【会社都合として扱われる?】失業保険が増える条件を社労士が解説|自己都合との違いも完全版

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【会社都合として扱われる?】失業保険が増える条件を社労士が解説|自己都合との違いも完全版

植本労務管理事務所 監修

退職理由によって失業保険(雇用保険の基本手当)の給付額や支給期間は大きく変わります。一般に、雇用保険上「会社都合に近い理由」での離職に該当すると、給付日数が増え、支給開始も早くなる場合があります。一方で、従業員本人の事情による自己都合退職では、給付制限が付くなど扱いが異なります。

本記事では、会社都合退職と自己都合退職の違い、会社都合退職として扱われる可能性のある条件、手続きの流れを整理するとともに、離職票の離職理由の書き方で注意すべき点についても、実務でありがちな場面を踏まえて解説します。さらに、自社の従業員のケースで給付日数や再就職手当を簡単にシミュレーションできるツールも紹介します。

※本記事は一般的な制度解説です。最終的な離職理由の判断や給付内容の決定はハローワークが行うため、個別のケースについてはハローワークでの確認が必要になります。

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会社都合退職と自己都合退職の違い

まず前提として、失業保険(基本手当)を受給するには「失業の状態にあること」と「一定の被保険者期間があること」という2つの要件を満たす必要があります。そのうえで、離職理由により「会社都合に近い扱い」と「一般的な自己都合」とで、給付日数や給付制限の有無が変わってきます。

ここでいう「会社都合退職」とは、解雇や倒産など、労働者側に責任のない事情で離職を余儀なくされたケースを指し、雇用保険上は「特定受給資格者」や一部の「特定理由離職者」に該当する可能性があるケースがこれに近い扱いになります。一方で、転職希望や家庭の事情等、労働者側の都合による退職は、一般に自己都合退職として取り扱われます。

会社都合と自己都合の取り扱いの違いは、おおむね次のとおりです。

退職タイプ給付日数支給開始給付制限
会社都合に近い離職理由 長め(年齢・勤続年数に応じて増える場合あり) 待期7日後から支給開始(原則) なし
自己都合 短め(原則90〜150日) 待期7日+給付制限経過後 1か月の給付制限あり

なお、年齢や被保険者期間によっては、会社都合に近い離職理由の場合に所定給付日数が一般の自己都合よりも手厚くなることがありますが、加入期間が短い場合などは、日数が大きく変わらないケースもあります。

会社都合として扱われる可能性がある主なケース

次のようなケースは、雇用保険上「会社都合に近い離職理由」として取り扱われる可能性があります。最終的な判断は、離職票の記載内容や本人・事業主の説明、証拠書類を踏まえ、ハローワークが行います。

  • 解雇・倒産・事業所閉鎖
    会社の経営悪化による整理解雇、業務縮小に伴う人員整理、事業所自体の廃止や倒産など、従業員側には選択の余地がなく離職せざるを得なくなった場合です。
  • 契約満了(有期雇用で、更新を希望しているにもかかわらず更新されなかった場合)
    有期契約社員が契約更新を希望していたにもかかわらず、会社側の理由で更新されなかったケースです。契約期間や更新回数などにより、会社都合に近い扱いとなる可能性があります。
  • パワハラやセクハラなど、就労環境が著しく害された結果の退職
    上司や同僚からの継続的な嫌がらせ・暴力・セクハラ等により、就労継続が困難になったため離職したケースです。メール・録音・診断書など、事実をうかがわせる資料があると判断がしやすくなります。
  • 長時間労働・賃金未払など、労働条件上の重大な問題
    著しい長時間残業や賃金未払・大幅な賃金カット等により、やむを得ず退職した場合も、離職理由によっては会社都合に近い扱いとなる可能性があります。
  • その他、雇用保険上の基準に該当するとハローワークが判断した正当な理由
    退職勧奨への応諾、人員整理を目的とした希望退職への応募、使用者都合による長期休業など、個別事情により判断されるケースもあります。

特に、自己都合退職であっても「正当な理由」がある場合は、雇用保険上「正当な理由のある自己都合」として扱われ、給付制限が免除されるなど、会社都合に近い取り扱いとなることがあります。代表的には、次のような理由です。]

  • 本人の疾病・負傷・心身の障害等により、従来の業務を継続することが困難になった
  • 家族の介護や看護が必要になり、就労継続が客観的に困難となった
  • 通勤困難(結婚・転居、事業所移転、交通機関廃止等)により勤務継続が難しくなった
  • 配偶者の転勤等に伴い別居生活の継続が困難となった

このような「正当な理由のある自己都合」に該当した場合、原則として給付制限はかかりませんが、所定給付日数は一般の自己都合と同じになるケースもあります。「必ず会社都合と同じ日数になる」というものではない点に留意が必要です。

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会社都合として手続きを進める際のポイント(事業主側の視点)

自社の従業員が「会社都合に近い離職理由」に該当するかどうかを整理しつつ、実際の手続きでは次の点を押さえておくと、従業員とのトラブルやハローワークでの問い合わせをある程度防ぐことができます。

  1. 退職理由を整理し、客観的な証拠を残す
    退職勧奨の経緯メモ、配置転換命令書、出勤簿・賃金台帳、医師の診断書の写し、ハラスメント相談の記録等、後から第三者が見ても事情がわかる資料をできるだけ残しておきます。
  2. 離職証明書・離職票の離職理由欄を事実に沿って記載する
    事業主としての認識に基づき、客観的な事実関係を整理して記載します。従業員本人が異なる主張をする余地がある場合には、その点を説明したうえで交付しておくと、後の誤解が生じにくくなります。
  3. 本人から「正当な理由」がある旨の申出があった場合の対応
    本人から健康状態や家族事情、通勤困難等を理由とする申し出があった場合は、その内容を確認し、会社としての見解を整理しておきます。必要に応じて、ハローワークに事情を説明するための意見書等を作成することもあります。
  4. 最終的な離職理由の認定はハローワークが行うことを周知する
    会社が離職票にどのように記載しても、最終的な資格区分(会社都合相当か、自己都合か)は、本人と事業主双方の主張や資料を踏まえてハローワークが判断します。この点を従業員にも説明しておくと、「会社都合にしてほしい/自己都合にしてほしい」といった要望への対応がしやすくなります。

よくある質問(FAQ)

自己都合退職だけど給付制限を免除できる場合は?
健康上の理由や家族介護、不当な職場環境、通勤困難など、雇用保険上の「正当な理由」が認められれば給付制限が免除される場合があります。
例えば、長時間の通勤や持病の悪化により就労継続が困難になったケース、親の介護が必要になったケースなどが典型例です。診断書や介護の状況がわかる書類、通勤経路や時間が分かる資料など、事実を裏付ける資料を整理したうえで、ハローワークで確認を受ける流れになります。
会社都合退職に認定されるのはどんなケース?
解雇・倒産・事業所閉鎖のほか、有期契約の雇止めや、パワハラ等による退職、長時間労働や賃金未払等が原因で離職を余儀なくされた場合など、労働者に責任のない事情で離職したケースが対象となる可能性があります。
ただし、「どの区分に当たるか」は、離職票の記載や本人・会社の主張、証拠書類をもとにハローワークが最終的に判断します。事業主側の記載のみで一方的に決まるものではありません。
給付日数や再就職手当はどうやって確認する?
本記事下部のシミュレーターで、年齢・勤続年数・退職理由の区分を入力することで、おおよその給付日数や再就職手当の金額を確認できます。正式な所定給付日数・支給額等は、離職票の内容に基づき、ハローワークで受給資格決定が行われた後に確定します。

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自社の退職予定者の条件を入力することで、会社都合相当か自己都合かによる違いを簡単に比較できます。人事・労務としての説明準備にもご活用ください。

監修:植本労務管理事務所

※離職票の離職理由について、実際と異なる内容を記載したり、虚偽の申告を行うことは不正行為に該当する場合があります。不正に受給した失業給付は3倍相当額の返還・納付が命じられる可能性があるほか、事業主が虚偽記載に関与した場合は、従業員と連帯して返還を求められたり、助成金が不支給となるリスクもあります。実際の事実関係に即した適切な記載を行うことが重要です。

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