失業手当はいくらもらえるかで意味が変わる|退職給付金との関係性

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失業手当はいくらもらえるかで意味が変わる退職給付金との関係性
失業手当はいくらもらえるかで意味が変わる|退職給付金との関係性

失業手当はいくらもらえるかで意味が変わる|退職給付金との関係性

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

退職相談の場面では、「退職金さえあれば当面は大丈夫」「失業手当はオマケ程度」といった受け止め方をされることもあります。しかし、失業手当が「いくら」「何か月」支給されるかによって、退職給付金(退職金)をどれだけ生活費に回してよいか、ひいては老後資金としてどれだけ残せるかが大きく変わります。本稿では、人事・労務担当者が従業員に説明することを念頭に、失業手当の水準と退職給付金との関係性を整理します。

1. 失業手当と退職給付金の「役割」と「お金の出どころ」

まず、失業手当と退職給付金がそもそもどのような性格のお金なのかを整理しておく必要があります。

項目 失業手当(雇用保険の基本手当) 退職給付金(退職金)
根拠 雇用保険法に基づく公的保険給付 就業規則・退職金規程・企業年金規約等
給付主体 国(雇用保険) 会社・共済・企業年金等
主な役割 失業中の生活費の一部を補う「短期のつなぎ資金」 老後や将来の大きな支出に備える「長期資金」
支給方法 日額×給付日数を、4週間ごとの失業認定に応じて分割支給 一時金または年金形式で支給
税務上の扱い 非課税 退職所得として課税(一定の控除あり)

従業員には、「失業手当は在職中に保険料を負担してきた結果としての『権利』であり、まずはこれで生活費をカバーし、そのうえで退職金はできるだけ老後に残すお金」という整理を共有しておくと、両者の役割の違いを理解してもらいやすくなります。

2. 失業手当はいくら・何か月もらえるのか

2-1. 「日額」の決まり方と上限・下限

失業手当のベースとなるのが「基本手当日額」です。これは、離職前6か月の賃金総額を180で割った「賃金日額」に、年齢区分・賃金水準に応じた給付率(45〜80%)を乗じて算定します。さらに、年齢別の上限額・全年齢共通の下限額が適用されます。[id:44662][id:44666]

区分 基本手当日額の上限 基本手当日額の下限(全年齢共通)
30歳未満 7,255円 2,411円
30歳以上45歳未満 8,055円
45歳以上60歳未満 8,870円
60歳以上65歳未満 7,623円

実務上、人事・労務担当者が個々の従業員の基本手当日額を正確に算定する必要はなく、仕組みと上限・下限の水準感を説明できれば十分です。個別具体の金額は、離職票に基づきハローワークで確定されます。[id:44662]

2-2. 月あたりの支給額の目安

退職面談等で使いやすいよう、「月収ベース」での目安を共有しておくと便利です。以下は、離職前の平均月収と、そこから想定される失業手当の「月あたり額」の概算イメージです。

離職前の平均月収
(額面・賞与除く)
月あたりの基本手当受給額の目安
15万円程度 約11万円
20万円程度 約13.5万円
(60〜64歳は約13万円)
30万円程度 約16.5万円
(60〜64歳は約13.5万円)

上記は、賃金日額に給付率を掛けた基本手当日額を、1か月あたり約30日分として概算した水準感です。実際の額は、賃金水準・年齢・上限・下限等を反映してハローワークで個別に決定されます。[id:44662][id:44666]

2-3. 給付日数(何か月もらえるか)の骨格

失業手当の「総額」は、日額だけでなく「何日もらえるか」によって大きく変わります。所定給付日数は、原則として次の3要素で決まります。

  • 離職時の年齢
  • 離職理由(会社都合か自己都合か、就職困難者か等)[id:31039]
  • 雇用保険の被保険者期間(加入期間)

一般的な自己都合退職(特定受給資格者・就職困難者等以外)の場合、所定給付日数はおおむね次のとおりです。

被保険者期間 所定給付日数(全年齢・一般的な離職理由)
1年未満 90日(約3か月分)
1年以上5年未満 90日(約3か月分)
5年以上10年未満 90日(約3か月分)
10年以上20年未満 120日(約4か月分)
20年以上 150日(約5か月分)

倒産・解雇等の会社都合に該当する特定受給資格者や、一部の特定理由離職者・就職困難者では、所定給付日数が大きく伸びる取り扱いがあります。離職理由の整理と雇用保険加入期間の通算は、退職前に人事側で確認しておくと説明がスムーズです。[id:31039][id:26469]

3. 失業手当の総額で変わる「退職給付金の意味」

3-1. 「失業手当ゼロ」と「月収の6割が6か月」の違い

失業手当が「いくら・何か月」出るかによって、退職給付金の位置づけは大きく変わります。極端な例で整理すると、次のようなイメージです。

パターン 失業手当 退職給付金の意味合い
A:受給資格なし 0円 退職直後の生活費から老後資金まで、ほぼ全てを退職給付金・貯蓄で賄う必要がある。
B:月収の6割が3か月 月15万円×3か月=45万円程度 「転職までのつなぎ」を数か月分カバー。退職給付金の一部を老後に残せる余地が出る。
C:月収の6割が1年 月15万円×12か月=180万円程度 1年間の基礎的な生活費のかなりの部分を公的給付で賄えるため、退職給付金はより老後資金寄りの性格を維持しやすい。

同じ300万円の退職給付金でも、「失業手当ゼロ」のケースと「失業手当180万円」のケースでは、従業員本人にとっての意味が全く異なります。人事側の説明においても、「退職金の額」だけでなく、「失業手当がどの程度生活費を肩代わりしてくれるか」をセットで示すことが重要です。

3-2. モデルケース:退職給付金300万円・45歳の場合

具体的なイメージをつかむため、以下の前提で簡易シミュレーションを行います。

項目 前提
年齢 45歳
離職前の平均月収 25万円(賞与除く)
退職給付金 300万円
雇用保険の被保険者期間 15年(自己都合退職)
所定給付日数 120日(約4か月分)
退職後の生活費 月20万円(家賃・社会保険料・税金等を含む)

月収25万円の場合、前掲の目安表から、失業手当の月あたり受給額は20万円と30万円の中間程度、すなわち約15万円とみることができます。この場合、

  • 失業手当の総額(概算):15万円 × 4か月 = 60万円
  • 退職給付金:300万円

となり、合計360万円を月20万円の生活費で割ると、単純計算で約18か月分の生活費に相当します。

もっとも、退職給付金300万円の全額を生活費に回してしまうと老後資金が枯渇するおそれがあります。たとえば「200万円は老後用に確保し、100万円+失業手当60万円=160万円を当面の生活費に充当する」という考え方を共有すると、月20万円の生活費で約8か月分をカバーできる、という説明が可能になります。

3-3. 年代別に見た「失業手当の意味の違い」

同じ「月15万円の失業手当」でも、年代によって退職給付金との関係性は変わります。退職面談での説明例として、年代別に整理すると次のようなイメージです(いずれも概算)。

年代 前提例 失業手当の意味合い
30代 ・平均月収:22万円
・退職給付金:150万円
・所定給付日数:90日(約3か月)
・生活費:月18万円
・失業手当:月約14万円×3か月=42万円程度
・退職給付金に比べると小さいが、「3〜4か月分の家計のクッション」としての意味が大きい。
50代 ・平均月収:30万円
・退職給付金:600万円
・所定給付日数:180日(約6か月・会社都合の場合など)
・生活費:月25万円
・失業手当:月約16.5万円×6か月=約99万円
・退職給付金に対しても存在感があり、「退職金の取り崩しを半年ほど遅らせる役割」を持つ。
60〜64歳 ・平均月収:28万円
・退職給付金:500万円
・所定給付日数:150日(約5か月・定年退職など)
・生活費:月23万円
・失業手当:月約14.6万円×5か月=約73万円
・年金受給開始時期とのつなぎとしての意味が大きく、「退職金・年金・失業手当」の3者調整が重要となる。[id:15829][id:18465]

4. 実務で従業員にどう説明するか

4-1. 3つの数字をセットで整理してもらう

退職前面談やキャリア面談の場では、少なくとも次の3つの数字を従業員本人に確認してもらうと、失業手当と退職給付金の関係性を具体的に理解してもらいやすくなります。

  • 退職後の毎月の生活費
    家賃・ローン・食費・光熱費だけでなく、国民年金・国民健康保険料、住民税・所得税なども含めた「退職後の月次固定費」を見積もる。
  • 失業手当の月額と給付月数の概算
    離職前の平均月収と雇用保険の被保険者期間から、「月◯万円×◯か月程度」という水準感を共有し、最終的な金額はハローワークで確認してもらう前提とする。[id:26469]
  • 退職給付金のうち、当面の生活費に回してよい金額
    退職金規程に基づく支給見込み額を前提に、「老後用として最低限残すライン」を本人と確認する。

これら3つを数字で並べ、「(失業手当の総額+退職金のうち生活費に回す部分)÷毎月の生活費=何か月分か」を一緒に計算してみることで、「失業手当の金額によって退職金の意味が変わる」ことを直感的に理解してもらうことができます。

4-2. 給付制限・受給期間も合わせて伝える

失業手当の「いくら・何か月」という話をする際には、あわせて次の点も簡潔に触れておくと親切です。

  • 給付制限の有無・期間
    自己都合退職など正当な理由のない離職の場合、7日間の待期に続き、原則1か月間(5年以内に3回以上の自己都合退職等がある場合は3か月間)の給付制限がかかるため、その間は失業手当が支給されない。[id:42006]
  • 受給期間「原則1年」
    離職日の翌日から1年間が受給期間であり、この期間内に手続きと受給を終える必要がある(妊娠・出産・病気等のやむを得ない理由がある場合は、受給期間の延長制度あり)。[id:26469]
  • 離職理由の重要性
    倒産・解雇等にあたる特定受給資格者や一部の特定理由離職者は、所定給付日数が手厚くなったり、受給資格要件が緩和されたりするため、離職票に記載する離職理由が実態に沿っているかを社内で丁寧に確認しておく必要がある。[id:31039]

5. 退職給付金との関係性を踏まえた社内対応のポイント

5-1. 社内で押さえておきたい整理事項

  • 退職金規程と想定支給額の早期提示
    自己都合・会社都合・定年など退職理由別に、概算の退職給付金水準を本人に早めに共有できるようにしておく。
  • 雇用保険加入期間と離職理由の事前確認
    転籍・出向・パートから正社員化などを含め、雇用保険の被保険者期間がどの程度あるか、どの離職区分に該当するかを、退職協議の前に整理しておく。[id:1912][id:31039]
  • 「老後資金」と「当面の生活費」を分けて説明する
    退職給付金は「老後用(箱A)」と「当面の生活費用(箱B)」の2つに分けて考えてもらい、失業手当は箱B側を支える公的給付として位置づけて説明する。

退職前に確認しておきたい「簡易シミュレーション」3ステップ

  • 退職給付金の見込み額を確認する
    自社の退職金規程にもとづき、退職理由別の支給水準を試算し、本人におおよその金額を伝えられるようにしておく。
  • 失業手当の月額・給付日数の目安を把握する
    離職前の平均月収と雇用保険の被保険者期間から、「月◯万円×◯か月程度」という水準感を整理し、詳細はハローワークで確認してもらう前提とする。[id:26469]
  • 退職後の月次出費を洗い出す
    家賃・ローン・教育費・社会保険料・税金などを含めた毎月の支出額を整理し、(退職金の箱B+失業手当の総額)÷月次出費で「何か月分の生活費になるか」を本人に把握してもらう。

社内での説明は、制度の枠組みと考え方・水準感の提供にとどめ、具体的な受給可否や最終的な支給額については、必ず所轄ハローワークの判断を前提として案内することが適切です。[id:26469]

6. まとめ:失業手当の水準で退職給付金の「意味」が変わる

失業手当は、単に「もらえるか・もらえないか」ではなく、「いくら」「何か月」受給できるかによって、退職給付金の意味を大きく変える存在です。退職給付金を老後資金の核としつつ、失業手当を活用して退職直後の生活費をどこまで公的給付で賄えるかを丁寧に説明することで、従業員の退職後の生活設計を現実的なものにすることができます。

人事・労務担当者としては、「退職金の額だけ」で安心させるのではなく、「失業手当の概算」「退職後の月次出費」「老後資金として残すべき退職金」の3点セットで話を進めることが、従業員の長期的な生活の安定につながるといえます。

参考・公式情報

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士) — 本記事は、退職給付金と雇用保険の失業手当に関する一般的な制度趣旨および考え方を説明するものであり、具体的な受給要件・給付額・給付日数は個別事情や制度改正等により異なります。詳細は、所轄ハローワーク等の公的機関の案内をご確認ください。

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