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失業手当の基本手当日額の計算式(直近6か月の平均)をわかりやすく解説
監修:植本労務管理事務所
まずは概算を知りたい方へ
離職前6か月の給与総支給額などを入力するだけで、賃金日額や基本手当日額の目安を確認できます。詳しい制度説明とあわせてご覧ください。
雇用保険の失業手当(基本手当)を受給する際、多くの方が最初に気にされるのが「1日あたり、いくら受け取れるのか」という点です。この1日分の額を「基本手当日額」といい、離職前の賃金水準をベースに、法律で定められた算式と年齢区分ごとの上限・下限額を用いて決定されます。
基本手当日額が決まる3つのステップ
- 賃金日額を算出する
原則として、離職の日以前の直近6か月間に支払われた賃金(賞与・退職金等を除く)の合計を、その期間の暦日数で割り、「賃金日額」を求めます。実務上の概算としては「6か月分の総支給額÷180日」で計算するケースが多く、この記事でもこの180日割りを用いて説明します。 - 賃金日額に給付率を乗じる
求めた賃金日額に対し、年齢や賃金水準に応じて45〜80%程度の範囲で変動する給付率を乗じ、基本手当日額(試算値)を算出します。賃金の低い方ほど高い割合が適用されるよう設計されています。 - 年齢区分ごとの上限・下限で調整する
算出した基本手当日額が、離職時年齢ごとに定められた上限額を超える場合は上限額まで切り下げ、一定の下限額を下回る場合は下限額まで引き上げます。上限・下限額は、賃金水準や物価動向に応じて定期的に改定されます。
賃金日額の求め方と「6か月=180日」の考え方
賃金日額は、離職前6か月の賃金合計を、その期間の暦日数で割って算出するのが基本です。説明や概算のしやすさから、6か月分を「おおむね180日」とみなし、次の式で試算することがよくあります。
賃金日額(概算) = 離職前6か月の給与総支給額の合計 ÷ 180日
賃金合計に含めるもの・含めないもの
- 含める主なもの
基本給、各種手当(役職手当、資格手当など)、時間外手当(残業代)、深夜・休日勤務手当、通勤手当(交通費)、歩合給・出来高給など、毎月の給与として継続的に支払われるもの。 - 含めない主なもの
賞与(ボーナス)、退職金・退職慰労金、結婚祝金・弔慰金・見舞金などの臨時の給付、企業型確定拠出年金の事業主掛金などは、賃金日額の計算からは除外します。
社内での説明用に金額感を押さえたい方へ
「月◯万円の方なら、おおよそどの程度の失業手当になるか」を把握しておくと、人事・労務としての説明が行いやすくなります。シミュレーターとお問い合わせフォームをご用意しています。
年齢区分ごとの上限額・下限額のイメージ
| 年齢区分 | 賃金日額の上限(円) | 基本手当日額の上限(円) |
|---|---|---|
| 29歳以下 | 14,510 | 7,255 |
| 30〜44歳 | 16,110 | 8,055 |
| 45〜59歳 | 17,740 | 8,870 |
| 60〜64歳 | 16,940 | 7,623 |
具体例:6か月の賃金合計から基本手当日額を試算
| 直近6か月の賃金合計 | 賃金日額(÷180) | 給付率例(60%) | 基本手当日額(概算) |
|---|---|---|---|
| ¥1,080,000(平均月18万円) | ¥6,000 | 60% | ¥3,600 |
| ¥1,440,000(平均月24万円) | ¥8,000 | 60% | ¥4,800 |
| ¥1,800,000(平均月30万円) | ¥10,000 | 60% | ¥6,000 |
よくある勘違いと注意点
- 賞与を含めてしまう
賞与や退職金は賃金日額の計算に含めません。年収ベースで考えると「思ったより少ない」と感じる一因になります。 - 「6か月=180日」が絶対だと思ってしまう
実際の制度では暦日数を用います。ここでは説明上180日で割っているだけであり、長期休業などがある場合は別期間を用いることもあります。 - 給付率を一律60%と誤解する
給付率は賃金水準等に応じて45〜80%の範囲で変動します。低賃金帯ほど高く、高賃金帯ほど低くなるよう設計されています。 - 日額だけで全体像を判断してしまう
実際の支給総額は「基本手当日額 × 所定給付日数」で決まります。離職理由や被保険者期間によって給付日数が大きく変わる点にも注意が必要です。
受給要件との関係(簡単なおさらい)
- 失業の状態にあること
就職しようとする意思といつでも就職できる能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず職に就いていない状態であることが必要です。 - 一定の被保険者期間があること
原則として、離職前2年間に12か月以上(倒産・解雇など一部のケースでは離職前1年間に6か月以上)の被保険者期間が必要とされています。
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記事内容を踏まえて、個別ケースを確認したい場合
ここまでの内容を前提に、「自社の従業員のケースではどうなるか」「退職予定者への説明資料を作りたい」といったニーズにも対応できるようにしています。試算ツールとお問い合わせ窓口をご活用ください。
本記事は、現行制度の一般的な説明に基づいて基本手当日額の考え方と概算方法を整理したものです。最終的な受給資格の有無や具体的な金額・給付日数などは、住居地を管轄するハローワークの判断・算定が優先されます。
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