失業手当はいくら出る?退職給付金と合わせて考える資金計画

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目次

失業手当はいくら出る?退職給付金と合わせて考える資金計画

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

退職相談の場面では、「退職金が◯百万円あるので、当面はなんとかなると思う」「失業手当はいくらもらえるか、実はよく分からない」という声が少なくありません。しかし、退職後1〜2年の生活資金を考えるうえでは、退職給付金(退職金)の額だけでなく、「失業手当が毎月いくら・何か月支給されるのか」を把握しておくことが欠かせません。本稿では、人事・労務担当者向けに、失業手当の金額の基本構造と、退職給付金と組み合わせた資金計画の考え方を整理します。

1. 「失業手当はいくら出るのか」が重要になる理由

退職給付金がある程度見込める従業員ほど、「退職金があるから、しばらくは大丈夫だろう」と考えがちです。しかし、実際には次のようなギャップが生じることがあります。

  • 退職後に必要となる生活費(家賃・食費・社会保険料・税金など)を月いくらと見込むかが曖昧
  • 退職給付金を「老後用」と「当面用」に分けて考える発想がない
  • 失業手当が毎月いくら・何か月出るか、具体的な数字を把握していない
  • 退職後1〜2年のキャッシュフロー(入出金の流れ)を時系列で見たことがない

人事・労務担当者としては、「退職給付金の額」だけでなく、「失業手当の金額と期間」を一緒に整理し、退職後1〜2年の資金計画をイメージしてもらうことが、従業員の不安軽減に直結します。

2. 失業手当の金額はどう決まるか(基本構造)

雇用保険の失業手当(基本手当)は、「1日あたりいくらか(基本手当日額)」と「何日分支給されるか(所定給付日数)」で総額が決まります。この2つの仕組みを押さえておくと、退職後の資金計画を説明しやすくなります。

2-1. 基本手当日額(1日あたりの金額)の考え方

基本手当日額は、離職前6か月の賃金をベースにした「賃金日額」に、年齢区分ごとの給付率(おおむね45〜80%)を乗じて算出されます。さらに、年齢に応じた上限額・共通の下限額が設定されています。

  • 賃金日額=離職前6か月の賃金合計 ÷ 180日
  • 基本手当日額=賃金日額 × 給付率(45〜80%)※上限・下限あり
区分 基本手当日額の上限 基本手当日額の下限
30歳未満 7,255円 2,411円(年齢共通)
30歳以上45歳未満 8,055円
45歳以上60歳未満 8,870円
60歳以上65歳未満 7,623円

出典:厚生労働省公表の基本手当日額の上限・下限(令和7年8月1日〜令和8年7月31日)。実際の金額は、離職時期や賃金水準等により異なります。

※賃金日額の水準に応じた具体的な給付率(45〜80%)や年齢ごとの計算式は、厚生労働省の資料に詳細が示されています。人事・労務担当者が個別に正確な日額を算出することは難しいため、「水準感」を押さえるにとどめ、最終的な金額はハローワークで確定されることを従業員に伝えてください。

2-2. 所定給付日数(何日分もらえるか)の考え方

所定給付日数は、おおまかに「離職時の年齢」「雇用保険の被保険者期間」「離職理由(自己都合・会社都合など)」で決まります。一般的な自己都合退職では90〜150日、倒産・解雇等の会社都合退職や一部の有期契約満了の場合は90〜330日と、会社都合の方が手厚くなる仕組みです。

※就職困難者に該当する方など、一部のケースでは300〜360日と長期の給付日数が設定されることがあります。個別事情による扱いは、所轄ハローワークでの確認が必要です。

2-3. 「月いくら・何か月出るのか」の水準感

実務上は、「月いくらくらい受け取れるのか」の水準感が分かるだけでも、従業員の安心感は大きく変わります。賃金水準にもよりますが、例えば次のようなイメージです(いずれも概算)。

離職前の平均月収の目安 失業手当(月額)のイメージ 備考
約15万円 約11万円 年齢等により変動
約20万円 約13.5万円(60〜65歳は約13万円) 上限額の影響を受けるケースあり
約30万円 約16.5万円(60〜65歳は約13.5万円) 高収入層では上限額が効きやすい

※上記は厚生労働省が示す試算例をもとにした概算イメージです。実際の支給額は、賃金日額・年齢・離職時期などをもとに、ハローワークで個別に算定されます。

こうした「月いくら・何か月」という水準感を、退職相談の早い段階で共有しておくことで、退職給付金の使い方(老後用と当面用の配分)を検討しやすくなります。

3. モデルケースで見る「退職給付金+失業手当」の資金計画

ここからは、シンプルなモデルケースを用いて、「退職給付金」と「失業手当」を組み合わせた場合のイメージを具体的な数字で確認します。

3-1. 前提条件の整理

  • 退職給付金(退職金)の見込額:300万円
  • 退職後に必要な生活費:月20万円
  • 年金受給開始まで:あと5年
  • 失業手当:基本手当日額5,000円、所定給付日数160日(総額約80万円)という想定

※基本手当日額5,000円は、賃金日額や年齢等により変動します。所定給付日数160日も、被保険者期間や離職理由により異なります。ここでは説明用の一例であり、実際の金額・日数は所轄ハローワークでの確認が必要です。

3-2. 退職給付金だけに頼った場合

まず、「退職給付金300万円だけ」を生活費に充てた場合、どの程度の期間をカバーできるかを単純に見てみます。

項目 金額 備考
退職給付金 300万円 全額を当面の生活費に使用したと仮定
月次生活費 20万円 家賃・食費・社会保険料・税金等を含む想定
カバーできる期間 約15か月 300万円 ÷ 20万円 = 15か月

退職後1年強はカバーできるように見えますが、年金開始まで5年あることを踏まえると、その後の生活資金とのバランスに大きな課題が残ることが分かります。

3-3. 退職給付金+失業手当を組み合わせた場合

次に、同じ前提条件で失業手当を加味した場合を比較します。

ケース 退職給付金(当面用) 失業手当(総額イメージ) 短期に使える合計額 月20万円換算でのカバー期間
A:退職給付金だけに頼る 300万円 0円 300万円 約15か月
B:退職給付金+失業手当を活用 300万円 80万円(5,000円×160日) 380万円 約19か月
C:退職給付金の一部を老後用に確保 200万円(当面用) 80万円 280万円(短期に使う前提) 約14か月(ただし老後用100万円を確保)

このように、「失業手当をいくら受け取る見込みか」を前提にするかどうかで、退職後1〜2年の生活費をどの程度カバーできるか、また老後用にどれだけ残せるかが大きく変わります。退職給付金と失業手当を別々ではなく、「セット」で説明することが大切です。

4. 退職給付金を「老後用」と「当面用」に分けて考える

退職後の資金計画を説明する際には、退職給付金を1つの塊として扱うのではなく、「老後用」と「当面の生活費用」の2つに分けて考えてもらうと整理がしやすくなります。

4-1. 2つの箱に分けるイメージ

  • 箱A:老後用の退職給付金
    年金受給開始後の生活費や、医療・介護・住宅修繕等の将来支出に備える資金。原則として、退職直後には手を付けない前提で考える。
  • 箱B:当面の生活費に充てる退職給付金
    退職後1〜2年の生活費不足を補うために、失業手当と組み合わせて使う資金。

失業手当は、本来「箱B」の負担を軽くする役割のお金です。失業手当を前提にせずに退職給付金だけで判断すると、箱Bに必要以上の金額を回してしまい、箱A(老後用)が薄くなるリスクがあります。

4-2. 人事・労務担当者が一緒に確認しておきたい項目

退職相談やキャリア面談の場では、次の項目を従業員と一緒に整理しておくと、「箱A・箱B」のイメージを具体化しやすくなります。

  • 退職給付金の見込額(自社の退職金規程に基づく)
  • 退職後の月次生活費(家賃・食費・光熱費・社会保険料・税金など)
  • 失業手当の概算(基本手当日額の水準感、所定給付日数)
  • 年金受給開始までの年数と、大まかな年金見込額(分かる範囲で)

退職給付金と失業手当を組み合わせて説明する際のステップ例

  • ステップ1:自社規程に基づく退職給付金の見込額を提示する
  • ステップ2:退職後1〜2年の月次生活費を一緒に整理する
  • ステップ3:失業手当の概算(基本手当日額・所定給付日数)を確認してもらう
  • ステップ4:退職給付金を「老後用(箱A)」と「当面用(箱B)」に分けるイメージを共有する
  • ステップ5:「箱B+失業手当」で退職後何か月分の生活費をカバーできるかを数値で示す

こうした流れで説明することで、従業員は「退職金がいくらか」だけではなく、「退職後◯か月をどう乗り切り、老後にいくら残すか」という視点から退職を検討しやすくなります。

5. 失業手当の「見える化」にはシミュレーター活用が有効

失業手当の金額は、離職時の賃金・年齢・被保険者期間・離職理由など複数の要素で決まるため、人事・労務担当者が社内で正確な金額を一人ひとり算出するのは現実的ではありません。一方で、「月◯万円程度が◯か月」の水準感が分かれば、退職後の資金計画の不安はかなり軽減されます。

従業員自身に「だいたいの額」を見てもらうには

植本労務管理事務所では、離職時の年齢・雇用保険の加入年数・離職前の賃金などを入力することで、 失業手当の月額・総額の水準感を簡単に確認できる 「失業手当シミュレーター」をご用意しています。

退職相談やキャリア面談の際に、従業員ご自身にスマートフォンやPCからシミュレーションを行ってもらうことで、 「退職給付金◯万円+失業手当◯万円=退職後◯か月分の生活費」という具体的なイメージを共有しやすくなります。

※シミュレーターの結果はあくまで概算であり、実際の受給要件・金額・給付日数等は、所轄ハローワークでの確認が必要です。

6. 失業手当を前提にしないまま退職を決めるリスク

失業手当の金額や期間を十分に確認しないまま、退職給付金だけを根拠に退職を決めると、次のようなリスクが生じやすくなります。

6-1. 退職給付金の想定以上の取り崩し

  • 再就職が長引き、1〜2年で退職給付金の大半を取り崩してしまう
  • 年金受給開始前に生活資金が不足し、急激な生活水準の見直しを迫られる
  • 病気や家族の介護等の突発的な支出に対応できなくなる

6-2. 失業手当の受給機会・水準を十分に活かせない

失業手当には、「離職日の翌日から原則1年間」という受給期間の制限があり、この期間を過ぎると所定給付日数が残っていても受給できません。また、自己都合退職等の場合は、待期(7日間)後に給付制限期間(原則1か月)が設けられるなど、離職理由によってもスケジュールが変わります。

  • 離職後しばらくハローワークに行かず、結果として受給できる期間が短くなる
  • 離職理由の整理が不十分なまま手続を行い、給付制限や給付水準に不利な影響が生じる
  • 高年齢者では、失業給付と年金の調整関係を十分理解しないまま手続し、手取り金額のイメージとずれが生じる

※給付制限期間の長さや扱い、年金との調整の具体的な内容は、離職日や個別事情により変わる可能性があります。必ず最新の制度に基づき、所轄ハローワーク等で確認してもらう必要があります。

7. まとめ:退職給付金の「額」ではなく、失業手当を含めた「期間」で伝える

退職給付金が一定額見込める従業員ほど、「金額」だけで判断して退職を決めてしまいがちです。人事・労務担当者としては、次の3点を意識して説明することで、退職後の不安を大きく軽減できます。

  • 退職給付金は、本来は老後も含めた長期の生活を支える資金であり、短期間で使い切る前提のお金ではないこと
  • 失業手当は、退職直後〜再就職までの生活費を補う公的給付であり、退職給付金の早期取り崩しを抑える効果があること
  • 「当面用退職給付金+失業手当」の合計を、退職後1〜2年の生活費(月◯万円)で割り返し、「何か月分の生活費が確保できるか」を見える化すること

退職給付金の額そのものではなく、「失業手当を含めた退職後1〜2年のキャッシュフロー」をセットで提示することが、従業員の納得度の高い意思決定につながります。その実務的なツールとして、失業手当シミュレーターを社内の退職相談フローに組み込んでおくことは、有効な選択肢の一つといえます。

参考リンク(社内説明用に紹介しやすい公的情報)

本記事は、退職給付金および雇用保険の失業給付に関する一般的な考え方と、人事・労務担当者が従業員へ説明する際のポイントを整理したものです。個別の受給要件・金額・給付日数等の詳細は、最新の法令・通達および所轄ハローワーク等の案内をご確認ください。

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