パート・アルバイトの人向け|加入条件を反映した失業手当即時試算
監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)
「パートでも失業手当はもらえる?」「短時間勤務でも対象?」という疑問に、雇用保険の加入条件と受給要件を正確に踏まえた試算方法でお答えします。ここでの「失業手当」は、雇用保険法に定める「基本手当(いわゆる失業給付)」を指します。
まず確認:雇用保険の「加入条件」と「受給要件」は別物
パート・アルバイトの方に関するご相談で多いのが、「雇用保険に入れる条件」と「失業手当を実際にもらえる条件」が混同されているケースです。
まずは、次の2つを分けて押さえることが重要です。
| 項目 | 内容(パート・アルバイト共通) |
|---|---|
| ① 雇用保険に「加入できる」条件 |
|
| ② 失業手当(基本手当)を「受給できる」条件 |
|
参考:厚生労働省「雇用保険制度について(基本手当)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/hoken.html
つまり、週20時間以上・31日以上の雇用見込みがあり、一定期間以上雇用保険に加入していれば、パート・アルバイトでも正社員と同様に基本手当の対象になり得ます。雇用形態ではなく「雇用保険の加入状況」と「被保険者期間」がポイントです。
「失業」と認められるための基本条件
雇用保険の基本手当は、「失業した方の再就職までの生活を支える」趣旨の制度です。そのため、次の条件をすべて満たす必要があります。
- 積極的に就職しようとする意思があること
- いつでも就職できる能力(健康状態・育児や介護の状況など)があること
- 積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現に職業に就いていないこと
上記に当てはまらない例:家事・学業に専念している、病気やけがで当面働けない、自営に専念しているなど。
詳細:ハローワークインターネットサービス「基本手当」
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
また、離職理由によっては給付制限(一定期間、基本手当が支給されない期間)が設けられます。自己都合退職の場合、原則として待期満了後1か月間の給付制限が生じます(5年以内に自己都合離職が複数回ある場合など、3か月となるケースもあります)。
失業手当(基本手当)の計算方法(パート・アルバイト共通)
失業手当の中心となるのが「基本手当日額」です。これは次の流れで算出されます。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 賃金日額の算出 |
原則として、離職前6か月間の賃金総額(残業代・各種手当を含むが賞与は除く)を180で割って「1日あたりの賃金」を求めます。 計算式:賃金日額 = 離職前6か月の総支給額 ÷ 180 |
| ② 給付率の適用 |
賃金日額に、年齢と賃金水準に応じた給付率(おおむね45%~80%)を乗じて基本手当日額を計算します。 賃金が低い方ほど給付率が高くなる仕組みで、パート・アルバイトの方は高めの給付率が適用されることが多くなります。 |
| ③ 上限・下限額の確認 |
基本手当日額には、年齢ごとに上限額と下限額が定められています。 例:2025年8月1日時点では、29歳以下の上限は日額7,255円、全年齢共通の下限は日額2,411円 など。 |
上記はあくまで考え方とおおよその計算方法です。実際の支給額は、離職票に記載された賃金額を基に、ハローワークが法令・通達に沿って算定します。
詳細な計算式や上限・下限額は厚生労働省「基本手当日額等について」参照:
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000601754.pdf
具体的な試算イメージ(週25時間勤務・時給1,200円のケース)
イメージをつかんでいただくため、あくまで一例として、次のような勤務条件を想定します。
- 週25時間勤務(1日5時間×週5日など)
- 時給1,200円
- 残業・深夜・休日手当等なし(シンプルなケース)
- 毎月ほぼ同じ時間数を勤務している
| 項目 | 金額・内容(概算) |
|---|---|
| 1週間の賃金 | 1,200円 × 25時間 = 30,000円 |
| 月収(4.33週換算) | 30,000円 × 4.33 ≒ 約130,000円 |
| 6か月の総支給額 | 約130,000円 × 6か月 = 約780,000円 |
| 賃金日額 | 780,000円 ÷ 180日 ≒ 約4,333円 |
| 基本手当日額(給付率約60%と仮定) | 4,333円 × 60% ≒ 約2,600円 |
| 所定給付日数90日の場合の総額 | 約2,600円 × 90日 = 約234,000円 |
実際には、年齢や過去の雇用保険加入期間、離職理由などによって「所定給付日数」や給付率が異なります。また、賃金の変動が大きい場合や、6か月未満の勤務しかない場合は、別の計算方法が適用されることもあります。
あなたの条件で即時試算する
週の労働時間・給与・雇用期間・離職理由などを入力すれば、雇用保険の加入状況と受給要件を踏まえた失業手当(基本手当)の概算がすぐ分かります。最終的な支給額はハローワークの算定が優先されますので、目安としてご活用ください。
所定給付日数の目安(パート・アルバイトでも共通)
何日分の基本手当を受け取れるか(所定給付日数)は、離職時の年齢・雇用保険の被保険者期間・離職理由で決まります。雇用形態(正社員・パート・アルバイト)で差はありません。
| 離職理由の区分 | 概要 | 所定給付日数のイメージ |
|---|---|---|
| 一般受給資格者 | 自己都合退職や定年退職など(特定受給資格者・特定理由離職者に該当しない場合) | 被保険者期間1年未満~10年未満は90日、10年以上で120日~など |
| 特定受給資格者 | 倒産・解雇など、会社都合で離職を余儀なくされた場合 | 同じ被保険者期間でも、一般受給資格者より長くなる(最大330日など) |
| 特定理由離職者 | 有期契約の更新がない、やむを得ない自己都合(健康・家族事情 等)の場合 | 一部の場合、特定受給資格者と同様の取扱い(所定給付日数が手厚くなる) |
特定受給資格者・特定理由離職者の範囲と判断基準の詳細はハローワークインターネットサービスをご参照ください:
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html
パート・アルバイト特有の注意点
-
シフト変動が大きい場合の賃金日額
→ 月によって勤務時間が大きく変動する場合でも、原則として離職前6か月間の賃金を合計して180で割ります。欠勤が多い・6か月未満の勤務しかない場合などは、年間の賃金や同種労働者の賃金等を用いる特例もあります。 -
扶養内勤務でも雇用保険に入っていれば対象
→ 所得税・社会保険上の扶養の範囲かどうかとは無関係で、週20時間以上・31日以上の雇用見込みを満たし雇用保険に加入していれば、被保険者期間としてカウントされます。 -
自己都合退職は給付制限あり
→ 原則として、待期7日間終了後、さらに1か月間は基本手当が支給されません(給付制限)。5年以内に一定回数以上の自己都合離職歴がある場合は、3か月となることがあります。 -
短期離職を繰り返すと通算に影響
→ 離職から次の就職までの期間が1年を超えると、それ以前の被保険者期間は原則として通算されません。短期間の雇用を転々とする場合、被保険者期間が思ったより溜まっていないケースがあります。 -
失業中のアルバイトの扱いに注意
→ 失業認定期間中に労働した日は、時間数や収入によって「基本手当の不支給」「一部減額」となることがあります。また、週20時間以上・31日以上の雇用見込みがある就労は原則「就職」とみなされ、基本手当の受給はできません。必ずハローワークに申告が必要です。
失業期間中の就労の取扱いについての詳細:
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
「対象かどうか」も含めて簡易チェック
「週の労働時間が20時間を超えているか」「雇用保険にいつから入っているか」「離職前2年間(または1年間)の被保険者期間は何か月か」などを入力することで、受給要件を満たす可能性と、基本手当の概算額を同時に確認できます。
ハローワークでの正式な手続きの前に、おおよそのイメージをつかむ材料としてご活用ください。
手続きの大まかな流れ
パート・アルバイトの方でも、手続きの流れは正社員と同じです。概要を簡潔に整理しておきます。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 離職 | 会社から「雇用保険被保険者離職票(1・2)」の交付を受けます。離職票は郵送で届くことが多く、退職後おおむね1~2週間程度が目安です。 |
| 2. ハローワークでの受給手続き |
住所地を管轄するハローワークにて、求職申込みと受給資格決定の手続きを行います。 必要書類の例:離職票、本人確認書類、マイナンバー確認書類、写真、本人名義の通帳・キャッシュカード等。 |
| 3. 待期期間7日間 | 受給資格決定後、全員一律で7日間の待期期間があり、この間は基本手当は支給されません。 |
| 4. (自己都合等の場合)給付制限 | 自己都合退職など、一定の離職理由の場合、待期満了後1か月間(条件により3か月間)の給付制限期間が設けられます。 |
| 5. 失業認定と支給 | 原則4週間ごとの「失業認定日」にハローワークに出頭し、求職活動の実績等の確認を受けることで、その期間分の基本手当が支給されます。 |
手続きの詳細や必要書類については、ハローワークインターネットサービス「雇用保険の手続き」をご参照ください:
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/
よくある誤解と実務上のポイント
→ 週20時間以上・31日以上の雇用見込みがあれば、雇用保険加入が原則です。
誤解2:「扶養内だから失業手当はもらえない」
→ 税や社会保険上の扶養と、雇用保険の被保険者資格・失業手当の受給要件は別の制度です。扶養内でも、条件を満たせば受給対象となります。
誤解3:「前に勤めていた会社の分も全部通算される」
→ 離職から次の就職まで1年以上空いている期間があると、その前の被保険者期間は原則として通算されません。
実務では、これらの誤解により、雇用保険の適用漏れや、退職後に初めて受給要件を満たしていないことが判明するケースが見受けられます。採用・雇用契約時点で「週所定労働時間」と「雇用見込み」を明確にし、適切に雇用保険の手続きを行うことが重要です。
まとめ
パート・アルバイトでも、週20時間以上・31日以上の雇用見込みがあり、雇用保険の被保険者期間が一定以上あれば、原則として失業手当(基本手当)の受給が可能です。
雇用形態ではなく、「雇用保険に加入していたか」「どのくらいの期間加入していたか」「どういう理由で離職したか」がポイントになります。
また、基本手当日額は、離職前6か月の賃金をベースに、賃金日額×給付率(45~80%)で計算されます。パート・アルバイトの方は給付率が高くなることも多く、想像よりも受給額が多いケースも珍しくありません。
まずはシミュレーター等で概算を把握しつつ、最終的には離職票を持参のうえハローワークで正式な説明・算定を受けることが、従業員の方への適切な案内・説明につながります。
※本ページの内容は、記事公開時点の法令・公表資料に基づき作成しています。実際の支給可否・金額・給付日数等は、ハローワークによる受給資格の決定および算定結果が優先されます。制度改正等により取扱いが変更される場合がありますので、最新情報は厚生労働省・ハローワークの公式情報をご確認ください。
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