「思ったより少ない」を防ぐ|退職前に失業手当を計算する方法

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「思ったより少ない」を防ぐ|退職前に失業手当を計算する方法
「思ったより少ない」を防ぐ|退職前に失業手当を計算する方法

「思ったより少ない」を防ぐ|退職前に失業手当を計算する方法

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

退職後に「想定より給付が少なかった」と後悔しないためには、事前に押さえておくべきポイントがあります。本稿では、雇用保険の基本手当(いわゆる失業給付)の制度を前提としたうえで、 賃金日額・基本手当日額・受給総額の簡易な試算方法を整理します。あわせて、法令上のルール(受給要件・給付制限・所定給付日数・受給期間など)や、退職金・健康保険料・年金との関係といった 「見落としやすい点」についても解説し、退職前に会社として従業員へ案内する際のチェックポイントをまとめます。

まずは“目安”を出す:賃金日額→基本手当日額→受給総額

雇用保険の基本手当は、離職前の賃金を基礎に算定されます。
直近6か月の給与合計(賞与・退職金を除く)を用意するだけで、賃金日額→基本手当日額(概算)→受給総額(概算)まで、おおよその金額を把握することができます。当事務所のシミュレーターを併用いただくと、短時間で確認可能です。

なお、実際の受給資格の有無や金額は、住居地を管轄するハローワークが離職票等に基づき決定します。本稿の試算は、あくまで退職前の資金計画を行うための「目安」としてご利用ください。

結論(要点)

  • 賃金日額の算出がすべての基礎
    一般被保険者(65歳未満)の基本手当は、原則として「離職前6か月の賃金総額÷180」で求めた賃金日額を基礎に、年齢・賃金水準ごとの給付率(45〜80%)を乗じて算定されます(上限・下限あり)。
    賃金日額の算出に賞与や退職金は含めない点に注意が必要です。
  • 給付開始のタイミングに注意
    受給手続後、まず7日間の待期期間があり、この間は支給されません。さらに正当な理由のない自己都合退職などの場合は、待期満了後に原則1か月間の給付制限が設けられています(5年以内の複数回自己都合等は3か月となる場合があります)。給付開始までの無収入期間を見込んでおくことが重要です。
  • 総受給額は「日額×所定給付日数」
    総受給額は、基本手当日額に所定給付日数を乗じて概算できます。所定給付日数は、被保険者期間(加入年数)と離職時年齢、離職理由(会社都合か自己都合か等)により大きく変わります。

※本稿は概算例を示すものであり、最終的な受給資格の有無・給付日数・金額は、雇用保険法等に基づきハローワークが決定します。最新の制度内容は、厚生労働省およびハローワークの公式情報をご確認ください。
・雇用保険制度全般(厚生労働省):
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/index.html

まず確認すべき「受給できるかどうか」の基本要件

退職前に従業員の方から相談を受けた場合、金額の試算に入る前に、そもそも受給要件を満たしているかどうかを押さえておく必要があります。一般被保険者(65歳未満)の基本手当について、主な要件は次の2点です。

  • 失業の状態にあること
    ・積極的に就職しようとする意思があること
    ・いつでも就職できる健康状態・環境にあること
    ・積極的に求職活動をしているにもかかわらず、職に就いていないこと
    家事専念や学業専念、自営に専念している場合、就職の内定がある場合などは「失業」と認められません。
  • 雇用保険の被保険者期間が一定以上あること
    ・通常は「離職前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上の月が通算12か月以上」必要です。
    ・倒産・解雇等の会社都合や、雇止めその他やむを得ない理由による離職に該当する場合は、「離職前1年間に6か月以上」で足りる取扱いがあります。

※具体的な被保険者期間のカウントや「特定受給資格者」「特定理由離職者」に該当するかどうかの判断は、個別事情により異なります。実務上は、離職票の記載内容を前提にハローワークで確認されます。

短時間でできる計算(3ステップ:概算)

受給要件を満たしていることを前提に、退職前におおよその金額感を共有するための簡易ステップです。法令上の正確な算定式はもう少し複雑ですが、従業員との事前コミュニケーション用の「目安」としては、次の流れで差し支えありません。

  1. 直近6か月の給与合計(総支給)を用意
    ・残業代、諸手当(通勤手当・役職手当等)を含む「総支給額」を6か月分合計します。
    ・賞与(ボーナス)と退職金は賃金日額の計算に含めません。
    ・パートタイムの方などで賃金支払基礎日数が11日に満たない月がある場合は、ハローワークでの取り扱いが異なることがあります。
  2. 賃金日額(概算)を計算
    賃金日額(概算) = 直近6か月の給与合計 ÷ 180
    雇用保険の基本手当では、6か月分の賃金総額を180で割って平均賃金日額を算定する方式が用いられています(被保険者区分等により細かな取扱いがあります)。
  3. 基本手当日額(概算)→受給総額を計算
    実際の給付率(賃金日額に対する支給割合)は、年齢・賃金水準に応じて45〜80%の範囲で決められ、かつ年齢区分ごとに上限額・下限額が設けられています。
    簡易な目安として、次のように置くことができます。
    基本手当日額(概算) = 賃金日額 × 0.6
    受給総額(概算) = 基本手当日額 × 所定給付日数
    ※高賃金帯・低賃金帯では、上限額・下限額により0.6から大きくずれる場合があります。正確な金額は、ハローワークの算定により確定します。
直近6か月合計 賃金日額(÷180) 想定給付率(例) 基本手当日額(概算) 想定所定給付日数(例) 受給総額(概算)
¥720,000(平均月12万円) ¥4,000 60% ¥2,400 90日 ¥216,000
¥1,200,000(平均月20万円) ¥6,667 60%(※実際は上限・下限により調整) ¥4,000 120日 ¥480,000
¥2,160,000(平均月36万円) ¥12,000 60%(※高賃金帯では上限額に注意) ¥7,200 150日 ¥1,080,000

・上記は単純化した概算例です。実際の給付率は、離職時年齢・賃金水準ごとの算式(例:30歳以上45歳未満の場合は段階的に45〜80%)に基づき決まります。
・基本手当日額には年齢区分ごとの上限・下限額があり、一定水準を超える場合は上限額で頭打ちになります。
・最新の上限・下限額は、厚生労働省の資料で公表されています。
参考:基本手当日額の上限・下限額(厚生労働省資料)

「思ったより少ない」を招く主な見落としポイント

実務で従業員の方から相談を受ける際、「月いくらくらいもらえるはず」とのイメージと、実際の受給額・受給期間とのギャップが生じやすいポイントは、おおむね次のとおりです。

  1. 賃金日額の集計漏れ・誤認
    ・通勤手当や残業代などを除外して計算してしまうと、賃金日額が過小となり、想定より少ない試算結果になります。
    ・一方で、賞与や退職金を含めてしまう誤りも散見されます。賃金日額の対象となるのは「離職前6か月の賃金(賞与を除く)」である点を、従業員と共有しておくと誤解を防げます。
  2. 給付制限・待期の影響
    ・自己都合退職などで正当な理由がない場合、待期7日に加えて原則1か月間の給付制限が設けられます(5年間に複数回の自己都合離職等がある場合は3か月となることがあります)。
    ・この期間は基本手当が支給されないため、「3か月分もらえると思っていたが、実際には受給開始が遅れた」というケースが少なくありません。
    ・給付制限の有無・期間は離職理由により異なるため、離職票の記載内容を前提に、早めに説明しておくことが望ましいです。
  3. 所定給付日数の認識不足
    ・被保険者期間が短い場合、自己都合等の一般的な離職理由では所定給付日数が90日で頭打ちとなることがあります。
    ・会社都合等に該当する場合は、同じ加入年数でも手厚い日数が認められるケースがありますが、「どの区分に該当するか」の判断はハローワークで行われます。
    ・「前職も含めた通算加入年数」「1年以上空白があるかどうか」などにより扱いが変わるため、あくまで目安として説明し、最終的な判定は公式窓口で確認してもらうのが安全です。
  4. 退職金の税後手取りを過信
    ・退職金は「退職所得」として分離課税され、退職所得控除や2分の1課税などの有利な取扱いがありますが、勤続年数や金額によっては所得税・住民税が発生します。
    ・「額面どおり全額使える」と想定してしまうと、税引後の実際の手取り額とのギャップから、生活資金が不足することがあります。
  5. 他制度との重複給付調整
    ・健康保険の傷病手当金や、年金給付(老齢厚生年金など)と雇用保険基本手当の間には、併給調整のルールがあります。
    ・例えば、65歳未満で老齢厚生年金を受給している方が求職の申込みを行い基本手当の受給資格決定を受けると、一定期間、年金が全額または一部支給停止となる仕組みがあります。
    ・同じ期間に複数の給付が重なるときは、「どちらかが減額・停止される」場合があることを、概略だけでも伝えておくと安心です。

給付の流れと「いつから・いつまで」受給できるか

退職前の説明では、「いくらもらえるか」に加え、「いつから・いつまで受け取れるのか」の理解が重要です。一般的な流れは次のとおりです。

  1. 離職(退職日)
  2. ハローワークでの求職申込み・受給資格決定
  3. 雇用保険受給者説明会(初回説明会)
  4. 待期7日間(この間は支給なし)
  5. (自己都合等の場合は給付制限期間:原則1か月または3か月)
  6. 4週間ごとの失業認定・基本手当の支給
  7. 所定給付日数を受給し終えるか、再就職等により受給終了

受給できる期間(受給期間)は、原則として離職日の翌日から1年間です。この期間内に所定給付日数分を受給できなかった場合、残日数があっても支給されません(病気・出産・育児等のやむを得ない理由がある場合には、受給期間の延長が認められる制度があります)。

会社が従業員に案内するときの実務チェックリスト

退職手続き時に、会社側から従業員へ説明しておくと齟齬が生じにくいポイントを整理すると、次のようになります。

  • 退職日と受給手続きのタイミングを明確に伝える
    ・離職票の発送予定日(会社側の届出スケジュール)を共有し、早めにハローワークで求職申込みを行う必要がある旨を案内します。
  • 退職金の支給時期と税後手取りの目安を示す
    ・就業規則・退職金規程に基づき、支給予定日・支給方法を説明します。
    ・税務上の一般的な仕組み(退職所得控除・2分の1課税等)と、詳細は税務署や税理士で確認が必要である旨を伝えておくと丁寧です。
    参考:国税庁「No.2732 退職金と税」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2732.htm
  • 賃金日額の計算方法(6か月合計÷180)を提示して一緒に確認する
    ・賞与を除く6か月分の総支給額を本人と一緒に確認し、「おおよそこれくらいの賃金日額になる」という目安を共有しておくと、誤解を防ぎやすくなります。
  • 所定給付日数の目安を被保険者期間に合わせて確認する
    ・現職の雇用保険加入期間だけでなく、前職からの通算の有無、一年以上の空白期間の有無によって扱いが変わることがあります。
    ・「一般的にはこのくらいの範囲になると思われる」といった形で幅を持った説明にとどめ、最終判断はハローワークに委ねると安全です。
  • 重複給付や年金との調整が想定される場合は事前に説明する
    ・健康保険の傷病手当金を受給中・予定の方や、老齢年金受給中の方など、他制度との関係で実際に手取りがどうなるかは個別性が高いため、「調整が入り得る」ことを案内し、必ず所管窓口(年金事務所・健康保険組合・市区町村等)で確認いただくよう伝えておくと安心です。

退職金と失業手当を合わせて考える簡易フロー

退職後の生活資金を検討する際には、退職金と失業手当(基本手当)を別々に見るのではなく、合算したうえで「何か月分の生活費に相当するか」を把握しておくと、従業員の不安軽減につながります。

  1. 退職金の支給見込額と税後手取りの概算
    ・退職金規程や社内シミュレーションにより支給見込額を確認します。
    ・退職所得控除額を差し引き、残額の1/2を退職所得として課税するのが原則的な計算方法です(勤続年数などにより異なります)。
    ・実際の税額は、他の所得状況等も踏まえて計算されるため、税務署や税に詳しい専門家への確認をお願いするのが適切です。
  2. 直近6か月合計で賃金日額を算出 → 基本手当日額(概算)を出す
    ・前述の「6か月合計÷180」で賃金日額を出し、給付率の目安(例:0.6)を掛けて基本手当日額を仮置きします。
    ・高賃金帯・低賃金帯、年齢によっては上限・下限額の影響が出るため、あくまでも「ざっくりとした目安」であることを説明しておくと誤解を防げます。
  3. 基本手当日額 × 所定給付日数 = 失業手当総額(概算)
    ・受給資格を満たしていることを前提に、概ねの総額を把握します。
    ・給付制限期間や早期再就職(再就職手当の受給等)によって、実際に受け取る形は変わる可能性があります。
  4. 退職金(税後)+失業手当総額 = 総資金量 → 月間生活費で何か月分か算出
    ・毎月の生活費(家賃・教育費等を含む)をもとに、「退職後、何か月程度は現預金と給付でカバーできるか」を共有すると、退職タイミングの検討材料として役立ちます。

退職前に一度、概算で確認しておきましょう

本稿で紹介した考え方をもとに、当事務所のシミュレーターでは「賃金日額」「基本手当日額(概算)」「受給総額(概算)」「退職金との合算イメージ」まで、シンプルな入力で試算いただけます。
なお、雇用保険の正式な受給資格・金額は、必ずハローワークにおける手続きと算定結果をご確認ください。

参考・公式窓口(確認先)

本記事は、雇用保険制度および退職金税制の一般的な内容に基づき、退職前におおよその受給見込みを把握するための実務ガイドとして作成したものです。
最終的な給付可否・給付日数・金額および退職金の税務処理は、個別事情(被保険者期間、賃金水準、離職理由、他の所得・給付の有無、法改正等)により異なり、所轄のハローワーク・税務署等の案内が優先されます。具体的な手続きの際には、離職票や給与明細、退職金規程等を用意のうえ、必ず公式窓口で最新の情報をご確認ください。

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