あなたの有給、実は足りていない?年次有給休暇シミュレーターで即チェック

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あなたの有給、実は足りていない?年次有給休暇シミュレーターで即チェック
あなたの有給、実は足りていない?年次有給休暇シミュレーターで即チェック

あなたの有給、実は足りていない?年次有給休暇シミュレーターで即チェック

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

年次有給休暇(以下「有給休暇」)は、働く人が心身を回復し、生活と仕事のバランスを取るために、労働基準法で保障された基本的な権利です。 一方で、「自分の有給日数が合っているのか分からない」「システム任せで、人事として根拠を説明できない」といったご相談も多くあります。

特にパート・アルバイトや短時間勤務の方、派遣・有期契約の方などでは、 本来付与すべき有給日数が不足している、あるいは付与自体が漏れているケースも見受けられます。 企業にとっては、把握不足のまま運用を続けると、後に未付与分の一括付与・是正勧告・遡及対応が必要となるリスクがあります。

この記事では、年次有給休暇の法定ルールに沿って、 「本来いくら付与すべきか」「現在の運用は足りているか」を確認するための視点を整理しながら、 あわせてご利用いただけるシミュレーターもご紹介します。

参考:厚生労働省「年次有給休暇のあらまし」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

年次有給休暇とシミュレーションのイメージ

まずはギャップ確認:年次有給休暇シミュレーター

勤続期間・週の所定労働日数・出勤率などを入力すると、 現在の従業員ごとの有給休暇付与日数が、法定基準と比較して妥当かどうかの目安を確認できます。 人事労務担当者が自社の付与ルールを点検する際の入り口としてもご利用いただけます。

※ シミュレーターは厚生労働省公表の付与日数表に基づく一般的な計算を行うものであり、実際の付与日数は就業規則・個別契約・出勤状況等により異なる場合があります。
参考:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-3.pdf

年次有給休暇は誰に、いつから発生するのか

有給休暇は、業種・規模・雇用形態にかかわらず、 労働基準法上の「労働者」全員に適用される制度です。 正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員・派遣労働者・管理監督者を含め、労働者である限り対象となります。

法律上、有給休暇が発生する最低条件は次の2つです。

  • 雇入れ日から6か月以上継続勤務していること
  • その期間の出勤率が全労働日の8割以上であること

この2つの条件を満たした時点で、企業は有給休暇を付与する義務があります。 なお、「継続勤務」は契約期間の形式にかかわらず、実態として引き続き使用されている場合(有期契約の反復更新、定年後再雇用など)は通算して判断する必要があります。

参考:厚生労働省「有期・パートタイム労働者にも年次有給休暇が付与されます」等
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/hatarakikata/index.html

「出勤率8割」の正しい計算と、足りていないケース

付与要件の一つである「出勤率8割」は、単にカレンダー日数を基準にするものではなく、 労働義務のある日(全労働日)に対して実際に出勤した日数の割合で判断します。

出勤率 = 出勤日数 ÷ 全労働日数 × 100(%)

ここで特に注意すべきなのは、次のような日をどのように扱うかです。

  • 業務上の負傷・疾病による療養休業日:出勤したものとして扱う
  • 産前産後休業、育児休業、出生時育児休業、介護休業を取得した日:出勤したものとして扱う
  • 年次有給休暇を取得した日:出勤したものとして扱う
  • 会社都合の休業日(使用者の責に帰すべき休業):全労働日から除外する

これらを誤って「欠勤」や「通常の休日」として扱い、出勤率を低く計算してしまうと、 本来は要件を満たしている労働者に対して有給休暇が付与されない、という違法な状態になりかねません。 勤怠システムのマスタ設定や、人事担当者の手計算ルールを確認しておくことが重要です。

参考:厚生労働省「年次有給休暇のあらまし(出勤率の考え方)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf

付与日(基準日)と、その後の付与サイクル

有給休暇の付与日は、原則として次のように決まります。

  • 初回付与日:雇入れ日から6か月経過した日で、かつその期間の出勤率が8割以上に達した日
  • 2回目以降:初回付与日から1年ごとに、直前1年間の出勤率が8割以上であれば付与

「入社した日=有給休暇が使える日」ではなく、 入社から6か月経過した日がスタートとなる点が実務でも誤解されやすいポイントです。 その後は、個々人ごとに1年ごとのサイクルで付与を繰り返すことになります。

人事労務の現場では管理を簡素化するため、 「毎年4月1日に一斉付与」といった基準日の統一(斉一的取扱い)を行うケースもあります。 この場合でも、入社6か月後の法定付与を遅らせることはできないため、 必要に応じて「入社6か月後に一度付与→次回から共通基準日に合わせる」といった設計が必要です。

参考:厚生労働省「年次有給休暇の付与の単位・時季指定義務等に関するQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf

「本来付与すべき日数」と「実際の運用」がズレやすいポイント

有給休暇の付与日数はおおまかに分けて、次の2つの要素で決まります。

  • 勤続年数(継続勤務期間)
  • 週の所定労働日数および週所定労働時間

まず、週5日勤務または週30時間以上勤務している一般的なフルタイム労働者には、 勤続年数に応じて次のような法定最低日数を付与する必要があります。

継続勤務年数週5日(または週30時間以上)の労働者週3日(比例付与の一例)
0.5年(入社6か月後)10日5日
1.5年11日6日
2.5年12日6日
3.5年14日8日

右列の週3日勤務のケースは、「週4日以下かつ週所定労働時間30時間未満」の労働者に適用される比例付与の一例です。 実務では、週4日・週2日・週1日など、各パターンごとに厚生労働省が示す比例付与の表に従って付与日数を決定します。

比例付与の詳細な日数表は、厚生労働省リーフレット「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」をご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-3.pdf

雇用形態が変わった場合の取り扱い
パートから正社員、契約社員から無期・正社員などに変更した場合でも、それまでに付与された有給日数を減らしたり取り消したりすることはできません。 次の基準日に、変更後の週所定労働日数・時間に応じて新たな付与日数を決定する、という考え方で整理します。

有給休暇が「足りていない」典型的なパターン

シミュレーターで計算した法定日数と自社の付与日数・管理帳票を照合すると、次のようなギャップが見つかることがあります。

  • 週5日・週30時間以上勤務なのに、パートだからといって比例付与の少ない日数しか与えていない
  • 派遣労働者について、派遣元ではなく派遣先で独自に付与しており、通算勤続年数が正しく反映されていない
  • 試用期間中を「勤続年数に算入していない」扱いとしてしまい、6か月経過時の付与が遅れている
  • 産休・育休・介護休業期間を欠勤扱いとし、出勤率8割を下回ると誤判定している
  • 兼務役員・管理監督者を「役員だから有給なし」と一律に扱っている
有給取得を理由とする不利益取扱いは禁止
有給休暇を取得したことを理由として、解雇・降格・減給・不利益な配置転換などを行うことは、労働基準法第39条の趣旨に反します。 皆勤手当等の取り扱いについても、有給取得を事実上妨げるような設計になっていないかを確認することが重要です。

参考:厚生労働省「年次有給休暇の取得促進に向けた取組事例」
https://work-holiday.mhlw.go.jp/bonus/annual_paid_leave/

企業側が確認しておきたい法令上の義務

有給休暇に関して、企業・事業主には次のような義務があります。 運用が曖昧な場合は、シミュレーター結果と照らし合わせながら点検しておくと安心です。

  • 付与要件を満たした労働者への有給休暇付与義務
    6か月継続勤務・出勤率8割以上の要件を満たした労働者には、勤続年数に応じた法定日数以上の有給休暇を付与する義務があります。
  • 年5日の時季指定義務(年10日以上付与される労働者)
    年10日以上の有給休暇が付与された労働者については、そのうち少なくとも5日について、企業が時季指定を行うなどして1年以内に確実に取得させる必要があります。
  • 有給休暇管理簿の作成・保存義務
    すべての労働者について、基準日、付与日数、取得日、取得日数等を記録した「年次有給休暇管理簿」を作成し、一定期間保存することが義務づけられています。
  • 時季変更権の行使要件
    「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り、使用者は労働者の請求した時季を変更することができますが、単なる繁忙期や慣行だけを理由として一律に認めない運用は適切ではありません。

参考:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得」
https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf

有給休暇の有効期限と、残日数の「見える化」

有給休暇には付与から2年間という時効があります。 付与後2年を経過し、未消化のまま残っている日数は、法的には自動的に消滅します。

例えば、フルタイム正社員の場合のイメージは次のとおりです(出勤率8割以上を前提とします)。

  • 入社6か月後:10日付与
  • 入社1年6か月後:11日付与(合計21日保有)
  • 入社2年6か月後:12日付与(このタイミングで、最初の10日分のうち未使用分が時効により消滅)

どの年度分から優先して消化するかは法令で決まっていませんが、 多くの企業では就業規則や社内ルールで「古い年度分から順に消化」といった整理を行っています。 シミュレーターや管理簿と連動させて、従業員本人にも残日数と有効期限を見える化しておくと、計画的な取得につながります。

有給休暇が時効により消滅した場合、企業がその分を必ず買い取る義務はありません。 一方で、退職時に残っている有給休暇を任意に買い取ること自体は、法令上禁止されていません。

有給休暇の取得単位と、取得日の賃金水準

有給休暇は、原則として1日単位で付与・取得しますが、 就業規則で定めることにより半日単位、さらに労使協定により時間単位で与えることも可能です(時間単位は年5日分が上限)。

有給休暇取得日の賃金については、労働基準法上、次のいずれかの方法で支払うことが認められています。

  • その日を通常どおり出勤した場合に支払われる賃金(通常の賃金)
  • 平均賃金(直前3か月間の賃金総額を基礎とした額)
  • 健康保険法上の標準報酬日額に相当する額(労使協定が必要)

多くの企業では「通常の賃金」での支払いを採用していますが、 どの方法を採用するかは就業規則等に明記しておく必要があります。 また、年休取得を理由として歩合給や手当を除外するなどの不利益取扱いは原則として認められません。

参考:厚生労働省「賃金・退職金・最低賃金等に関するQ&A(年次有給休暇中の賃金)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukyoku/index.html

よくある質問(FAQ)

  • Q. 有給休暇に時効はありますか?
    A. はい。付与日から2年が経過すると、未使用分は時効により消滅します。前年から繰り越すことはできますが、2年を超えて残った分は消滅します。
  • Q. パート・アルバイトにも必ず有給休暇を付与しなければなりませんか?
    A. 労働基準法上の「労働者」であれば、雇用形態にかかわらず、6か月継続勤務・出勤率8割以上の要件を満たした時点で有給休暇を付与する必要があります。週の所定労働日数・時間により日数は比例付与されますが、「パートだから有給なし」という扱いはできません。
  • Q. 管理監督者や兼務役員にも有給休暇は必要ですか?
    A. 管理監督者は労働基準法上の労働者であるため、有給休暇の付与対象です。また、役員であっても、実態として労働者としての業務に従事している「兼務役員」の部分については、有給休暇の権利が生じる場合があります。
  • Q. 有給取得中の賃金はどのように支払えばよいですか?
    A. 原則として「通常の賃金」「平均賃金」「健康保険法上の標準報酬日額」のいずれかの方法から選択し、就業規則や労使協定で定めたとおりに支払います。実務上は、所定労働時間分の通常の賃金を支払う方法が広く用いられています。
  • Q. シミュレーターの結果と自社の付与日数に差がある場合、どちらを優先すべきですか?
    A. 法令上は、労働基準法で定められた付与日数を下回ることはできません。シミュレーターの結果が自社の付与日数を上回る場合は、法定日数に不足がないかを就業規則・雇用契約・勤怠実績に照らして確認することが必要です。

シミュレーターで「足りているか」を早めにチェック

有給休暇は、働く人にとっての重要な権利であると同時に、企業にとってもコンプライアンスと人材定着に直結するテーマです。 まずは、自社の付与日数や運用ルールを、法定基準と比較して確認しておくことが重要です。

年次有給休暇シミュレーターを活用し、気になる職種・雇用区分・勤続年数パターンをいくつか試算してみることで、 「本来の法定日数」と「現在の社内ルール」とのギャップを早期に把握することができます。

あわせて、厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」では、有給休暇の取得促進に向けた事例や資料が公開されています。
https://work-holiday.mhlw.go.jp/

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)
※ 本記事は日本の労働基準法等に基づく一般的な制度解説であり、最終的な取扱いは就業規則・個別の労働条件・所轄労働基準監督署等の判断により異なる場合があります。

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