貯金ゼロでも何ヶ月暮らせる?退職給付金+失業手当で生活期間を試算

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貯金ゼロでも何ヶ月暮らせる?退職給付金+失業手当で生活期間を試算
貯金ゼロでも何ヶ月暮らせる?退職給付金+失業手当で生活期間を試算

貯金ゼロでも何ヶ月暮らせる?退職給付金+失業手当で生活期間を試算

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

「退職したいけれど、貯金がほとんどない」「退職金と失業手当だけでどのくらいの期間暮らせるのか、数字で確認したい」というご相談は、実務上とても多く寄せられます。 本記事では、退職給付金(退職金)と雇用保険の失業手当(基本手当)を合算し、“生活可能月数”を逆算するステップを、法律上の前提と実務上の注意点を押さえながら解説します。

なお、退職給付金・失業手当はいずれも「必ずこの金額・この日数がもらえる」と一律に決まっているものではなく、会社規程や雇用保険法上の要件によって大きく変わります。 本記事はあくまで一般的な考え方と試算方法を示すものであり、最終的な受給の可否・金額・日数は、就業規則や退職金規程、ハローワークでの正式な算定結果をご確認ください。

退職後の生活資金イメージ

画像①:トップ(推奨1200×700)

結論:まず“総額”と“毎月の支出”を出す

退職後に「いつまで生活がもつか」を考える際は、次の2つを切り分けて把握することが重要です。

1. 退職後に入ってくるお金の総額(退職給付金+失業手当 など)
2. 退職後に毎月出ていく生活費(家賃・食費・社会保険料等)

この2つが分かれば、生活可能月数は次の式で試算できます。

生活可能月数 =(退職給付金 + 失業手当の概算総額)÷ 月間生活費

失業手当(雇用保険の基本手当)は「毎月決まった日に決まった額が支給される給与」とは異なり、4週間ごとの失業認定に基づいて支給されます。 そのため、生活設計を考える場面では、月ごとの振込スケジュールよりも、まずは「トータルでいくら受け取れる見込みか」を押さえておくと分かりやすくなります。

① まずは受け取れる“総額”を把握

● 退職給付金(退職金)

退職金は、法律で一律に支給が義務付けられているものではなく、会社が任意で制度を設けている場合にのみ支給されるものです。 したがって、まずは「自社に退職金制度があるか」「どのような条件・計算式か」を就業規則や退職金規程で確認します。

一般的には、以下のような点を確認します。

  • 退職金制度の有無(退職金規程・就業規則の該当条文)
  • 支給対象となる退職事由(自己都合退職・会社都合退職・定年退職など)
  • 勤続年数ごとの支給率・ポイント(「勤続○年以上」などの要件)
  • 懲戒解雇などの場合の減額・不支給規定の有無
  • 支払時期(退職後○か月以内など)と支払方法(振込口座・一括/分割)

退職金は一時金として支給されるのが一般的ですが、支給額には所得税(退職所得)を源泉徴収する必要があり、手取り額=生活に回せる金額は、税引後の金額となります。 実務では、退職金規程に基づき会社側で支給額を算定し、退職金支給時に「退職所得の源泉徴収票」を発行しておくことが必要です。

● 失業手当(雇用保険の基本手当)

退職後に受給できる失業手当(雇用保険の基本手当)の概算総額は、次のような流れで考えます。

1. 「賃金日額」を求める(離職前6か月間に支払われた賃金総額 ÷ 180)
2. 賃金日額に年齢区分ごとの給付率(おおむね 45〜80%)を乗じ、「基本手当日額」を算定(上限額・下限額あり)
3. 「基本手当日額 × 所定給付日数」で、おおまかな総額を把握

所定給付日数は、離職理由(自己都合・会社都合など)・年齢・雇用保険の被保険者期間によって変わります。 例えば自己都合退職の場合は90日が基本となるケースが多い一方、倒産・解雇などの「特定受給資格者」や一定の「特定理由離職者」に該当する場合は、年齢や被保険者期間に応じて120日〜330日といった、より長い日数が認められることがあります。

なお、実際の基本手当日額と所定給付日数は、離職票等に基づきハローワークで正式に算定される金額・日数が最終的なものとなります。 自社の退職予定者や従業員の相談に対応する際は、試算はあくまで目安とし、「具体的な金額はハローワークでの決定が優先される」旨を必ず伝えておくと安全です。

失業手当計算イメージ

画像②:計算イメージ(推奨1200×600)

② 毎月の生活費を“リアルに”出す

受け取れるお金の総額が分かっても、毎月いくら必要かが分からなければ「何ヶ月もつか」は計算できません。 退職後は、在職中とは異なり、社会保険料や住民税の支払い方法・金額が変わることも多いため、できるだけ具体的に洗い出しておくことが重要です。

生活費の項目を整理する際には、次のような観点を意識すると、漏れが少なくなります。

  • 固定費(家賃、通信費、保険料など)
  • 変動費(食費、日用品費、交際費など)
  • 税金・社会保険料(国民健康保険料、国民年金保険料、住民税など)
  • 将来支出の積立分(更新料、年払い保険料、車検費用など)
項目 月額例 注意点
家賃 80,000円 更新料や引っ越し予定があれば、月割りで積立を考慮
食費 35,000円 外食頻度や自炊比率により大きく変動
社会保険・国保 25,000円 退職後は、健康保険・年金を自分で納めます。
・健康保険:任意継続or国民健康保険のどちらに入るかで金額が変動
・年金:原則として国民年金保険料を自分で納付(免除・猶予制度を利用できる場合もあります)
会社負担がなくなる分、在職中より負担感が大きくなる点に注意が必要です。
通信・光熱費 20,000円 電気・ガス・水道は季節変動あり。通信費の見直し余地も検討
その他(雑費・医療費など) 15,000円 日用品・医療費・交際費など、ある程度のバッファを見込む
合計 175,000円 「最低限」で見積もっても、この水準になるケースが多い
ここで設定する月間生活費は、「今の生活水準」をそのまま維持する金額ではなく、退職後に無理なく削れるものを削ったうえでの“最低ライン”を意識して算出すると、保守的な試算になり安心です。

③ 試算例:退職給付金+失業手当で何ヶ月暮らせるか

ここまでの考え方を用いて、具体例を見てみます。あくまで一例ですが、全体像がイメージしやすくなります。

項目 金額・条件
退職給付金(税引後手取り) 800,000円
失業手当の基本手当日額 6,000円(仮定)
所定給付日数 150日(仮定:年齢・被保険者期間・離職理由により変動)
失業手当総額(概算) 6,000円 × 150日 = 900,000円
合計資金 退職給付金800,000円 + 失業手当900,000円 = 1,700,000円
月間生活費 175,000円(前掲の例)
生活可能月数 1,700,000円 ÷ 175,000円 ≒ 約9.7ヶ月

なお、別パターンとして、失業手当の総額が多いケースを比較してみます。

項目 金額・条件
退職給付金(税引後手取り) 800,000円
失業手当総額 1,200,000円(例:基本手当日額8,000円 × 150日など)
合計資金 2,000,000円
月間生活費 160,000円(生活費をさらに抑えたケース)
生活可能月数 2,000,000円 ÷ 160,000円 ≒ 約12.5ヶ月

※ここでの数字はすべて仮定です。実際の退職給付金額は就業規則・退職金規程、失業手当の金額・日数は雇用保険法に基づきハローワークで算定される金額・日数が最終的なものとなります。

まずは失業手当の総額を出してみる

退職給付金の見込み額(または実際の金額)が把握できていれば、あとは「失業手当の総額」を概算することで、生活可能月数はすぐに概ね把握できます。 そのうえで、いつ退職するか、どのくらいの期間を無収入リスクとして許容するかを検討することができます。

なお、失業手当は、次のような要件を満たしていることが前提となります。

  • 離職前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あること(自己都合退職の場合など)
  • 離職後も就職しようとする意思と、いつでも就職できる能力があること
  • 退職後にハローワークで求職申込みを行い、失業の状態にあると認められること
シミュレーター入力画面

画像③:入力例(推奨1200×600)

失敗しやすいポイント

退職後の生活資金を試算する際、次のような点を見落としていると、「想定より早く資金が尽きる」リスクにつながります。 実務でご相談を受ける中でも、特に注意が必要と感じるポイントを整理しました。

  • 社会保険料の増加(国民健康保険・国民年金)を計算に入れていない
  • 住民税の支払い(前年所得に基づき、退職後も課税される)時期・金額を考慮していない
  • 自己都合退職による給付制限期間(原則2か月または3か月)を見落としている
  • 待期期間(原則7日間)中は基本手当が支給されないことを忘れている
  • 早期に再就職した場合の「再就職手当」の可能性・金額を加味していない
  • 老齢厚生年金を受給中の場合、基本手当受給により年金が一部または全部支給停止となる可能性を把握していない
とくに自己都合退職の場合は、
・退職後に7日間の待期期間
・さらに給付制限期間(原則2か月または3か月)
があるため、この間は基本手当が支給されず、実質的に収入ゼロの期間が発生する可能性があります。 この期間を生活費の試算に織り込んでいないと、「思っていたより早く資金が減ってしまう」ということになりかねません。

④ 法律上の前提として押さえておきたいポイント

● 退職給付金(退職金)に関する前提

退職金については、次の点を押さえておくと、従業員からの相談対応もしやすくなります。

  • 退職金は法律で一律に支給が義務付けられたものではなく、会社に退職金制度がある場合に、その規程に従って支給されるものであること
  • 退職金制度がない場合、原則として会社に退職金の支払い義務は生じないこと
  • 退職金制度があるにもかかわらず、規程に定めた額を支払わない場合は、賃金支払いに関する法令違反となる可能性があること
  • 退職金規程の変更により労働者に不利益となる場合は、労働契約法上、「変更の合理性」と「周知」が必要とされること
  • 懲戒解雇等を理由に退職金を全額不支給とするには、労働者の長年の功績をすべて失わせるほどの重大な背信行為等が必要とされ、裁判例上も慎重に判断されていること

● 失業手当(基本手当)に関する前提

雇用保険の基本手当は、「離職前の賃金水準」と「被保険者期間」「離職理由」「年齢」によって、日額・給付日数が決まります。 一般論として、次の点を押さえておくとファクトのブレを防げます。

  • 基本手当日額は、離職前6か月の賃金を180で割った「賃金日額」に給付率(概ね45〜80%)を乗じて算定されること
  • 基本手当日額には年齢区分ごとの上限額・下限額があり、毎年8月1日に改定されること
  • 所定給付日数は、自己都合退職か、倒産・解雇などの特定受給資格者か、一部の特定理由離職者かなどで大きく異なること
  • 一定の要件を満たして早期に再就職した場合、残り日数に応じて「再就職手当」が支給されることがあること
  • 65歳未満で老齢厚生年金(特別支給を含む)を受給している場合、基本手当を受給すると年金側が全部または一部停止される仕組みになっていること(雇用保険の支給額が減るのではなく、年金側の調整である点)

※具体的な金額や給付日数については、制度改正により変更されることがあります。必ず最新の厚生労働省・ハローワークの公表資料をご確認ください。

複数パターンで生活期間を比較する

退職のタイミングやその後の就職活動の進め方によって、生活できる期間は大きく変わります。 例えば、次のようなパターンをそれぞれ試算しておくと、数字に基づいた判断がしやすくなります。

・今すぐ自己都合退職した場合(待期+給付制限期間を含めて試算)
・数か月後に退職し、それまでに貯蓄を増やした場合
・在職中から転職活動を行い、退職後比較的早期に再就職した場合(再就職手当を見込んだケース)
・会社都合退職となり、所定給付日数が長くなるケース

これらを比較することで、「何ヶ月無収入期間を許容できるか」「どのタイミングで退職すると最もリスクが小さいか」といった観点から、従業員ご自身の希望と生活実態に合った選択を検討しやすくなります。

まとめイメージ

⑤ 会社の労務担当者として留意しておきたいこと

本記事で解説した内容は、主に個人の生活設計という観点から整理したものですが、企業の労務・人事担当者として従業員から相談を受ける場面でも、次の点を意識しておくと対応がスムーズです。

  • 退職金制度の有無・内容は、就業規則・退職金規程に即して説明する
  • 退職金額の算定は、規程に定めた計算式に基づき機械的・客観的に行う
  • 退職金支給予定日・支払方法(振込日・口座情報)を明確に説明しておく
  • 雇用保険・健康保険・厚生年金の資格喪失日、離職票の交付時期等を案内する
  • 失業手当の具体的な金額や給付日数は、最終的にはハローワークの判断に委ねられる旨を伝える(会社側が金額を断定しない)
  • 税金(源泉所得税・住民税)や社会保険料については、必要に応じて税務署・市区町村・年金事務所等の最新情報を確認しながら案内する

まとめ

貯金がほとんどない状態で退職を検討する際には、「何となく不安」で判断するのではなく、退職給付金と失業手当の総額、および毎月の生活費を数値化し、数字で判断することが非常に重要です。

退職給付金については、そもそも会社に退職金制度があるかどうか、その内容がどうなっているかを就業規則・退職金規程で確認することが出発点となります。 一方、失業手当(基本手当)は、雇用保険法に基づき、離職前の賃金水準・年齢・被保険者期間・離職理由などから、基本手当日額と所定給付日数が決まります。

これらの前提を踏まえたうえで、

・退職給付金の税引後手取り額
・失業手当の概算総額(基本手当日額 × 所定給付日数)
・退職後の月間生活費(最低ライン)

を設定し、

「生活可能月数 =(退職給付金 + 失業手当の概算総額)÷ 月間生活費」

というシンプルな式に当てはめることで、退職後どの程度の期間生活できるかを、客観的な数字として把握することができます。

※本記事は、執筆時点の法令・公表資料に基づき一般的な制度概要を解説したものであり、特定の個人の状況に対する給付額・給付日数を保証するものではありません。最終的な給付額・給付日数・受給要件は、必ず最新の制度と、ハローワークでの算定結果をご確認ください。

参考・公式リンク

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士) — 本稿は、再就職手当を含めた概算の出し方とシミュレーターの活用手順を、2025年度時点の雇用保険制度を前提として整理したものです。最終的な給付可否・金額・給付日数・給付制限の有無などは、所轄ハローワークの判断および最新の法令・通達等に基づき決定されます。制度改正や運用変更が行われることがあるため、実務での取扱いにあたっては最新情報をご確認ください。

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