目次
- 1 失業手当はいくらもらえる?計算方法と“思ったより少ない”理由を完全解説
- 1.1 まず押さえる基本:受給できる“期間(受給期間)”とは?
- 1.2 所定給付日数と受給期間の関係(ここが混同されやすい)
- 1.3 所定給付日数はどう決まる?(年齢・被保険者期間・離職理由)
- 1.4 いつから支給が始まるのか(待期と給付制限)
- 1.5 受給期間の延長ルール(病気・けが・妊娠・出産・育児など)
- 1.6 所定給付日数が長い場合(330日・360日など)の考え方
- 1.7 例外・特例:離職後に事業を開始(起業)した場合の扱い
- 1.8 あなたの受給「期間」と「総日数」をシミュレーターで確認
- 1.9 よくある勘違い(受給期間で失敗しやすいポイント)
- 1.10 実務チェックリスト:受給期間で失敗しないために
- 1.11 Q&A(受給期間に関するよくある質問)
- 1.12 参考・公式リンク(必読)
- 1.13 「いつまで」もらえるかは数字で確認するのが一番確実
失業手当はいくらもらえる?計算方法と“思ったより少ない”理由を完全解説
監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)
失業手当(雇用保険の基本手当)は、「いくら」もらえるかと同じくらい「いつから・いつまで」受け取れるかが重要です。 本記事では、とくに「受給できる期間(受給期間)」「所定給付日数(総日数)」「期間延長や起業した場合の特例」の3点を中心に、生活設計を狂わせないための押さえどころを整理します。 制度の最終的な判断や具体的な日数の確定は、必ず所轄ハローワークが行いますので、実際の手続きの際には確認をお願いいたします。
まず押さえる基本:受給できる“期間(受給期間)”とは?
雇用保険の失業手当(基本手当)を受給できる期間は、原則として 離職日の翌日から1年間と定められています。この1年間を「受給期間」といいます。 この受給期間の中で、ハローワークで受給手続きを行った後、 「失業の状態(就職の意思と能力があり、積極的に求職活動をしているが就職できていない状態)」にある日について、 所定給付日数の範囲で基本手当が支給される仕組みです。
ここでいう「失業の状態」とは、単に仕事をしていないだけではなく、次の3つを満たしている必要があります。
- 就職しようとする積極的な意思があること
- いつでも就職できる能力(健康状態や家庭環境など)があること
- そのうえで積極的に求職活動をしているにもかかわらず、職に就いていないこと
したがって、病気や出産・育児などで当面働けない期間は、「失業の状態」には当たらず、原則として基本手当の支給を受けることはできません。 その場合に利用するのが「受給期間の延長」の仕組みです(後述)。
なお、季節労働などの短期雇用特例被保険者については、受給期間が 離職日の翌日から6か月と短く設定されているなど、別の取扱いがあります。 本記事では、一般的なケースである「一般被保険者」の基本手当を前提に説明します。
所定給付日数と受給期間の関係(ここが混同されやすい)
ここで混同しやすいのが、「所定給付日数」と「受給期間」の違いです。 簡単にいうと、次のようなイメージになります。
- 所定給付日数:その方が受給できる総日数(例:90日、120日、150日、240日、330日、360日など)
- 受給期間:その総日数を受け取ることができる期限(枠)(原則1年、一定の場合に延長あり)
基本手当は、4週間ごとの「失業の認定」に基づき、その認定対象日数分が支給されていきます。 ただし、いくら所定給付日数が多くても、その日数を消化するのはあくまで 「離職の翌日から原則1年」という受給期間の中に限られます。
要点:
所定給付日数(総日数) ≠ 受給可能な期限(受給期間)です。
受給期間(原則1年)内に所定給付日数を使い切れていない場合でも、
受給期間を過ぎてしまうと、その後は残りの日数について支給を受けることはできません。
所定給付日数はどう決まる?(年齢・被保険者期間・離職理由)
所定給付日数は、主に次の3つの要素で決まります。
- 離職時の年齢区分(例:30歳未満、30~34歳、35~44歳、45~59歳、60~64歳など)
- 雇用保険の被保険者であった期間(1年未満、1年以上5年未満、5年以上10年未満…など)
- 離職理由(倒産・解雇などの会社都合、契約期間満了、自己都合 など)
一般的には、年齢が高く、被保険者期間が長いほど所定給付日数は多くなります。 また、「倒産・解雇などの会社都合」や、一部の「契約期間満了」に該当する場合には、 自己都合退職の方に比べて所定給付日数が手厚くなるケースがあります。
具体的な日数は、厚生労働省・ハローワークが公表している「所定給付日数表」で確認できます。 実務上は、ハローワークの窓口で「受給資格決定」が行われる際に、 離職票の記載内容などをもとに、所定給付日数が決定・説明されます。
いつから支給が始まるのか(待期と給付制限)
「いつまで」受け取れるかを考えるうえでは、「いつから支給が始まるか」も重要です。 受給期間は離職の翌日から1年ですが、実際にお金が振り込まれるまでには、次のようなステップがあります。
- ハローワークで求職申込み・受給資格の決定を行う
- 受給資格決定日から7日間の待期期間(この間は支給なし)
- 離職理由によっては、待期後に給付制限期間(原則1~3か月)が付く
- その後の「失業の認定」により、基本手当の支給が開始
とくに、自己都合退職などの「正当な理由のない自己都合」による離職の場合は、 待期満了後に原則1か月(過去一定期間に複数回の自己都合退職がある場合などは3か月)の給付制限が設けられます。 この期間は受給期間に含まれますが、基本手当は支給されません。
※給付制限期間の長さは、退職日・過去の自己都合退職歴・法改正の時期等により変わるため、 実際の取り扱いは必ずハローワークでご確認ください。
受給期間の延長ルール(病気・けが・妊娠・出産・育児など)
受給期間は原則1年ですが、やむを得ない理由で30日以上、働くことができない状態が続いた場合には、 「受給期間の延長申請」を行うことで、この1年に「働けなかった日数分」を加えることができます。 延長できる期間は最大で3年間までとされており、 原則1年 + 延長3年 = 最長4年間が、受給期間の上限の目安になります。
「やむを得ない理由」の代表例としては、次のようなものがあります。
- 病気・けが(不妊治療を含む)
- 妊娠・出産
- 育児(おおむね3歳未満の子の養育など)
- 要介護状態の親族の介護・看護
- 配偶者の海外赴任への同行 など
延長申請は自動では行われません。離職後、働けなくなった日から30日が経過した後、原則としてできるだけ早めに、 住居地を管轄するハローワークに「受給期間延長申請書」と、医師の証明書等の添付書類を提出する必要があります。 延長後の受給期間の末日までであれば申請は可能ですが、 申請が遅れると結果として所定給付日数をすべて受け取りきれないおそれもあります。
ポイント:
・延長されるのは「受給期間(期限)」であり、「所定給付日数(総日数)」そのものが増えるわけではありません。
・延長の可否・延長期間の長さは、理由や実際に働けなかった期間によって個別に判断されます。
なお、離職時点ですでに妊娠・出産・育児等の理由により働けない状態で、「当面求職の申込みをしない」ことを選択する場合には、 離職日の翌日から一定期間内に延長申請のみを行い、働ける状態になってから改めて受給手続を行うことも可能です。
所定給付日数が長い場合(330日・360日など)の考え方
長期間勤務されていた方や、就職困難な方などで、所定給付日数が 330日または360日と長く設定されることがあります。 このような場合、原則1年間の受給期間だけでは全日数を消化しきれないため、 制度上、一定の調整が行われる取扱いがあります。
よくある質問として、
- 「所定給付日数が330日の場合、受給期間は1年+30日になるのか」
- 「360日の場合は1年+60日になるのか」
といったものがありますが、実際の取り扱いは、 離職理由・年齢・被保険者期間・法改正の時期などにより異なる場合があります。 330日・360日といった長期の給付日数が見込まれる方は、 受給開始時点での受給期間の上限や延長の可否・手順を、必ずハローワークで確認しておくことが重要です。
例外・特例:離職後に事業を開始(起業)した場合の扱い
離職後に新たに事業を開始(起業)したり、これまで副業として行っていた事業に専念し始めた場合、 従来は「事業開始=失業状態でなくなる」として、その後の基本手当の受給ができないケースが多くありました。
しかし、令和4年7月1日以降、一定の要件を満たす場合には、 事業を行っていた期間等を最大3年間、受給期間に算入しない特例が設けられました。 これにより、たとえば起業後に事業がうまくいかず休廃業した場合でも、 条件を満たせば、その後の再就職活動に際して基本手当を受給できる可能性があります。
この「受給期間の特例」を利用するための代表的な条件(概要)は、次のようなものです。
- 離職日の翌日以後に開始した事業であること(離職前から準備していた場合でも、専念し始めた日が基準になる場合あり)
- 事業の実施期間が30日以上あること
- 「事業開始日」「事業に専念し始めた日」「事業準備に専念し始めた日」のいずれかから30日を経過する日が、本来の受給期間の末日より前であること
- 当該事業について、就業手当または再就職手当の支給を受けていないこと
- 事業の開始・内容・事業所の実在が、登記事項証明書・開業届の写し等で客観的に確認できること など
この特例も自動適用ではなく、申請が必要です。 申請期限や必要書類については、事業開始・専念開始等の日から一定期間内とされておりますので、 起業を検討されている方は、離職前後のタイミングで早めにハローワークに相談しておくことが重要です。
あなたの受給「期間」と「総日数」をシミュレーターで確認
受給期間と所定給付日数の関係は、実際に日付を当てはめてみないとイメージしづらい部分です。 失業手当シミュレーターを使うと、離職日・年齢・雇用保険加入期間・離職理由などから、 「受給開始の目安」と「所定給付日数(総日数)」の概算を把握することができます。 生活費の見通しを立てるうえでも、一度数字で確認しておくことをおすすめします。
よくある勘違い(受給期間で失敗しやすいポイント)
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「所定給付日数分もらえるから安心」
→ 所定給付日数はあくまで上限日数であり、受給期間(原則1年)を過ぎると未消化分は消滅します。 手続きが遅れたり、途中で長期間就業していたりすると、結果的に全日数を使い切れないことがあります。 -
「事業を始めたら受給は終わる」
→ 原則として、安定的に事業を行い始めると「失業の状態」ではなくなるため、その間の基本手当の受給はできません。 ただし、条件を満たせば事業実施期間を受給期間に算入しない特例があり、 休廃業後に改めて受給を再開できる場合があります(要件や申請期限に注意が必要です)。 -
「病気や育児なら放置しておけば後でまとめてもらえる」
→ 病気・妊娠・出産・育児・介護などの理由があっても、受給期間の延長は自動ではありません。 延長を希望する場合は、所定の期限内に「受給期間延長申請」を行う必要があります。 申請がないまま1年が過ぎてしまうと、その後に働ける状態になっても、原則として受給はできません。 -
「受給手続きは離職から1年以内に行えばよい」
→ 受給期間1年には、待期7日間や給付制限期間(1~3か月)が含まれます。 ぎりぎりのタイミングで求職申込みをすると、もともとの受給期間の中に十分な日数が残っておらず、 所定給付日数を全て受給できないおそれがあります。 離職票を受け取ったら、できるだけ早めに手続きされることが重要です。
実務チェックリスト:受給期間で失敗しないために
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離職票を受け取ったら速やかにハローワークへ行く
受給期間は離職日の翌日から進行します。離職票の到着を待つ間に情報収集を行い、 手元に届き次第、できるだけ早期に管轄ハローワークで求職申込み・受給資格の決定を受けることが大切です。 -
自分の所定給付日数(総日数)を把握する
年齢・被保険者期間・離職理由によって所定給付日数は大きく異なります。 「自分が何日分の権利を持っているのか」を早めに確認し、 1年間の受給期間の中で、どの程度のペースで消化していくのかをイメージしておくと、 生活設計が立てやすくなります。 -
長期療養や育児がある場合は「延長申請」の要否を確認
離職後1年以内に30日以上連続して働けない期間が生じる、または生じる見込みがある場合は、 受給期間の延長申請ができる可能性があります。 いつからいつまで働けなかったか、医師の診断書の準備なども含め、早めにハローワークで確認しておくことが重要です。 -
事業開始・起業を予定している場合は「受給期間特例」を事前に確認
起業を検討している場合、事業開始のタイミングや内容によっては、 受給期間の特例を利用することで、万一の休廃業時に基本手当を受給できる余地を残せる場合があります。 一方で、就業手当・再就職手当の受給や申請期限などとの関係もあるため、 実際に事業を始める前に、ハローワークで具体的な要件を確認しておくことが望ましいといえます。
Q&A(受給期間に関するよくある質問)
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Q:所定給付日数が330日・360日の場合、受給期間はどうなりますか?
A:所定給付日数が長い方(例:330日・360日)の場合、 原則1年間の受給期間だけでは全日数を消化しきれないため、 法令・通達上、受給期間の上限について一定の調整が行われる取扱いがあります。 ただし、離職理由・年齢・被保険者期間・法改正の時期等により具体的な取扱いが異なることがあるため、 ご自身のケースでの受給期間の上限は、受給資格決定時に必ずハローワークでご確認ください。 -
Q:受給期間が過ぎてしまったけれど、まだ申請していない日があります。後からまとめて請求できますか?
A:受給期間(原則、離職日の翌日から1年間)を過ぎてしまうと、 その後は、たとえ所定給付日数が残っていたとしても、基本手当を受け取ることはできません。 また、過去にさかのぼって受給期間を延ばすことも原則としてできません。 離職票が届きしだい、できるだけ早く求職申込みと受給手続きを行い、 延長が必要な事情がある場合は、早めに延長申請の要否を検討することが重要です。 -
Q:病気で当面働けないため、求職申込みを先送りしてもよいですか?
A:離職時点で既に病気・妊娠・出産・育児等により働けない状態にあり、 当面は求職活動を行わない場合には、「受給期間の延長申請のみ」を先に行い、 働ける状態になってから改めて求職申込み・受給手続を行う方法もあります。 ただし、延長申請には期限があり、申請がないまま1年が経過すると、原則として受給できなくなりますので、 具体的な時期・方法は、必ずハローワークでご確認ください。 -
Q:受給期間の途中で再就職し、その後すぐに離職した場合、残りの日数はどうなりますか?
A:受給期間(離職日の翌日から原則1年間)内に再度離職した場合であっても、 受給期間の残りの範囲内であれば、最初の受給資格に基づく所定給付日数の「未支給分」を受け取れる場合があります。 ただし、再就職手当を受給しているかどうか、再就職先での被保険者期間等により取扱いが異なりますので、 具体的な可否は、雇用保険受給資格者証を持参のうえでハローワークで確認いただく必要があります。
参考・公式リンク(必読)
「いつまで」もらえるかは数字で確認するのが一番確実
失業手当は、「受給期間(期限)」と「所定給付日数(総日数)」の2つを押さえておくことが重要です。 まずは失業手当シミュレーターで、 離職日・年齢・加入期間・離職理由などを入力し、 概算の所定給付日数・受給開始の目安・受給期間内に消化できるかのイメージをつかんでみてください。 不明点がある場合は、実際の手続きの場面で、必ず所轄ハローワークで確認されることをお勧めします。
監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)
本記事は、執筆時点の法令・公表資料に基づき、雇用保険(基本手当)の受給期間等の要点を整理したものです。
個別の事情(離職理由・被保険者期間・年齢・健康状態・起業の有無など)によって取扱いが異なる場合がありますので、
最終的な判定および具体的な日数・期間については、必ず所轄ハローワークでご確認ください。
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