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【保存版】退職給付金はどうやってもらうのか?植本労務管理事務所監修・申請ミスを防ぐ方法
植本労務管理事務所 監修
退職給付金とは、退職時に会社から受け取る「退職金」に加え、企業年金や確定拠出年金(DC)など、
退職後の暮らしを支えるための制度をまとめた呼び方です。これらは、長く働いてきたことへの「功労」に報いる意味合いも大きく、
老後や転職直後の生活を支える大切なお金です。
一方で、退職給付金の内容や受け取り方は会社によって大きく異なります。会社独自の退職金のほか、
中小企業退職金共済(中退共)や確定拠出年金など、外部の制度が組み合わさっているケースも少なくありません。
こうした仕組みをきちんと理解していないと、「会社が自動的に手続きしてくれると思っていたが、実は自分で申請しなければならなかった」
「期限を過ぎてしまい、一部の給付を受け取れなかった」といったトラブルにつながるおそれがあります。
本記事では、退職給付金の基本的な考え方から、会社ごとの制度を確認する際のポイント、
実際に退職する場面での手続きの流れまでを、できるだけ専門用語を避けながら解説します。
また、記事の後半では、勤続年数や給与額から、おおよその退職給付金・再就職手当の目安を確認できるシミュレーターもご紹介します。
※本記事は、日本の法律や一般的な企業の退職金制度を前提とした解説です。 実際の受給条件や金額は、会社ごとの就業規則・退職金規程・企業年金規約などによって大きく異なります。 最終的な取り扱いは、必ず自社の規程や案内文書をご確認ください。
退職給付金とは?
退職給付金は、一言でいうと「会社を辞めたあとに受け取るお金や年金」を広く含んだ言い方です。 大きく分けると、次のようなタイプがあります。
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退職一時金:
いわゆる「退職金」と言われるもので、退職時にまとまったお金を一度に受け取るタイプです。 多くの会社では、勤続年数や最終給与、退職理由(自己都合・会社都合など)によって金額が変わります。 -
確定給付年金(DB):
将来受け取る年金額の計算方法があらかじめ決まっている制度です。 約束された給付を実現するための運用は主に会社側が担い、退職後に「年金」として分割で受け取る形が中心です。 -
確定拠出年金(DC):
会社や本人が毎月一定額を積み立て、そのお金を運用した結果に応じて将来の受取額が変動する制度です。 運用の指示は本人が行うため、「自分で運用する年金」というイメージに近い制度です。 -
中小企業退職金共済(中退共):
主に中小企業向けに用意された、国が関わる退職金共済制度です。 会社が毎月掛金を納めると、従業員が退職したときに中退共から直接退職金が支給されます。 会社に自前の退職金制度がなくても、外部制度として利用できるのが特徴です。
これらのうち、どの制度を導入しているかは会社ごとに異なります。 「退職一時金だけ」の会社もあれば、「退職一時金+企業年金(DB)」「退職一時金+確定拠出年金(DC)+中退共」など、 複数を組み合わせている会社もあります。まずは自社の就業規則や退職金規程、企業年金の案内資料などを確認し、 「自社にはどの制度があるのか」を整理することが第一歩になります。
受給条件と法律上のポイント
退職給付金は、法律で一律に支給が義務付けられているものではありません。 会社が任意で制度を設け、その内容を就業規則や退職金規程、労働協約などに定めることで、 はじめて支給義務が生じる仕組みです。
このため、「退職給付金があるかどうか」「いくらくらいもらえるのか」 「どのような条件で支給されるのか」は会社によって大きく異なります。たとえば、次のような違いがあります。
- 退職金制度そのものがない会社
- 勤続3年以上から退職金が発生する会社
- 一定の役職以上のみ退職金が支給される会社
実務的には、次のような書類を確認することで、自社の退職給付金制度の全体像を把握できます。
- 就業規則(退職金に関する基本方針や有無)
- 退職金規程(支給対象者、計算方法、支給時期などの詳細)
- 企業年金規約(DB・DCなどを導入している場合)
| 給付の種類 | 受給条件(例) | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 退職一時金 | 勤続年数3年以上など会社規定による |
就業規則・退職金規程に基づき会社が計算・支給。 離職票は不要だが、退職届や口座情報の提出が必要になることが多い。 |
| 確定給付年金(DB) | 勤務期間・加入条件あり |
受給開始年齢や退職時期により年金額が変わることがあります。 企業年金規約や別途の案内文書を確認することが重要です。 |
| 確定拠出年金(DC) | 拠出期間・運用実績による |
退職に伴い、資産の移換手続きや受給開始手続きが必要です。 手続きを行わないと自動移換などにより不利益が生じる場合があります。 |
| 中退共 | 中小企業退職金共済に加入している従業員 | 退職後一定期間内(例:3年以内)に、本人が中退共へ請求手続きを行う必要があります。[id:18820] |
退職給付金の申請方法ステップ
退職給付金の手続きは、大きく分けると、 「会社独自の退職金・企業年金など(社内制度)」に関する手続きと、 「中退共や確定拠出年金(DC)など、外部制度」に関する手続きの2つがあります。 実務上は、次のような流れで進むことが一般的です。
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退職日と退職理由を確認し、就業規則・退職金規程をチェックする
「自己都合退職か」「会社都合退職か」によって、退職金の支給率が変わる会社もあります。 また、勤続年数の起算日(入社日)や試用期間の扱いなども、規程に従って確認します。 -
会社から案内される書類や必要書類を準備する
退職届、本人確認書類、振込口座の届出、退職金に関する同意書など、 会社の案内に沿って書類を準備・提出します。これらが揃わないと、 退職金の計算や振込手続きが進められない場合があります。 -
会社が社内制度に基づき退職金・企業年金(DB)の計算・支給手続きを行う
就業規則や企業年金規約に基づき、会社側が退職者の情報をもとに計算・支給手続を行うのが通常です。 口座情報の提出や受取方法の選択が必要な場合は、会社からの依頼に応じて対応します。 -
中退共や確定拠出年金(DC)など、外部制度について本人が請求手続きを行う
中退共は、退職後に本人が中退共へ請求書類を提出することで退職金が支給される仕組みで、 多くの場合「退職後〇年以内」といった期限があります。
確定拠出年金(企業型DC)は、退職に伴い資産の移換や受給開始の手続きが必要です。 手続き方法は、加入している運営管理機関から送付される案内に従います。
申請ミスを防ぐチェックリスト
退職前後は手続きが多く、うっかり漏れが起こりやすいタイミングです。次のポイントを押さえておくと安心です。
- 退職届の提出日・退職日が正確に記載されているか
- 勤続年数・給与額など、退職金の計算の前提となる情報に誤りがないか
- 自社の退職金制度(退職一時金・DB・DC・中退共など)の有無と内容を把握しているか
- 中退共やDCなど外部制度について、申請が必要な手続きと期限を確認しているか
- 再就職予定がある場合、失業給付や再就職手当との関係を事前に確認しているか
よくある質問(FAQ)
退職給付金は必ずもらえるの? ▾
そのため、
・そもそも退職金制度がない会社では支給されない
・制度があっても、勤続年数が短い場合などは支給対象外となることがある
といったケースがあります。まずは、自社に退職給付金制度があるかどうか、 就業規則や退職金規程を確認することが重要です。
申請しないとどうなる? ▾
1. 会社独自の退職一時金や企業年金(DB)の場合
就業規則や退職金規程、企業年金規約に基づき、会社側が退職者の情報をもとに支給手続きを進めるのが通常です。 いわゆる「申込書を出さないと一切もらえない」という性質のものではありません。
ただし、
・振込口座の情報を提出していない
・必要な同意書や確認書類を返送していない
といった場合には、会社で支給準備ができず、結果として支給が遅れたり、確認に時間を要したりすることがあります。
2. 中退共や確定拠出年金(DC)など外部制度の場合
中退共や企業型DCなどの外部制度については、原則として本人による所定の申請・請求手続きが必要です。
・中退共は、退職後一定期間内(例:3年以内)に本人が請求しないと、退職金を受け取れない場合があります。
・企業型DCは、退職後に資産の移換手続きを行わないと、一定期間経過後に「自動移換」され、 運用の自由度が制限されるなどの不利益が生じることがあります。
このため、「会社独自の退職金については会社が中心となって手続きを進める」 「中退共やDCなど外部制度は、自分からの請求が必要」と整理しておくと分かりやすいと言えます。
再就職手当との併給は可能? ▾
ただし、再就職手当の金額は、退職前の賃金日額や基本手当の残日数などによって決まります。 退職金の有無や金額そのものが、再就職手当の支給を直接妨げるわけではありませんが、 具体的な取扱いは、退職理由や離職票の記載内容なども含めて個別に判断されます。
おおまかな受給イメージは、本記事のシミュレーターで確認しつつ、 実際の支給条件についてはハローワークの案内等を確認していただくと安心です。
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