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従業員から「育休中いくらもらえる?」と聞かれたら|人事担当者必見の産休・育休シミュレーター活用術
植本労務管理事務所 監修・2025年更新
従業員からの一番多い質問 — 「育休中っていくらもらえるんですか?」に、あなたは即答できますか? 本記事では、人事が面談で〈その場で〉概算を示せるよう、産休・育休総合シミュレーターの活用術を実務目線でまとめました。短時間で説得力のある説明をするためのテンプレとフローつきです。
面談で即提示:育休の手取りを試算
直近6か月の給与水準をもとにした標準報酬月額、休業開始予定日、会社の上乗せ制度の有無などを入力すると、月別の概算手取りと累計額が表示されます。出力結果はPDFとして保存し、説明資料として活用できます。
※シミュレーターは「概算」の試算ツールです。実際の支給額は、雇用保険・健康保険の手続きおよび審査により決定されます。
人事向け:まずはこれだけ答えればOK(超短縮回答)
- 「公的給付(育児休業給付金)は、雇用保険の要件を満たす場合に、育児休業開始から通算180日目までは休業開始前賃金の約67%、それ以降は50%が上限です(賃金水準に応じた上限・下限あり)。」
- 「実際の手取りは、直近6か月の賃金水準・社会保険料や税金の控除・会社の上乗せの有無などで変わります。今の給与明細をベースにシミュレーターで“概算”を出してみますね。」
- 「今日お渡しするのは概算です。正式な給付額は、ハローワーク・健康保険組合などへの手続き後に決まります。」
面談での実務フロー
ステップA:確認する情報
- 直近6か月の給与水準(最新の給与明細の総支給額を確認し、標準報酬月額の等級の目安として使用)
- 休業開始予定日(産前休業・産後休業・育児休業の切り替え時期)
- 会社の制度(育児休業中の賃金上乗せや独自手当の有無)
ステップB:シミュレーター入力
標準報酬月額の目安と休業開始予定日などを入力することで、月別の概算額が表示されます。
出力結果はPDF化し、「概算シミュレーション」である旨を明記したうえで、面談記録として保存してください。
ステップC:提示と確認
- 「月ごとの概算額」と「累計見込み額」を提示し、「上限・下限があること」と「賃金支給がある場合は減額・不支給の可能性があること」を簡潔に説明する。
- 「確定額は手続き後に、ハローワーク(育児休業給付金)や健康保険(出産手当金)で決定される」と注意喚起する。
- 意向確認(取得するかどうか/おおよその期間/出生時育児休業の利用有無など)を行い、記録する。
面談で使える短縮テンプレ(コピペ可)
初回口頭テンプレ
「育休中の公的給付は、雇用保険の要件を満たす場合、休業開始前の賃金の約67%が最初の180日まで、それ以降は50%が目安になります(賃金水準によって上限があります)。
あくまで“概算”ですが、会社の上乗せがあればそれも加味して試算できます。
今の給与明細をもとにシミュレーターでざっくりした金額を出してみてもよろしいでしょうか。」
面談用A4テンプレ(記録)
- 氏名・部署
- 直近の標準報酬月額の目安:______円
- 想定休業期間:______〜______(産前・産後・育児休業の区分をメモ)
- シミュレーター概算(添付PDF/「概算」である旨を記載)
- 従業員の意向(育児休業取得:有/無、取得予定期間の目安)
- 備考(会社独自の上乗せ、賞与・インセンティブ等の取扱いの説明内容)
簡単モデルケース(目安)
※以下は、雇用保険の育児休業給付金のみを、賃金支給がない前提で簡略化した「目安」です。実際には、支給上限額・下限額、就業日数・賃金支給の有無、出生時育児休業給付金・出生後休業支援給付金の有無、社会保険料免除などにより変動します。[id:36168][id:41306]
| モデル | 標準報酬月額の目安 | 期間 | 概算(例) |
|---|---|---|---|
| 短期取得(男性) | 350,000円 | 6か月(最初の180日以内) |
育児休業給付金:約234,500円/月(賃金の約67%)が目安 ※出生時育児休業給付金や出生後休業支援給付金を取得する場合は、別途13%の上乗せとなる可能性があります。 |
| 長期取得(女性) | 300,000円 | 12か月(67%→50%) |
初期(通算180日まで):約201,000円/月(賃金の約67%) 後期(181日目以降):約150,000円/月(賃金の約50%) ※産前産後休業期間中は、要件を満たす場合、健康保険から出産手当金(標準報酬月額の2/3)が支給されます。 |
プラチナくるみん・制度の詳細
認定基準や最新の制度情報は厚生労働省の公式ページで確認してください。
シミュレーター活用を認定(プラチナくるみん)につなげるポイント
- 面談で出した「個別のシミュレーター出力(概算)」をPDFで保存し、社内の両立支援体制の一環として記録しておく。
- 管理職向けの育児休業制度説明やロールプレイ研修の実施状況・参加記録を残す。
- 性別・雇用形態別の育児休業取得率や平均取得日数を四半期ごとに集計し、行動計画(一般事業主行動計画等)と紐づける。
よくある質問(HR向け)
Q1. シミュレーターの数字はそのまま給付額になりますか? ▾
実際の給付は、
・雇用保険上の要件を満たしているか(被保険者期間、就業日数・時間数、賃金支給状況など)
・育児休業給付金・出生時育児休業給付金・出生後休業支援給付金それぞれの要件 [id:23934][id:36175][id:36168]
・健康保険の出産手当金の支給要件(産前産後休業期間中の就労・賃金支給の有無など)[id:12472][id:6228]
を満たすかどうか、及びハローワーク・健康保険の審査によって決定されます。
従業員には必ず「今日は概算であり、正式な支給額は手続き後に決まる」旨を説明してください。
Q2. 給付金に含まれるのは何ですか? ▾
1. 育児休業給付金(雇用保険)…育児休業開始から180日目までは休業開始時賃金日額×支給日数×67%、181日目以降は50%が基準です(上限・下限あり)。[id:41306][id:36168]
2. 出生時育児休業給付金・出生後休業支援給付金(雇用保険)…産後パパ育休等を取得した場合や、両親が一定日数以上育休を取得した場合に、育児休業給付金等に13%が上乗せされるケースがあります。[id:23934][id:36168]
3. 出産手当金(健康保険・出産前後の一定期間、原則女性のみ)…標準報酬月額の2/3相当額が、産前42日(多胎は98日)~産後56日の範囲で、実際に休んだ日数分支給されます。[id:12472][id:6218]
さらに、会社独自の上乗せ(育休中の賃金支給・手当など)があれば、それらも合算して「育休中の手取りの目安」として説明します。
Q3. 個人情報の扱いはどうすれば良いですか? ▾
自社の個人情報保護規程等に従い、
・アクセス権限の限定(人事部門など必要な範囲に限定)
・保存方法の管理(ネットワークフォルダへの保存、紙での保管場所の制限等)
・PDF出力時のパスワード設定などの技術的対策
を講じて運用してください。
※本記事は2025年時点で公表されている一般的な制度内容をもとに、人事実務向けに概要を整理したものです。
給付要件や支給額の上限・下限、申請手続きは法改正や通達により変更される可能性がありますので、最終的な内容は必ず最新のハローワークのリーフレットや厚生労働省・各健康保険の公式情報でご確認ください。
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