退職給付金と失業手当の違い【結論】怪しいのか?申請先まで一発でわかる

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退職給付金と失業手当の違い【結論】怪しいのか?申請先まで一発でわかる
退職給付金と失業手当の違い【結論】怪しいのか?申請先まで一発でわかる

退職給付金と失業手当の違い【結論】怪しいのか?申請先まで一発でわかる

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

結論として、退職給付金(退職金)と雇用保険の失業手当(基本手当)は法的にも財源的にも別の制度です。
退職金があるからといって自動的に失業手当が減額・不支給になることはありません。失業手当の算定に用いる「賃金日額」は、 原則として離職前6か月間の給与総額(賞与・退職金等を除く)÷180日で計算され、退職金は含まれません。
本稿では、両制度の違い・よくある誤解の理由・計算の基本・申請先・会社が従業員に説明すべきポイントまで、実務で使えるレベルで整理します。

まずは手取りと給付の概算をチェック

退職給付金は会社ごとの退職金規程等に基づく任意制度であり、税法上は「退職所得」として有利な取扱いを受けます。 一方、失業手当(基本手当)は雇用保険法に基づく公的給付であり、原則として所得税は課税されません。
退職後の生活設計では、退職金の税引後手取り額と失業手当の見込額を合わせてキャッシュフローを確認しておくことが重要です。

一目でわかる結論(要点)

  • 性質が違う:
    ・退職給付金=会社が就業規則や退職金規程等に基づき支払う退職一時金または企業年金(法律上の支給義務はなく、制度を設けた会社にのみ支給義務が生じます)。
    ・失業手当(基本手当)=雇用保険法に基づき、雇用保険から支払われる公的給付。
  • 算定の違い:
    ・賃金日額は「離職前6か月の給与総支給額(賞与・退職金等を除く)÷180」が基本。
    ・退職金や賞与、一時金は原則として算定対象外です。
  • 税務も別:
    ・退職金は「退職所得」として退職所得控除・1/2課税等の優遇あり。
    ・失業手当(基本手当)は所得税法上、非課税所得として扱われます。
  • 申請先:
    ・退職金は会社(または退職金共済等)から支給。
    ・失業手当は住所地を管轄するハローワークで申請・手続き。

退職給付金(退職金)の基本と法的な位置づけ

まず、退職金制度そのものの前提を整理しておく必要があります。退職金は、 法律で一律に支給が義務付けられているものではありません。会社が任意で退職金制度を設けている場合に限り、 就業規則や退職金規程等に基づいて支給義務が発生します。

  • 退職金制度があるかどうか、まず就業規則・退職金規程・労働条件通知書等で確認する。
  • 制度がある場合は、支給要件・計算方法・支払時期などは各社の規程に従って決まる。
  • 制度があるにもかかわらず、規程通りに支給しないことは、賃金支払の原則(労働基準法第24条等)との関係で問題になる。
  • 退職金の請求権の時効は5年とされています(労働基準法第115条)。

したがって、従業員から退職金と失業手当の関係を質問された場合には、自社の退職金制度の有無と内容を前提に説明することが不可欠です。

失業手当(基本手当)の基本的なしくみ

失業手当(基本手当)は、雇用保険の被保険者が離職し、一定の要件を満たしたときに支給される給付です。 退職すれば必ず受給できるわけではなく、雇用保険の被保険者期間と「失業」の状態であることが要件になります。

  • 受給の主な要件(概要)
    ・離職しており、就職が決まっていないこと。
    ・積極的に就職しようとする意思と、いつでも就職できる能力(健康状態・環境)があり、求職活動を行っていること。
    ・原則として、離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あること(倒産・解雇等の場合は1年間に6か月以上などの特例あり)。
  • 受給手続きの流れ(典型例)
    1. 退職・離職票の交付(会社から本人へ)
    2. 本人が住所地を管轄するハローワークで求職申込み・受給資格の決定
    3. 雇用保険説明会・雇用保険受給資格者証の交付
    4. 7日間の待期期間(この間は支給なし)
    5. 自己都合退職等の場合は、待期後に給付制限期間(原則1か月、一定の場合3か月)
    6. 4週間ごとの失業認定日ごとに基本手当が支給

ここでのポイントは、退職金の有無・金額そのものは、基本的に受給資格や賃金日額の計算に直接影響しないという点です。

Q&A(よくある疑問)

Q1. 退職金が多いと失業手当は支給されない?

A. いいえ。
退職金と失業手当は別制度であり、退職金の金額が大きいことを理由として、失業手当が自動的に不支給・減額されることはありません。 失業手当の支給可否や給付日数・給付率は、あくまで「離職理由」「雇用保険の被保険者期間」「離職前の賃金」「年齢」等で決まります。
もっとも、自己都合退職か会社都合退職かにより、待期後の給付制限期間(原則1〜3か月)や所定給付日数が異なりますので、 従業員には「退職金の有無」とは別問題であることを丁寧に説明すると誤解が少なくなります。

Q2. 退職金をもらうとハローワークで何か言われますか?

A. 原則として、退職金そのものが受給資格や支給額の判断材料になることはありません。
ハローワークで確認されるのは、離職票に記載された離職理由や賃金額、雇用保険の被保険者期間、就職の意思・求職活動の状況などです。 退職金の金額について詳細な説明を求められる場面は通常想定されていません。
ただし、退職後に年金等を受給している場合は、年金との併給調整など別の論点が出てくるため、 年齢層によっては年金受給状況も含めて案内する必要があります。

Q3. 退職金の「手取り」を含めて生活設計をしたいときは?

A. 退職金は税法上の「退職所得」として扱われ、退職所得控除や1/2課税などの仕組みにより、通常の給与よりも税負担が軽くなります。 したがって、会社として見込額を伝える際には、可能な範囲で
・規程上の支給額(額面)
・退職所得控除額の考え方(勤続年数に応じて控除)
・税引後の概算手取り
を整理したうえで、失業手当の概算と合わせた資金計画を本人に検討してもらうのが実務的です。
個別の税額計算については、社内で確定的な数字を断定せず、必要に応じて税務署や税に詳しい専門家等への確認を案内する形が無難です。

誤解が生まれる理由(端的に)

  • 用語の混同:
    「給付」「手当」という言葉が退職金・退職一時金・企業年金・失業手当などで混在し、 すべて同じ公的な給付だと誤解されやすい。
  • 現金が手元に残る=支援不要という短絡的な考え:
    「退職金があるなら生活できるはずだから、国からの給付はないのでは」というイメージ先行の誤解が生じやすい。 実際には雇用保険法上、そのような資力テストは行われていません。
  • 受給開始時期の誤解:
    自己都合退職等の給付制限(原則1〜3か月)により、手続き直後に失業手当が振り込まれないため、 「退職金があるから出ない」と誤認されることがある。

※自己都合退職等に伴う給付制限期間は、法改正により見直しが行われています。 また、過去の離職履歴等によっても変動する場合があります。具体的な期間は、必ず所轄のハローワークで最新情報を確認してください。
参考:厚生労働省「離職されたみなさまへ(失業給付のご案内)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187044.html

会社が説明すべき実務チェックリスト

  • 自社の退職金制度の有無・対象者・支給要件・計算方法・支払時期を明示する(就業規則・退職金規程に基づき説明)。
  • 退職金が制度上「権利」として発生するものであり、恣意的な裁量で全額不支給とするものではないこと(規程内容に依存)を適切に伝える。
  • 賃金日額の計算方法と除外項目(賞与・退職金等)は、ハローワークの説明資料に沿って案内する。
  • 受給開始のタイミング(待期7日・給付制限の有無と期間)を具体的なスケジュール感で案内する。
  • 退職金は可能な範囲で税後手取りのイメージを伝え、詳細な税額は税務署等の公式情報に基づくことを説明する。
  • 失業手当の最終的な支給可否・日数・金額の決定権限はハローワークにあることを明示する。

賃金日額・基本手当の簡易計算(復習)

雇用保険の基本手当は、まず賃金日額を算出し、それに給付率(45〜80%)を乗じて基本手当日額を求める仕組みです。

・賃金日額(概算)=離職前6か月の給与総支給額(賞与・退職金等を除く)÷180
・基本手当日額(概算)=賃金日額 × 給付率(年齢・賃金水準に応じて約45〜80%、上限・下限あり)

直近6か月合計 賃金日額(÷180) 給付率(目安) 基本手当日額(概算)
¥600,000(平均月10万円) 約¥3,333 60%(仮定) 約¥2,000
¥2,400,000(平均月40万円) 約¥13,333 60%(仮定) 約¥8,000

※実際の給付率や上限額・下限額は、離職時点の年齢や賃金水準、法改正等により変動します。 詳細は厚生労働省の資料および所轄ハローワークで確認してください。
参考:厚生労働省「雇用保険制度について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/index.html

退職給付金と失業手当を合算して説明する際の注意点

  1. 税後で合算する:
    退職金は退職所得控除や分離課税の関係で税負担が大きく変わるため、 「額面」ではなく税引後の手取りを前提に説明することが望ましいです。 失業手当は原則非課税ですが、他の所得との関係で個別論点が生じることもあるため、最終的な税務判断は公的な情報を確認していただくよう案内すると適切です。
  2. 受給開始のタイミング:
    自己都合退職等で給付制限がある場合、退職から実際の受給開始まで数か月空くことがあります。 退職金の支給日・金額、失業手当の見込受給開始月・見込期間をタイムラインで整理し、当面の資金繰りを本人が把握できるように説明することが実務上重要です。
  3. 制度の区別と透明性:
    退職金は自社規程に基づく任意制度、失業手当は雇用保険法に基づく公的制度であることを明確に区別し、 賃金日額の対象・除外項目(賞与・退職金等)を具体的に示すことで、「会社が退職金を出したから失業手当がもらえないのではないか」といった誤解を避けることができます。

退職金制度をめぐるその他の法的留意点(概要)

退職金は会社が任意に設ける制度ですが、一度制度を設けると、退職金規程は労働条件の一部として従業員の期待権を形成します。 そのため、制度変更や支給の可否をめぐって紛争になりやすい領域です。退職金と失業手当の説明に併せて、次のような点も社内で整理しておくと安全です。

  • 退職金規程を不利益に変更する場合は、労働契約法第10条に基づき「合理性」が求められる。
  • 「会社が必要と認めた場合のみ支給する」といった、支給の有無を一方的裁量に委ねる規定は、無効と判断されるリスクがある。
  • 懲戒解雇時の退職金不支給・減額は、背信性の高い行為がある場合に限定されるとする裁判例が多く、一律の不支給はリスクが高い。
  • 退職金の支払時期は、規程で定めておけば、通常の賃金のように「退職から7日以内」の支払義務までは要求されないと解されている(規程がない場合は注意)。

上記はあくまで一般的な整理であり、個別事案では就業規則・退職金規程の文言や運用実態により判断が異なります。 制度の見直しを行う際は、従業員への周知・説明のプロセスも含めて慎重に検討してください。

最後に(社労士からのまとめ)

「退職給付金があるから失業手当は怪しい」「たくさん退職金をもらうと失業手当は出ないのでは」といった声は実務上よく耳にしますが、 制度面を整理すると、退職金と失業手当は別枠の制度であり、原則として片方の存在が他方を直接減額することはありません。
会社としては、退職時面談や説明資料の中で、
・自社退職金制度の内容(支給要件・支給時期・見込額)
・退職金の税務上の扱い(退職所得であること)
・雇用保険の基本的な仕組み(賃金日額の考え方・待期・給付制限・受給期間)
をセットで説明しておくことで、従業員の不安や誤解をかなり軽減できます。
また、失業手当や退職金の具体的な金額・給付日数・課税関係は、法改正や個別事情により変わりうるため、 最終的な確認はハローワークや税務署などの公的窓口の案内に従っていただく旨を併記しておくと、説明責任の観点からも適切です。

退職給付金と失業手当の試算・説明資料を作成します

当事務所では、退職金規程に基づく退職給付金の見込額と、雇用保険の失業手当(基本手当)の概算を組み合わせた説明用の情報整理を行い、 従業員へのご説明に活用いただける形でのサポートを行っています。退職時面談での説明内容の整理や社内資料の見直しをご検討の場合は、お気軽にお問い合わせください。

参考・公式窓口(確認先)

本記事の内容は、執筆時点の法令・公的資料に基づく一般的な実務ガイドです。実際の給付可否・給付日数・金額や税務処理は、 個々の従業員の状況やその時点の法令・通達等により異なります。最終的な取扱いについては、必ず所轄ハローワーク・税務署等の正式な案内を優先してください。

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