退職日を1日ずらすだけで失業手当が変わる?意外と知らない計算の仕組み

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退職日を1日ずらすだけで失業手当が変わる?意外と知らない計算の仕組み
退職日を1日ずらすだけで失業手当が変わる?意外と知らない計算の仕組み

退職日を1日ずらすだけで失業手当が変わる?意外と知らない計算の仕組み

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

本記事は、退職日を少し動かすことで失業手当の“算定や支給タイミング”にどのような影響があるかを実務目線で整理したものです。最終的な給付の可否や金額は所轄ハローワークの判断が優先されますので、ここでの試算・説明はあくまで一般的な概算・概要としてご利用ください。

退職日の違いがどれだけ影響するかをまず数値で確認

「退職日を◯日にすれば受給開始が早まる?」といった疑問は、失業手当シミュレーターに実データを入れると瞬時に比較できます。まずはシミュレーターで“日付を1日ずらす”パターンを比較してみましょう。

先に結論(ざっくり)

退職日を1日変えることで影響が出る主なポイントは次の通りです:

  • 直近6か月の賃金合計が変わると、賃金日額(=基本手当日額の基礎となる額)に影響する。
  • 離職日とその後の手続きのタイミングによって、「待期」や「給付制限」の経過後に行われる失業認定日のスケジュールが変わり、初回振込タイミングが前後する。
  • 再就職手当の対象となるか否か(就職日との関係)に影響する場合がある。

どうして1日で変わるのか?計算の仕組みを簡単に説明

失業手当の主要な計算要素は大きく分けて次の3つです:

  1. 賃金日額の算定(原則:離職日以前の直近6か月間の賃金合計 ÷ その期間の暦日数)
  2. 所定給付日数(被保険者期間・年齢・離職理由で決定)
  3. 受給開始のタイミング(求職申込み日、待期、給付制限、失業認定日の組合せ)

これらのうち、特に「賃金日額の分母・分子」「認定日スケジュール」は日付に敏感です。たとえば、退職日が月末→翌月1日にずれると「直近6か月に含まれる暦日」が変わり、賞与の支払いタイミングや支払日の含まれ方によって賃金合計が増減することがあります。

具体例で見る(簡易モデル)

以下は分かりやすくするための簡易例です(概算)。実際の支給額は賃金構成や年齢区分等により異なります。

ケース退職日直近6か月の給与合計賃金日額(÷180換算の概算)想定 日額(給付率60%の仮定)
Aさん(賞与無し・給与均等) 3月31日 ¥1,800,000 ¥10,000 ¥6,000
Aさん(退職日を1日ずらした場合) 4月1日 ¥1,770,000(直近6か月に支給実績が変動) ¥9,833 ¥5,900

解説:上の例では退職日を1日ずらすことで直近6か月に含まれる給与明細が変わり、賃金合計が下がった想定です。結果として試算上の賃金日額および基本手当日額(いずれも概算)は下がります。実際は支給日や日割りの扱い、休暇等の影響で計算が複雑になるため、シミュレーターやハローワークで正確に比較するのが安全です。

受給開始のタイミング(認定日)にも注意

退職日がいつかによって、その後の求職申込み日が前後し、そこから起算される待期(7日)や、自己都合退職等の場合の給付制限がどの認定期間にかかるかが変わります。その結果として、初回の支給対象となる失業認定日や初回振込のタイミングが1回分(約4週間分)程度ずれることがあります。

なお、給付制限の有無や期間(自己都合かどうか、過去の離職歴、教育訓練受講の有無、法改正時期などにより1~3か月程度)は、離職理由や離職日・手続き時期によっても異なりますので、個別のケースでは必ず最新の制度内容を所轄ハローワークで確認してください。

例:退職日を1日遅らせることで、次回の「認定対象期間」に就職の有無が入る/入らない、という判定差も起き得ます。

再就職手当・就業促進定着手当への影響

再就職手当は「就職日時点で支給残日数が所定給付日数の一定割合以上ある」ことなどが条件です。退職日(離職日)をずらすことで受給開始時期や支給残日数の算定に用いられる日数が変わり、再就職手当の支給可否や額に影響する場合があります。特に支給残日数が境界値付近のケースでは、退職日・就職日の前後関係が結果を左右します。

日付を1日ずらしたパターンをシミュレーターで比較

シミュレーターに現在の退職日と、「退職日を+1日/−1日」したケースを入れて比較するだけで、賃金日額・所定給付日数・受給開始予想日・受給総額の差が出ます。決定前に複数パターンを確認しておくと安心です。

労務担当者がチェックすべき実務ポイント

  • 離職票に記載される「離職日」と、実際の最終出勤日・有給消化の状況、給与台帳上の賃金支払基礎日数等が整合しているかを確認する(誤記防止)。
  • 退職日と賞与支給日・賃金締切日等の兼ね合いで、直近6か月の賃金合計が大きく変わらないか確認する。
  • 自己都合か会社都合かで、給付制限の有無や長さ、受給開始時期が変わる点を本人に案内する。
  • 退職のタイミングで雇用契約上の調整(有給消化の扱い等)を事前にクリアにしておく。

よくある疑問(Q&A)

  • Q:退職日をわざとずらして有利にできますか?
    A:制度上、退職日や就職日の違いにより結果的に支給額や受給開始時期が変わる場面はありますが、虚偽の申告や事実と異なる処理を行ってまで有利に操作しようとすると、不正受給と判断されるおそれがあります。不正受給とされた場合は、受給額に加え最大2倍分の納付(合計最大3倍相当)を命じられたり、場合によっては刑事罰の対象となることもあります。必ず事実ベースで適正に手続きを行い、具体的な扱いは所轄ハローワークで確認してください。
  • Q:賃金日額の計算は180日で割れば良いですか?
    A:実務では「直近6か月の賃金合計 ÷ その期間の暦日数」で算定します。説明用に180日割りで概算することはありますが、長期休業等がある場合は別の取り扱いになることもあるため、正確な算定は給与台帳の内容をもとに、所轄ハローワークで確認していただく必要があります。

まとめ — 日付は“侮れない”ので必ず試算を

退職日を1日動かすだけで賃金日額や受給開始日、再就職手当の可否などに影響が出ることがあります。特に賞与支給の有無・支給残日数の境界値・給付制限の有無が絡むケースでは、日付の違いが結果に直結します。ただし、事実と異なる日付の設定や不正な申告は厳しく処分されますので、あくまで実態に即した範囲で、退職確定前にシミュレーターで複数パターンを比較し、最終的な取り扱いは所轄ハローワークで確認してください。

参考・公式リンク

決める前に“1日ずらす”パターンを必ず比較しましょう

実データで比較すると、思いのほか差が出るケースが少なくありません。まずは失業手当シミュレーターで複数の退職日パターンを試算し、そのうえで所轄ハローワークで個別の条件を確認してから最終判断してください。

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士) — 本記事は退職日の影響を実務視点で解説したものであり、個別の雇用保険給付の可否・内容については必ず所轄ハローワークにて最終確認をお願いいたします。

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