短期離職でも受給できる?勤続1年未満の失業手当のリアルと例外ケース

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短期離職でも受給できる?勤続1年未満の失業手当のリアルと例外ケース
短期離職でも受給できる?勤続1年未満の失業手当のリアルと例外ケース

短期離職でも受給できる?勤続1年未満の失業手当のリアルと例外ケース

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

「勤続1年未満で辞めたけど、失業手当はもらえるの?」──この問いに対する答えは「ケースによる」が正確です。原則としては被保険者期間(=雇用保険の加入期間)や離職理由が重要になりますが、短期雇用の特例や「特定の事情」がある場合には例外的に給付が認められることがあります。本記事では制度の基本、短期離職で受給できる代表的な例外(特例一時金、特定受給資格者・特定理由離職者、常用就職支度手当など)、手続き上の注意点を実務目線で分かりやすく解説します。

結論(最初に簡単に)

  • 原則:失業手当(基本手当)は被保険者期間が一定以上ないと受給できない。一般の離職者の場合は、離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あることが目安。
  • 例外:倒産・解雇などの会社都合や、正当な理由のある自己都合等で要件を満たす場合は、離職前1年間に通算6か月以上の被保険者期間で足りるケースがあるほか、短期雇用特例に該当する場合は特例一時金等の対象となる。
  • 実務上の鉄則:離職票の内容・離職理由の扱い・被保険者期間の通算を早めにハローワークで確認すること(虚偽の離職理由の記載・申告は不正受給となるおそれがあるため注意)。

まずはシミュレーターで自分のケースを確認

勤続期間が短いケースは制度上の例外が絡みます。植本のシミュレーターで概算を出し、ハローワークで最終確認するのが効率的です。

1|基本ルール:被保険者期間と受給要件(原則)

基本手当を受給するための標準的な要件は、雇用保険に一定期間(被保険者期間)加入していることです。一般の離職者(特定受給資格者・特定理由離職者以外)の場合、離職前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上あることが必要となります。一方で、倒産・解雇などの理由や、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職した場合には、離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あればよいとされています。判定の詳細はハローワークの基準に従います。

参考:ハローワーク「基本手当の所定給付日数」等。

2|短期離職(勤続1年未満)で考えられるパターン

短期離職の代表的パターンは以下の通りです。各ケースで受給可否は変わります。

  1. 会社都合(解雇・倒産等)で離職した場合:離職理由が会社都合に該当すると、被保険者期間が1年未満であっても、特定受給資格者として取り扱われ、離職前1年間に通算6か月以上の被保険者期間があれば受給資格が認められる場合があります。
  2. 自己都合(自主退職)で離職した場合:原則として離職前2年間に通算12か月以上の被保険者期間がないと給付されないことが多いですが、病気や家族の介護など「正当な理由」がある自己都合で、特定理由離職者に該当すると認定された場合には、離職前1年間に通算6か月以上で受給資格が認められることがあります。
  3. 短期雇用特例被保険者(季節労働など)に該当する場合:短期雇用特例被保険者として季節的に雇用されていた方については、特例一時金の支給対象となる場合があり、離職前1年に11日以上働いた月が通算6か月以上あれば給付可能なケースがあります。

用語整理:特例一時金・特定理由離職者

短期雇用特例被保険者向けに設けられた「特例一時金」は、季節労働など一定の短期就労の形態で被保険者であった方が失業した場合に支給されるものです。代表的な支給要件として、「離職の日以前1年間に11日以上働いた月が通算して6か月以上あること」などが挙げられます。詳細な取扱いはハローワークの案内に従う必要があります。

3|短期離職で給付を生む具体的な「例外ケース」とは

代表的な例外ケースを具体的に説明します。

A. 会社倒産・解雇(いわゆる会社都合)

会社の倒産や合理的理由のある解雇で離職した場合、離職理由は「会社都合」に当たり、特定受給資格者として、一般の自己都合退職よりも有利に扱われることが多くなります。被保険者期間が短い場合でも、離職前1年間に通算6か月以上の被保険者期間があれば受給資格が認められることがありますので、離職票の「離職理由欄」をしっかり確認し、必要に応じてハローワークで説明を受けることが重要です。事実と異なる離職理由の記載・申告は不正受給となるおそれがあるため、実態に即した記載と説明が求められます。

B. 短期雇用特例(季節労働等)→ 特例一時金

季節労働や日数の少ない短期雇用が繰り返される職種では、通常の基本手当ではなく「特例一時金」が支給される場合があります。支給額や条件は通常の基本手当とは異なり、受給期間の延長も認められないことなど、制度設計が別建てになっているため、該当が疑われる場合には、短期雇用特例被保険者としての要件と特例一時金の条件を資料で確認しておく必要があります。

C. 就職困難と認められるケース(就職困難者)

高齢者や障害のある方など、就職が特に困難と認められる場合には、被保険者期間が同程度でも所定給付日数が一般より長くなるなどの優遇措置が設けられています(就職困難者向けの扱い)。具体的な該当性の判断はハローワークが行うこととされており、受給手続の際に該当しうる手帳等があれば持参することになります。

4|実務:受給申請の手順と短期離職で特に注意すべき点

短期離職者は、受給手続きで少し手間がかかることがあります。重要な実務チェックポイントをまとめます。

  1. 離職票の確認:離職理由の記載を必ず確認し、事実と異なる場合は会社に訂正を求めるとともに、必要に応じてハローワークへ相談すること(虚偽の離職理由の記載・申告は不正受給となる可能性があります)。
  2. 被保険者期間の確認:離職日前2年間(例外要件が見込まれる場合は離職日前1年間を中心に)の就労実績(賃金支払の基礎となった日数が11日以上ある月の把握など)を整理し、短期雇用特例被保険者に該当するかどうかも含め、必要な資料を準備しておくこと。
  3. ハローワークでの事前相談:短期離職は離職理由や就業形態によって扱いが大きく変わるため、受給可能性や必要書類について、早めに窓口で確認しておくと手続きがスムーズになります。
  4. 認定日における申告の徹底:失業認定日にアルバイト等の就労がある場合は必ず申告し、収入額や就労日数に応じた適正な認定を受けることにより、不正受給を避けることが重要です。

5|実例で理解する(ケーススタディ)

ケース1:勤続8ヶ月・会社倒産で離職したAさん

Aさんは勤続8ヶ月で会社が倒産して離職。離職理由は会社都合とされ、離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あったため、特定受給資格者として受給資格が認められました(具体的な給付日数は年齢・被保険者期間等により異なります)。このように会社都合は短期離職でも有利に働くことがあります。

ケース2:勤続10ヶ月・体調不良で自己都合退職のBさん

Bさんは体調不良を理由に自己都合退職。医師の診断書等により「正当な理由」が認められ、特定理由離職者として扱われれば、離職前1年間に通算6か月以上の被保険者期間で受給資格が認められる可能性がありますが、まずはハローワークで事情説明と確認が必要です。自己都合は原則として一般受給資格者となりやすく、短期離職では不利になりやすい点に留意が必要です。

ケース3:季節労働で11日以上働いた月が通算6か月のCさん

Cさんは短期雇用特例被保険者として季節雇用で短期に働くことが多く、離職前1年内に11日以上働いた月が通算で6か月あったため「特例一時金」の給付対象となりました。短期雇用者の特例は要件や適用範囲がやや特殊なため、該当の疑いがある場合には、短期雇用特例被保険者としての資格と特例一時金の要件をセットで確認することが重要です。

6|企業側のチェックリスト(労務担当者向け)

短期離職者が出た場合に企業側で確認・対応すべきポイントです。

  • 離職票(離職票-1・-2)の離職理由を実態に即して正確に記載しているか(虚偽の記載は不正受給の原因となりうる)。
  • 短期雇用の労働実績(出勤日数・勤務時間等)を正確に保存しているか
  • 週20時間以上勤務する短時間労働者を含め、雇用保険の被保険者資格取得・喪失の届出に漏れがないか
  • 短期契約の更新・非更新に関する説明を明確に行い、労働者が更新期待を誤認しないようにしているか

短期離職の受給可否を社内で整理したい方へ

植本のシミュレーターは短期雇用や被保険者期間が短いケースにも配慮した設計です。まずは複数シナリオを試して、ハローワーク相談の準備資料として活用いただけます。

7|よくある質問(FAQ)

Q:勤続11か月でも絶対に受給できないのですか?
A:いいえ。一般のルールでは、特定受給資格者・特定理由離職者以外の方は離職前2年間に通算12か月以上の被保険者期間が必要とされていますが、会社都合(特定受給資格者)として扱われる場合や特定理由離職者・短期雇用特例被保険者として特例一時金の対象となる場合など、例外もあるため、一度ハローワークで個別の状況を確認することが望ましいといえます。
Q:短期離職で受給できた場合、給付日数はどのくらいですか?
A:給付日数は、年齢・被保険者期間・離職理由によって決まります。短期離職であっても、特定受給資格者・一部の特定理由離職者や就職困難者として認められれば、一般の離職者より所定給付日数が手厚くなる場合があります。具体的な日数は、ハローワークが公表している「所定給付日数」の表を参照して確認します。
Q:特例一時金というのはどんなときに使えますか?
A:短期雇用特例被保険者(季節的・臨時的に働く方)で、離職日前1年に11日以上働いた月が通算6か月以上あるなどの要件を満たす場合に、特例一時金の支給対象となることがあります。申請方法や詳細は、短期雇用特例制度のリーフレットやハローワーク窓口で確認する必要があります。

参考リンク(公的資料)

まとめ(短期離職で失業手当を検討するときの整理ポイント)

  1. まずは離職票の「離職理由」と被保険者期間(月ごとの賃金支払基礎日数11日以上の月数)を確認し、実態に即した記載・申告になっているかを確認する。
  2. 被保険者期間が短くても、会社都合による離職や正当な理由のある自己都合、短期雇用特例被保険者としての特例一時金の可能性など、例外要件に該当しないかを整理する(判断はハローワークが行う)。
  3. 疑問点がある場合は離職票・就労実績・診断書等を持参し、ハローワークの窓口で確認したうえで、必要な手続きを進める。
  4. 労務担当者としては、雇用保険の資格取得・喪失の届出と離職票の正確な作成、労働実績データの保全を通じて、従業員の適正な受給をサポートする体制を整えておくことが重要である。

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

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