退職給付金が多くても不安な人へ:失業手当で埋める“空白期間”の計算

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失業手当で埋める“空白期間”の計算
退職給付金が多くても不安な人へ:失業手当で埋める“空白期間”の計算

退職給付金が多くても不安な人へ:失業手当で埋める“空白期間”の計算

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

ある程度まとまった退職給付金(退職金等)があっても、「何ヶ月生活できるのか」「次の仕事が決まるまでの空白期間を本当に埋められるのか」が見えないと、不安は残ります。本記事では、退職給付金と雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)を組み合わせて、“空白期間”をどう計算するかの考え方とモデルケースを整理します。最終的な受給可否・金額・日数は、必ず所轄ハローワークの決定でご確認ください。

「退職給付金が多いのに不安」になる理由

退職給付金の額だけを見ると十分に思えても、次のような点が不透明なままだと不安が残りやすくなります。

  • 退職給付金が「手取り」でいくら残るか分からない(税金との関係)。
  • 基本手当(日額・所定給付日数)がどの程度になるか分からない。
  • 自己都合退職か会社都合退職かで、給付制限の有無や開始時期が変わる。
  • 当面の生活費が毎月いくら必要か整理できていない。
ポイント:「退職給付金がいくらあるか」ではなく、「退職給付金 + 基本手当 で、生活費の空白を何ヶ月埋められるか」を、ざっくり数式で押さえておくと安心材料になります。

空白期間の計算フレーム(基本式)

退職後の「空白期間」を埋めるイメージは、次のような式で整理できます。

生活可能月数 ≒ (退職給付金の手取り + 基本手当の総受給見込み) ÷ 毎月の生活費

ここで押さえたい要素は次の3つです。

  1. 退職給付金の「手取り」
    退職金には退職所得控除があり、他の所得と比べて有利な税制ですが、実際に使えるのは税引後の金額です。正確な税額は、所轄税務署や専門家での確認が必要です。
  2. 基本手当(失業手当)の総額
    基本手当日額は、離職前6か月の賃金を180で割った「賃金日額」のおよそ5〜8割で、年齢や賃金水準によって上限・下限が定められています。これに所定給付日数を掛けると、おおまかな総額のイメージがつかめます。
  3. 毎月の生活費
    住居費・光熱費などの固定費と、食費・交際費などの変動費を分けて整理し、「最低限必要なライン」としての生活費を把握しておくことが前提になります。

モデルケースで見る「何ヶ月埋められるか」のイメージ

以下は、退職給付金が比較的多めにある方を想定した概算モデルです。実際の基本手当日額・所定給付日数・給付制限の有無などは、離職時の賃金・被保険者期間・離職理由等により異なり、最終的にはハローワークの決定によります。

モデル 前職の年収(目安) 退職給付金(例・税引前) 基本手当の総額(概算) 毎月の生活費(例) 生活可能月数のイメージ
40代前半・単身・賃貸 400万円 200万円 約60万円(基本手当月額約15万円×4か月を想定) 18万円/月 (200+60)÷18 ≒ 約14か月分
50代前半・配偶者あり 600万円 500万円 約150万円(基本手当月額約25万円×6か月を想定) 28万円/月 (500+150)÷28 ≒ 約23か月分
50代後半・持ち家・子独立済み 700万円 800万円 約200万円(所定給付日数がやや長いケースを想定) 22万円/月 (800+200)÷22 ≒ 約45か月分

※基本手当の金額は、厚生労働省公表の「賃金日額・基本手当日額の目安」を参考にした概算です。実際の金額は、離職票に記載される賃金額・離職理由・年齢・所定給付日数などにより異なります。

「空白期間」をどう定義するか

空白期間とは、ここでは退職日翌日から次の就職(または事業開始)までの期間と考えます。この期間を埋めるうえで、次のような点を切り分けて考える必要があります。

  • ① 基本手当が支給されない期間
    ・待期期間(7日間)
    ・自己都合退職等に伴う給付制限期間(原則1か月、一定の場合は3か月)
  • ② 基本手当が支給されている期間
    ・4週間ごとの失業認定に基づき、基本手当が分割で支給される期間
  • ③ 基本手当の所定給付日数を使い切った後〜再就職までの期間(早期に就職する場合は存在しないこともあります)

①と③は、基本手当だけではカバーできない「穴」になりやすいため、退職給付金をどの程度ここに充てるかを検討することが重要です。

空白期間を計算するために必要な3つの数字

  1. 退職給付金(税引後)の金額と入金予定日。
  2. 基本手当の日額・所定給付日数・給付制限の有無(シミュレーターとハローワークで確認)。
  3. 退職後の毎月の生活費(固定費+変動費)の最低ライン。

これらを一度整理しておくと、「あと何ヶ月は大丈夫か」を、感覚ではなく数字で把握できます。

具体的な計算ステップ(例)

ステップ1:退職給付金の「利用可能額」を決める

退職給付金の全額を生活費に回すのではなく、次のように用途を分けて考えると計画が立てやすくなります。

  • ① 生活費として使う部分
  • ② 将来の大きな支出(住宅修繕・教育費・老後資金など)に充てる部分
  • ③ 予備資金(予想外の医療費・家電の買替え等)

「①生活費として使う部分」を生活可能月数の分母に使います。

ステップ2:基本手当の総受給見込みを把握する

基本手当の総受給見込みは、おおまかに次のように求められます。

基本手当総額 ≒ 基本手当日額 × 所定給付日数

※基本手当日額は、「離職前6か月の賃金合計 ÷ 180 × 給付率(およそ5〜8割)」をベースに算出され、年齢・賃金水準ごとに上限額・下限額が設定されています。

ステップ3:毎月の生活費から「埋めたい空白期間」を割り出す

例えば、次のようなイメージです。

  • 退職給付金(生活費に充てる分の手取り):400万円
  • 基本手当総額(概算):120万円
  • 毎月の生活費:25万円

この場合、

(400+120)÷25 ≒ 20.8か月 ⇒ 約20か月分の空白期間を埋められる目安

これに、想定する再就職までの期間(例:1年〜1年半)、再就職手当などの可能性を重ねて検討すると、より現実的な計画が立てやすくなります。

基本手当(失業手当)の支給開始タイミングと注意点

生活可能月数を計算するうえでは、総額だけでなく「いつから入金されるか」も重要です。

  1. 離職 → 離職票の受領
  2. ハローワークで求職申込・受給資格の決定
    ・ここで、離職理由区分や被保険者期間に基づき、基本手当の受給資格・所定給付日数等が決まります。
  3. 待期期間(7日間)
    ・この間は基本手当は支給されません。
  4. 給付制限(自己都合退職等の場合)
    ・正当な理由のない自己都合退職等では、待期満了後に給付制限がかかる場合があります(退職日や過去の自己都合退職歴等により、原則1か月または3か月とされることがあります)。
  5. 4週間に1度の失業認定と支給
    ・失業の状態や求職活動実績等が認定され、その期間分の基本手当が指定口座に振り込まれます。
空白期間のうち、待期期間と給付制限期間は基本手当でカバーできないため、ここを退職給付金からどの程度賄うかをあらかじめ試算しておくことが重要になります。

「空白期間」を具体的に見える化する3ステップ

  1. 退職給付金のうち生活費に充てる金額・用途別の内訳を決める。
  2. 失業手当シミュレーターで、基本手当日額・所定給付日数・給付制限の有無の概算を確認する。
  3. 毎月の生活費をもとに、「退職給付金(生活費分)+基本手当総額 ÷ 生活費」で生活可能月数の目安を計算する。

退職給付金が多い人ほど押さえておきたいポイント

  • 退職給付金の多寡それ自体を理由に、基本手当の受給資格がなくなったり、日額が減額されたりすることは通常はありません。受給の可否や金額は、主として離職前の賃金額・被保険者期間・離職理由等により決まります。
  • ただし、退職後に働かない期間が長期化しすぎると、受給期間(原則、離職日の翌日から1年間)のうちに所定給付日数を使い切れない可能性があります。
  • 病気・けが・妊娠・出産・育児・介護など、やむを得ない理由で30日以上働けない場合には、受給期間の延長制度がありますが、これは給付日数そのものを増やす制度ではなく、「受け取れる期間」を後ろにずらす制度である点に注意が必要です。
  • 早期に安定した再就職をした場合には、一定の要件を満たすことで再就職手当・就業促進定着手当が支給される場合があり、トータルの資金計画に影響します。

よくある質問(FAQ)

  • Q:退職給付金が多いと、失業手当が減額されたり、受給できなくなったりしますか?
    A:退職給付金が多いこと自体を理由に、雇用保険の基本手当の受給資格がなくなることや、基本手当日額が減額されることは通常はありません。受給の可否・日額・所定給付日数は、離職前の賃金額・被保険者期間・離職理由などを基に、雇用保険法のルールに沿って決定されます。
  • Q:この記事のモデルケースどおりの月数分、実際に生活できますか?
    A:本文中の計算はあくまで概算モデルです。実際に何ヶ月生活できるかは、退職給付金の税引後の金額、実際の基本手当日額・所定給付日数、給付制限の有無、生活費の水準や再就職のタイミング等により変動します。具体的な給付内容は、離職票・求職申込の内容に基づき、所轄ハローワークが決定します。
  • Q:退職後しばらくゆっくりしたい場合、受給期間の延長を使えば「空白期間」を増やせますか?
    A:受給期間の延長は、基本手当を受け取れる「期間」を後ろに延長する制度であり、所定給付日数(総日数)が増えるわけではありません。したがって、退職給付金と基本手当を合算した「総額」としての生活可能月数は変わらず、「どの時期に受け取るか」が変わる制度とご理解ください。

参考リンク

本記事は、執筆時点で公表されている雇用保険制度および退職金制度等に関する一般的な情報をもとに構成したものであり、すべての方の個別事情を反映したものではありません。実際の給付の有無・金額・日数・給付制限等は、離職票や求職申込時の内容に基づく所轄ハローワークおよび各制度の運営主体の判断が優先されます。

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