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再就職を急ぐと損をする?失業手当と再就職手当の“正しい選び方”
監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)
※本文は失業手当(雇用保険の基本手当)と再就職手当(就職促進給付の一つ)についての一般的な解説です。最終的な給付可否・金額は所轄ハローワークの判断が優先されます。
まずは両方を“数値で比較”しましょう
受給見込み(日額・給付日数)と再就職手当の試算をシミュレーターで比較すると、どちらが合計で有利かが明確になります。想定就業期間・賃金も入れて比較してください。
結論(先に要点)
- 「すぐに再就職して再就職手当を取る」か「じっくり待って基本手当を満額近く受け取る」かは、残日数・給付率・就業の継続見込みで判断する。
- 安定して1年以上働ける見込みがあり、支給残日数が多くない場合は再就職手当が有利なケースがある。
- 一方で、給付制限や賃金日額・上限の関係によっては、失業手当を満額近く受けたほうが総額で有利になることもある。
前提の整理:両制度の違い(超簡単)
失業手当(基本手当):求職活動を行い、失業認定を受けることで定期的に支給される給付(所定給付日数 × 基本手当日額)。
再就職手当:受給資格者が受給期間中に一定の要件を満たして早期に安定した職に就いた場合に支給される一時金(支給残日数に応じた支給率で計算され、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あることなど、一定の要件を満たす必要があります)。
判断に影響する主要因(チェックリスト)
- 支給残日数(所定給付日数に対する残り) — 支給残日数が多いときは失業手当を継続して受けたほうが有利な場合がある。
- 基本手当日額(賃金日額)と再就職後の賃金 — 再就職後の賃金が離職前より下がると、就業促進定着手当の対象になる可能性もある。
- 雇用の継続見込み(1年以上等) — 再就職手当は「1年を超えて雇用されることが確実と認められる」ことが一要件の代表例です(就業形態により判断が分かれます)。
- 給付制限の有無(自己都合等) — 給付制限があると受給開始が遅れるため、再就職のタイミングが総額に影響することがあります。
- 離職前の事業主や関連会社への再就職でないか — グループ内出戻り等は再就職手当の対象外です。
具体的な比較方法(実務フロー)
判断を間違えないための現実的な手順は次の3ステップです。
- シミュレーターで「待つ」ケースを算出 — 受給資格・所定給付日数・基本手当日額をもとに、最終的に受け取れる総額を試算。
- シミュレーターで「早期就職+再就職手当」ケースを算出 — 就職日の想定、就業見込み(1年以上か)、支給残日数に応じた一時金額を試算。
- 比較して差額と不確実性(リスク)を評価 — 差額だけでなく「就業の継続性・内定の確実性・生活の必要性」を評価して意思決定。
計算イメージ(簡易例)
| 条件 | 待つケース(例) | 早期就職+再就職手当(例) |
|---|---|---|
| 支給残日数 | 120日 | 120日(就職して残日数は同じ) |
| 基本手当日額 | ¥6,000 | ¥6,000 |
| 失業手当総額(概算) | 120日 × ¥6,000 = ¥720,000 | (受給停止分あり) |
| 再就職手当(概算) | — | 支給残120日→支給率70% → 120×70%×¥6,000 = ¥504,000 |
| 合計(早期就職時の給与は別) | 受給のみ:¥720,000 | 再就職一時金:¥504,000 + 就職後給与(継続安定が条件) |
留意:上は単純化された比較です。早期就職後にすぐに働ける収入や、雇用が1年で継続しないリスクなども含めて判断する必要があります。
数字で比較するのが最短です
複数パターン(受給を続ける/早期就職+再就職手当/就業後の賃金シミュレーション)をシミュレーターで出して、差額とリスクを可視化してください。
判断に迷ったときの実務的な優先ルール
- 生活が詰まる可能性が高い → 早めに就職して収入を確保(再就職手当は「ボーナス的」な位置づけ)。
- 十分な貯蓄があり、より良い就職先を探したい → 待つ選択も合理的(ただし、待期・給付制限を確認)。
- 支給残日数が多く、満額受給が見込める → 待ったほうが総額で有利なことがある。
- 就業が離職前の会社や密接関連先でないか必ず確認(対象外になる場合あり)。
よくあるQ&A(実務的)
- Q:再就職手当は誰でももらえる?
A:一定の要件(受給資格者であること、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上であること、1年以上継続して雇用される見込み等)を満たす必要があります。就職経路や過去の受給歴などにより支給されない場合もありますので、個別ケースはハローワークで確認してください。 - Q:再就職を急いで内定を受けたら取り消された経験がある
A:就業開始後に短期間で退職すると、その後の再就職手当や定着手当に影響が出ます。安定性(1年超)が重要です。 - Q:数値の比較は手作業でできますか?
A:できますが、シミュレーターで「受給を続ける場合」と「早期就職の場合」を同じ前提で出すと、見落としが減ります。
参考・公式リンク
決める前に“受給を続ける” vs “早期就職”を数値で比較しよう
差額だけでなく「就業の継続リスク」「生活の切迫度」も加味して判断するのが重要です。まずはシミュレーターで複数パターンを出して比較してください。
監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士) — 本記事は一般的な判断フローと比較方法を提示するものであり、個別の最終判断はハローワークおよび実際の雇用契約内容で確認してください。
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