会社都合 vs 自己都合:金額と受給開始の違いをシミュレーターで確認する方法

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会社都合 vs 自己都合:金額と受給開始の違いをシミュレーターで確認する方法
会社都合 vs 自己都合:金額と受給開始の違いをシミュレーターで確認する方法

会社都合 vs 自己都合:金額と受給開始の違いをシミュレーターで確認する方法

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

退職の理由(会社都合か自己都合か)によって、雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)の受給開始時期所定給付日数、さらに就職促進給付である再就職手当の取り扱いが変わります。本稿では、制度の骨格を踏まえつつ、シミュレーターで「会社都合」「自己都合」の両パターンを比較する際の実務ポイントを整理します。

短く一言で(結論)

一般的に、会社の倒産・解雇等に伴う離職(いわゆる会社都合に該当しうるケース)の方が、 受給開始が早く、所定給付日数も手厚くなる可能性が高いと整理できます。 一方、従業員側の事情による退職(いわゆる自己都合に該当しうるケース)の場合は、 7日の待期に加えて給付制限(原則1か月または3か月)が付く可能性があり、 最初の数か月の「現金収入の空白期間」をどうカバーするかを事前に把握しておくことが重要です。

※本稿で用いる「会社都合」「自己都合」は実務上の通称です。雇用保険上は、 「特定受給資格者」「特定理由離職者」「一般受給資格者」等の区分に基づき、 所定給付日数や給付制限の有無・長さが決まります。最終的な判断はハローワークによる離職理由の認定に従います。

雇用保険の基本的な仕組み(前提の整理)

受給開始時期や日数の比較をする前に、前提となる雇用保険の仕組みを簡潔に押さえておきます。

項目概要
受給資格 原則として、離職前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あることが必要です。 ただし、倒産・解雇等や一定のやむを得ない理由による離職の場合は、離職前1年間に6か月以上で足ります。 いずれも「失業の状態」(就職の意思と能力があり、積極的に求職しているが現に職についていない状態)であることが前提です。
待期 受給手続をした日から原則7日間は、一律に「待期期間」として基本手当は支給されません。 この待期は、会社都合・自己都合を問わず生じます。
給付制限 正当な理由のない自己都合退職や、自らの重大な責めに帰すべき理由による解雇等に該当する場合には、 待期満了後さらに基本手当が支給されない期間(給付制限)が付くことがあります。 2025年4月1日以降の離職で、5年以内に3回以上の自己都合退職がない場合は原則1か月、 5年以内に3回以上の自己都合退職歴等がある場合は3か月の給付制限となります。
所定給付日数 離職時の年齢、被保険者期間、離職理由区分(特定受給資格者・特定理由離職者・一般受給資格者など)に応じて 90日〜330日(就職困難者は最大360日)の範囲で決まります。 倒産・解雇等に該当する特定受給資格者等は、同じ年齢・被保険者期間で比較すると、一般受給資格者より日数が多くなることがあります。
再就職手当 基本手当の受給資格決定後、一定の要件を満たして早期に安定した職業に就いた場合に、 残りの給付日数に応じた一時金(再就職手当)が支給される制度です。 支給残日数が所定給付日数の2/3以上の場合は残日数×70%、 1/3以上の場合は残日数×60%を基本手当日額と乗じて算出します(基本手当日額には年齢に応じた上限があります)。

主な違い(会社都合と自己都合の比較)

ここでは、実務上「会社都合」と呼ばれることが多いケース(倒産・解雇等により特定受給資格者等となる可能性が高い離職)と、 一般的な自己都合退職(一般受給資格者となる可能性が高い離職)とを対比します。 実際には、就業規則上の扱いや離職票の記載、ハローワークでの事実認定により区分が決まる点にご留意ください。

項目会社都合に該当しうるケース自己都合に該当しうるケース
受給開始 7日間の待期はありますが、多くの場合、給付制限は付かず、 待期後の最初の認定期間から基本手当の支給対象となります。 7日間の待期に加え、原則1か月(一定の場合は3か月)の給付制限が付く可能性があります。 過去5年以内の離職歴や離職理由(正当な理由の有無)により、給付制限の有無・長さが変わります。
所定給付日数 倒産・解雇等に該当し特定受給資格者となる場合は、 同じ年齢・被保険者期間でも一般受給資格者より長い所定給付日数が設定されることがあります。 有期契約の雇止め等、一部の特定理由離職者についても同様の扱いとなる期間があります。 一般受給資格者としての所定給付日数(90〜150日)が適用されるのが一般的です。 年齢が高く、被保険者期間が長くても、倒産・解雇等に比べると日数は抑えめです。
再就職手当 要件(待期後の就職、所定給付日数の1/3以上の支給残日数、1年以上雇用見込みなど)を満たせば支給対象となります。 給付制限がないため、比較的早い段階での就職でも残日数が多く、支給額が大きくなりやすい傾向があります。 再就職手当の要件自体は同じですが、給付制限期間中に就職する場合は注意が必要です。 給付制限がある方が待期満了後1か月以内に就職する場合、 原則としてハローワークまたは許可・届出のある職業紹介事業者の紹介による就職でなければ再就職手当の対象になりません。 それ以外の時期の就職であれば、自己応募等でも要件を満たせば支給対象となり得ます。
健康保険・国保料等への影響 離職理由が特定受給資格者または特定理由離職者に該当する場合、 国民健康保険料(税)が軽減される制度を設けている自治体があります。 転居予定がある場合は、市区町村ごとに取扱いが異なるため、別途確認が必要です。 一般受給資格者に該当する自己都合離職のみの場合は、 上記の国民健康保険料の軽減制度の対象外となることが多い点に留意が必要です。

具体的にシミュレーターで比較する手順(3ステップ)

御社で従業員向けに説明する際や、退職予定者から「会社都合か自己都合かでどれくらい違うのか」を尋ねられた際は、 シミュレーターでおおよその数字を提示しておくと理解が進みやすくなります。 以下の手順は、人事担当者側で事前に確認しておく際の一例です。

  1. 離職理由区分を切り替えて試算する
    シミュレーター上で、まずは一般受給資格者(自己都合相当)を選択して日額・所定給付日数・受給開始の目安を確認し、 次に倒産・解雇等(会社都合相当)を選んで同じ項目を試算します。
    このとき、離職票に記載される予定の離職理由コード・事実関係と、シミュレーター上の選択内容が整合しているかを社内で確認しておくと、従業員への説明がスムーズです。
  2. 受給開始のタイミングと「空白期間」を確認する
    シミュレーター上で、待期・給付制限の有無と、最初の支給が見込まれる時期を確認します。 自己都合の場合は、「退職日から実際に振込があるまで何か月程度空くか」を具体的なカレンダー日付に落としておくと、 貯蓄や退職金でカバーすべき期間を本人がイメージしやすくなります。
  3. 再就職手当の可否と概算額を把握する
    早期に再就職した場合の再就職手当について、
    ・所定給付日数と支給残日数
    ・支給率(2/3以上なら70%、1/3以上なら60%)
    ・基本手当日額とその上限額
    を入力し、概算の一時金を確認します。
    自己都合で給付制限が付く場合には、「待期満了後1か月以内に就職するなら、ハローワーク等の紹介経由でないと再就職手当の対象にならない」点を、社内説明用メモに明記しておくと安心です。

実務でよくあるケースと留意点

実際のご相談で多いパターンを、会社都合相当・自己都合相当の双方から挙げます。 ここではあくまで典型例として記載しており、最終的な離職理由区分は個別の事実関係に応じて判断されます。

ケース想定される雇用保険上の区分想定される影響
業績悪化に伴う整理解雇で退職したAさん 倒産・解雇等に該当し、
特定受給資格者となる可能性があるケース。
・7日の待期後、給付制限なしで比較的早期に支給開始。
・年齢・被保険者期間に応じて、一般受給資格者より長い所定給付日数となることがある。
・支給残日数が多いため、早期再就職の場合は再就職手当の支給額も大きくなりやすい。
自己都合退職により退職したBさん 一般受給資格者となる可能性があるケース。
正当な理由が認められない限り、給付制限の対象となり得る。
・7日の待期に加え、原則1か月(一定の場合3か月)の給付制限が付くため、受給開始が遅れる。
・所定給付日数は90〜150日が中心となり、会社都合相当のケースより短くなる場合がある。
・給付制限期間中に就職する場合は、再就職手当の就職経路要件(ハローワーク等の紹介)が特に重要となる。
契約期間満了で更新されなかったCさん 契約内容や更新状況により、
特定受給資格者または特定理由離職者となる可能性があるケース。
・一定の条件を満たす雇止めの場合は、会社都合相当の扱いとなりうる。
・条件を満たさない更新終了の場合でも、特定理由離職者として給付制限が付かない取扱いとなることがあり得る。
・離職票の記載内容と実際の契約経緯の整合が特に重要となる。

まずは両パターンで比較してみましょう

同じ賃金水準・同じ被保険者期間・同じ年齢で、 「倒産・解雇等(会社都合相当)」と「一般受給資格者(自己都合相当)」を切り替えて試算してみてください。 受給開始のタイミング、所定給付日数、再就職手当の概算額を数値で把握しておくと、 従業員への説明や社内稟議(退職勧奨スキームの設計など)が行いやすくなります。

シミュレーション時の注意ポイント(精度を上げるコツ)

シミュレーターはあくまで概算を出すためのツールです。 実務上の誤解を避けるため、以下の点を押さえたうえで試算・説明を行うことをお勧めします。

  • 離職票に記載予定の「離職理由」「事業主の証明」と、シミュレーター上の離職理由区分が一致しているか確認する
  • 直近6か月の賃金合計は、賞与を除いた総支給額ベースで入力する(残業代や各種手当は含むが、賞与は含めないのが原則)
  • 過去5年の離職歴(自己都合退職の回数など)が給付制限の長さに影響しうるため、従業員の申告内容を確認しておく
  • 認定日(4週ごとの失業認定日)に来所できない場合の取扱いや、郵送手続きが利用できる条件などは、所轄ハローワークの実務に従うことを前提に説明する
  • 受給期間は原則として離職日の翌日から1年間であり、必要に応じて受給期間延長の制度があるが、これは「日数の延長」ではなく「受給できる期間(枠)の延長」である点を誤解のないように説明する

再就職手当の取り扱い(会社都合・自己都合共通のポイント)

再就職手当は、会社都合・自己都合を問わず、所定の要件を満たせば支給される可能性があります。 一方で、自己都合退職で給付制限が付く場合には、就職経路や就職時期によって支給対象外となることもあるため、 社内での案内文や退職時面談のトークスクリプトに盛り込んでおくと安心です。

項目内容
主な支給要件 ・受給手続き後、7日間の待期満了後に就職または事業開始していること。
・就職日の前日までの失業認定を受けたうえで、基本手当の支給残日数が所定給付日数の1/3以上あること。
・離職前の事業主と資本・人事等で密接な関係にある事業主への再就職でないこと。
・原則として、1年を超えて雇用される見込みがあり、雇用保険の被保険者となる就職であること。
・過去3年以内に再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていないこと。
・受給資格決定前から採用が内定していた事業主への就職でないこと。
自己都合退職で給付制限がある場合の留意点 給付制限が付く離職理由の場合、待期満了後1か月以内に就職する際は、
・ハローワーク、または
・許可・届出のある職業紹介事業者
の紹介による就職でなければ、再就職手当の対象とならない取扱いとなっています。
1か月経過後の就職であれば、自己応募等による就職でも、他の要件を満たせば支給対象となる可能性があります。
支給額のイメージ ・支給残日数が所定給付日数の2/3以上:支給残日数 × 70% × 基本手当日額(上限あり)
・支給残日数が所定給付日数の1/3以上:支給残日数 × 60% × 基本手当日額(上限あり)
基本手当日額には年齢ごとの上限額があり、毎年8月1日に見直しが行われています。

社内で押さえておきたい実務チェックリスト

退職が見込まれる従業員への説明にあたって、人事・労務担当者として最低限整理しておきたい論点をチェックリスト形式でまとめます。 退職勧奨や整理解雇など、会社都合に近いスキームを検討する場合は、顧問社労士等と連携し、事前に文書・証拠の整備も併せて行うことが望まれます。

  1. 離職理由の整理
    ・就業規則上の根拠条文(普通解雇・整理解雇・懲戒解雇・自己都合退職・定年等)を確認する。
    ・退職届の出し方(会社からの働きかけの有無、退職勧奨かどうか)と、交渉経緯のメモ・メールを保存しておく。
    ・離職票の「離職理由」の記載内容案(事業主の証明欄)を内部でレビューし、事実関係と相違がないかチェックする。
  2. 受給資格と給付制限の可能性
    ・離職前2年(または1年)の被保険者期間が、受給資格要件(12か月または6か月)を満たしているか確認する。
    ・従業員の申告ベースで、過去の自己都合退職歴や受給歴(直近5年程度)を把握し、給付制限が1か月か3か月かの可能性を整理しておく。
    ・病気や出産、育児等により、受給期間の延長申請が必要となりそうな事案かどうかも、退職面談時に確認しておく。
  3. 金額・期間に関する概算案内
    ・シミュレーターで会社都合相当・自己都合相当の両パターンを試算し、
    「受給開始予定月」「おおよその月額」「総支給見込額」の違いを整理しておく。
    ・「受給期間=1年」「所定給付日数=○日」であることを明示し、 1年を超えると日数が残っていても受給できなくなる点を説明できるようにしておく。
  4. 再就職手当・就業促進定着手当等の確認
    ・早期再就職を見込める職種・年齢層の場合、再就職手当が現実的な選択肢となるかを概算しておく。
    ・再就職手当を受給した後、再就職先での賃金が離職前より下がる見込みが高い場合、 就業促進定着手当の制度概要も簡単に説明できるよう準備しておく。
  5. 国民健康保険・年金等の周辺制度
    ・特定受給資格者・特定理由離職者に該当しうるケースでは、 国民健康保険料(税)の軽減制度の有無を自治体HP等で確認し、案内できるようにしておく。
    ・雇用保険の基本手当と老齢厚生年金・退職共済年金が併給調整の対象となる年齢層(おおむね60歳以上)の従業員については、 年金の支給停止と事後精算の仕組みを誤解しないよう、年金事務所での確認を促すコメントを添える。

社内説明用や従業員向け資料も作成できます

シミュレーターで算出した結果(会社都合相当・自己都合相当の比較)をもとに、 従業員説明会用のレジュメや個別説明シート(PDF)を作成することも可能です(有償)。 「退職金」「失業給付」「再就職手当」の3点を一体として示すことで、 従業員側も安心して今後の資金計画を立てやすくなります。

参考・公式リンク(必ず最終確認を)

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士) — 本稿は、会社都合と自己都合(雇用保険上の特定受給資格者・特定理由離職者・一般受給資格者等)の違いを実務的に整理した解説です。 ここで記載した内容は、標準的な制度概要および執筆時点の法令・通達等に基づく一般的な説明であり、 個別事案における最終的な離職理由の認定、受給資格の有無、給付日数・金額等は、所轄のハローワークおよび関係機関の判断が優先されます。

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