妊娠出産等、ライフイベントが起きたときに、早めにハローワークに相談し、延長や特例などの制度を理解している。
- 受給中に働いた場合も、アルバイト・業務委託・自営準備などを含めて、必ず申告している。
途中で終わる人の典型パターン
一方、所定給付日数を残したまま支給が終わってしまう典型例は次のとおりです。
| パターン | 何が起きているか | 制度上のポイント |
|---|---|---|
| ① 手続きが遅い | 離職票の受領やハローワークでの求職申込みが遅れ、実際に受給できる期間が短くなっている。 | 受給期間は離職日の翌日から1年固定のため、途中から手続きをしても期限は延びない。 |
| ② 認定日に来所しない | 認定日に行けず、事前の変更手続きもしないため、その期間の失業の認定を受けられない。 | 認定日ごとに失業の認定が行われ、認定を受けた日数分のみ支給される。認定を受けなかった期間は支給なし。 |
| ③ 途中で就職・週20時間以上の就労 | アルバイト等をきっかけに週20時間以上・31日以上見込みの就労となり、雇用保険の被保険者となる。 | 「就職」とみなされ、その日以降の基本手当は支給対象外。残日数は消滅する。 |
| ④ 起業・自営に専念 | 起業や自営に専念し、「失業の状態」(就職意思・能力・求職活動)がなくなる。 | 自営専念中は基本手当の支給対象外。令和4年7月以降は、一定の要件で事業期間を受給期間に算入しない特例あり(起業等受給期間特例)。 |
| ⑤ 長期の病気・出産等で働けない | 受給期間中に長期で働けない状態が続き、受給期間1年が先に終わってしまう。 | 本来は「受給期間の延長」や、求職申込後の傷病について「雇用保険の傷病手当」を活用できる場合があるが、申請しなければ自動的には延長されない。 |
受給期間を延ばせるケース(延長と起業特例)
「もらい切る」ための重要なポイントが、受給期間の延長や起業等に伴う特例の活用です。いずれも「給付日数を増やす制度ではなく、1年の期限を後ろにずらす制度」という点が重要です。
1) 妊娠・出産・育児・病気・介護などで働けない場合の延長
離職後、受給期間(原則1年)の中で、やむを得ない理由により30日以上働くことができない状態が続いた場合、「受給期間の延長申請」により、最長3年まで1年の期限を延ばせます。延長後の受給期間の末日まで申請可能ですが、申請が遅いと給付日数を消化できないおそれがあります。
2) 定年後、しばらく休んでから求職する場合の延長
定年等を理由に離職した方で、当面は求職申込みを希望しない場合も、離職日の翌日から2か月以内に「受給期間延長等申請」を行えば、最長1年まで受給期間を延長できます。これは「休養したい期間」を確保するための特例です。
3) 起業・自営開始による受給期間の特例
令和4年7月1日以降、離職後に事業を開始・専念・準備に専念した場合、その期間(最大3年)を受給期間に算入しない特例が設けられました。一定の要件(事業期間30日以上、雇用保険適用事業主となるなど)があり、事業により自立可能と認められる必要があります。
「いつまでに何日もらえるか」を時系列で確認
シミュレーターで所定給付日数と1日あたりの額を把握したうえで、「離職日の翌日から1年」のカレンダー上の位置を確認しておくと、延長や特例を検討すべきタイミングの把握に役立ちます。
「受給中に働く」場合の扱いと途中終了への影響
失業手当受給中にパート・アルバイト・業務委託・自営などで働いた場合、その内容によっては「就職」とみなされ、その日以降の基本手当が支給されなくなることがあります。
- 1日の労働時間が4時間未満:原則「内職・手伝い」となり、収入額に応じてその日の基本手当が減額されることがあります。
- 1日の労働時間が4時間以上:原則「就労・就職」となり、その日の基本手当は支給対象外です。
- 週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある就労:雇用保険の被保険者となるため、「就職」とみなされ、それ以降の失業手当の支給は行われません。
パートや業務委託等の名称や収入の有無にかかわらず、「働いた事実」があれば必ず失業認定申告書に記載し、認定日に申告する必要があります。申告を怠ると不正受給とされ、以後の支給停止に加え、不正に受給した額の3倍の納付等が命じられる場合があります。
再就職手当との関係:あえて「もらい切らない」ケース
所定給付日数をもらい切ることが必ずしも有利とは限らず、早期に安定した職業に就いた場合には「再就職手当」が支給されることがあります。これは、支給残日数に応じて最大70%相当が一時金として支払われる制度であり、結果として「基本手当を残したまま支給終了→再就職手当を受給」という形になります。
どのタイミングで就職するか、再就職手当の支給要件や額との兼ね合いは、個々の生活設計により最適解が異なります。再就職手当の要件や計算方法は別途確認が必要です。
よくある質問(Q&A)
- Q:所定給付日数が残っているのに、「受給期間満了」で支給が終わるのはなぜですか?
A:受給期間(原則1年)は、離職日の翌日から起算されます。この1年が経過すると、所定給付日数が残っていても受給できなくなります。手続きの遅れや長期の病気などで、1年以内に日数を使い切れないと、このような状態になります。 - Q:病気で長期間働けなくなり、失業手当が途中で止まりそうです。どうなりますか?
A:求職申込後に発生した病気やけがで15日以上働けない場合は、基本手当に代えて「雇用保険の傷病手当」が支給される場合があります。また、病気や妊娠・出産・育児・介護などにより30日以上働けない状態が続くと見込まれる場合は、「受給期間の延長申請」により、最長3年まで受給期間を延ばせる可能性があります。いずれも申請と医師の証明等が必要です。 - Q:途中で短期のアルバイトをしたら、残りの給付日数はどうなりますか?
A:アルバイトの内容が「内職・手伝い」に当たる場合、収入額に応じて働いた日の基本手当が減額されることがありますが、所定給付日数自体が減るわけではありません。一方、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある就労となった場合は、「就職」とみなされ、それ以降の基本手当は支給対象外となり、残日数は消滅します。
参考・公式リンク
「1年の受給期間」と「残日数」を意識した受給計画を
失業手当をもらい切れるかどうかは、所定給付日数だけでなく、「離職日の翌日から1年」という受給期間や、就職・病気・起業などのイベント時の対応で変わります。まずは総日数と1日あたりの額を把握したうえで、必要に応じて延長や特例の活用を検討してください。
監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士) — 本記事は雇用保険制度に関する一般的な解説を目的としており、具体的な受給期間・延長・特例の適用については、所轄ハローワークにて最新の情報をご確認ください。
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