目次
- 1 知らないと数十万円損する?失業手当の「もらえる総額」を今すぐ確認すべき理由
- 1.1 「もらえる総額」は、いま数分あれば概算できます
- 1.2 先にポイントだけ:なぜ「総額確認」がそんなに大事なのか
- 1.3 まず仕組みを整理:失業手当の「総額」はどう決まる?
- 1.4 総額を把握していないと、どんな「損」が起こりやすいか
- 1.5 「日額」と「日数」だけでも、総額のイメージは大きく変わります
- 1.6 モデルケースで見る:「総額を知っているか」の違い
- 1.7 「もらえる総額」を今すぐ概算しておくメリット
- 1.8 「総額」をシミュレーションする際に用意しておきたい情報
- 1.9 「法律を踏まえた」総額の見方:気を付けたいポイント
- 1.10 失業手当シミュレーターで「総額」を見るときのコツ
- 1.11 参考・公式リンク
- 1.12 「いま自分はいくらぐらいもらえるのか」を、数字で確認してみませんか?
- 1.13 あわせて確認しておきたいシミュレーター
知らないと数十万円損する?失業手当の「もらえる総額」を今すぐ確認すべき理由
監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)
「もらえる総額」は、いま数分あれば概算できます
失業手当は、「日額」と「もらえる日数」が分かれば、総額のおおよその水準を把握することができます。ところが、ここを知らないまま退職・転職の判断をしてしまい、本来受けられたはずの数十万円単位の給付を逃しているケースも少なくありません。植本の失業手当シミュレーターでは、公表されている計算ルールに沿って、日額・日数・総額を一括で概算できます。
先にポイントだけ:なぜ「総額確認」がそんなに大事なのか
- 失業手当の総額は、月額にして十数万円〜二十万円前後になることが多く、所定給付日数との掛け算でトータル数十万〜百万円超になるケースもあります。
- 離職理由や被保険者期間の長さによって、所定給付日数は90日か120日か、あるいはそれ以上かが変わり、その差だけで数十万円単位の違いになることがあります。
- 退職のタイミングや雇用保険の加入期間のカウントを誤解したまま進めると、受給資格そのものを失ったり、給付日数が短くなったりするリスクがあります。
- 「生活費としてどのくらいの期間・いくらまでなら耐えられるか」を考えるうえで、失業手当の総額は、貯金や再就職のペース配分にも直結する重要な数字です。
まず仕組みを整理:失業手当の「総額」はどう決まる?
失業手当(基本手当)の「もらえる総額」は、ざっくり言うと次の掛け算で決まります。
基本手当日額 × 所定給付日数 = 理論上の総支給額の目安
それぞれ、次のように算定されます。
- 賃金日額の算定
離職前6か月の給与の総支給額(賞与を除く)を180で割ったものが「賃金日額」です。ここには残業代や各種手当も含まれます。 - 基本手当日額の算定
賃金日額に、年齢と賃金水準に応じた給付率(おおむね45~80%)を乗じ、さらに年齢区分ごとの上限・下限額を適用して「基本手当日額」が決まります。 - 所定給付日数の決定
離職理由(自己都合か、会社都合か等)、離職時の年齢、雇用保険の被保険者であった期間(月数)をもとに、「90日」「120日」「150日」…といった所定給付日数が決まります。 - 総額イメージの算出
最後に、基本手当日額に所定給付日数を掛け合わせることで、あくまで理論上の総支給額のイメージをつかむことができます(実際には、途中で再就職した場合などは減ることがあります)。
総額を把握していないと、どんな「損」が起こりやすいか
具体的な金額イメージがないまま退職を進めてしまうと、次のような「もったいない損失」が生じやすくなります。
- 受給資格そのものを満たせないケース
離職前2年間に通算12か月以上の被保険者期間が必要(会社都合等で要件が緩和される場合を除く)ですが、ギリギリの方が、数週間早く退職したことで12か月に届かず、失業手当を1円も受け取れなくなってしまうケースがあります。被保険者期間のカウント方法(「賃金支払基礎日数11日以上で1か月」等)も含めて、事前確認をしておく価値があります。 - 離職理由による所定給付日数の差
同じ給与水準でも、「自己都合」と「会社都合」等では、所定給付日数が90日なのか120日・150日以上なのかが変わることがあります。日額5,000円の場合でも、30日増えるだけで15万円の差です。退職勧奨や契約満了の説明をする際には、従業員側の資金計画にも大きく影響しうるポイントです。 - 受給期間(1年間)を意識せずに手続きが遅れた結果の取りこぼし
原則として、離職日の翌日から1年間が「受給期間」です。この期間を過ぎてしまうと、所定給付日数が残っていても支給されません。退職後しばらくゆっくりしてから…と考えているうちに、手続きが遅れて日数を取りこぼしてしまうと、総額で数十万円減ってしまうこともあります。 - 再就職手当との組み合わせを知らないことによる機会損失
早期に再就職した場合、「残りの失業手当日数」に応じて再就職手当が支給されることがあります。これも条件を満たせば数十万円規模になることがありますが、総額や残日数のイメージを持たないまま就職時期を決めると、結果的に手当の受給機会を逃すことがあります。
「日額」と「日数」だけでも、総額のイメージは大きく変わります
植本の失業手当シミュレーターでは、直近6か月の給与・年齢・離職理由・雇用保険の加入期間などを入力することで、公表されている制度上の計算ルールに基づいた「日額・日数・総額の目安」を一度に把握できます。正確な金額はハローワークの算定が必要ですが、生活設計や退職タイミングの検討材料としては十分な精度です。
モデルケースで見る:「総額を知っているか」の違い
実務でよくお見かけする「総額を把握していた場合」と「そうでない場合」の違いを、イメージしやすい形で整理してみます(数字はあくまで例示です)。
| ケース | 前提条件 | 総額を事前に把握していた場合 | 把握していなかった場合 |
|---|---|---|---|
| ケース1:被保険者期間がギリギリ | 離職前2年間で被保険者期間が「11か月と2週間」。月収20万円程度。 | シミュレーターで「あと1か月勤務すれば受給要件を満たし、総額40万円程度の給付見込み」と把握。退職日を1か月延ばす選択肢を検討できた。 | 要件を知らないまま希望日に退職し、雇用保険の加入期間が不足して失業手当を1円も受け取れず。 |
| ケース2:離職理由による日数差 | 月収25万円程度。自己都合か、実態としては会社都合に近いかで判断が分かれる状況。 | 所定給付日数が「自己都合90日/会社都合120日」で総額に約30万円の差が出ることを把握。会社との話し合いの際に、説明材料として冷静に整理できた。 | 日数差のイメージがないため、「どちらでも大きくは変わらない」と考え、結果として本来得られたはずの給付日数を逃してしまう。 |
| ケース3:受給期間と手続きの遅れ | 所定給付日数120日。離職後、半年ほど休養してから求職申込みをするつもり。 | 受給期間が「離職の翌日から1年」であること、残り期間では120日すべてを受け取れない可能性があることを認識。退職後1〜2か月以内に手続きを済ませ、総額に近い水準まで受給。 | 「必要になったら行けばいい」と考え、離職から10か月後に求職申込み。残り2か月分しか失業手当を受けられず、総額が本来の半分以下に。 |
「もらえる総額」を今すぐ概算しておくメリット
総額の目安を早めに把握しておくことで、次のような場面で判断がしやすくなります。
- 退職・転職のタイミングを検討するとき
・「今の職場をいつ辞めるか」「次の転職先の入社日をいつにするか」を考える際、失業手当の受給要件や所定給付日数を踏まえたスケジュール感が持てます。
・特に、被保険者期間が12か月に届くか微妙な場合、あと数週間〜1か月の勤務延長による差は非常に大きくなり得ます。 - 貯金・生活費の計画を立てるとき
・「失業手当で月いくらぐらい入ってくるのか」「何か月ぐらい受け取れるのか」が分かれば、家賃・ローン・教育費などの支出とのバランスを見ながら、どのくらいのペースで再就職活動を進めるかを検討しやすくなります。 - 配偶者や家族と話し合うとき
・「1年間でこれくらいの給付見込みがあるので、その間はパート収入と合わせれば生活できそう」など、数値をもとに話し合うことができます。
・漠然とした不安が減り、家族としての意思決定もしやすくなります。 - 再就職手当を含めたトータルの見通しを持つとき
・早期に再就職した場合に受け取れる可能性のある再就職手当を含め、「失業期間をどの程度に抑えた方が、総収入として有利か」を検討する土台になります。
「総額」をシミュレーションする際に用意しておきたい情報
失業手当シミュレーターで総額の目安を出すには、次のような情報を手元に用意しておくとスムーズです。
- 退職前6か月分の給与明細(総支給額ベース、賞与は除く)
- 退職日(予定含む)と離職理由(自己都合・会社都合・契約期間満了等)
- 雇用保険の被保険者期間(月数)の見込み(前職の分も含む)
- 過去に雇用保険の失業等給付を受けているかどうか
- 再就職の希望時期(いつ頃までに決めたいか)
「法律を踏まえた」総額の見方:気を付けたいポイント
失業手当の総額を考える際、制度上のルールとして特に押さえておきたいのは次の点です。
- 受給資格と「失業」の定義
・失業手当を受けるには、「離職していること」に加え、積極的に就職しようとする意思と、いつでも働ける状態(健康状態・環境など)であることが求められます。
・病気やけが等で30日以上働けない状態が続く場合は、「受給期間の延長」の仕組みが利用できる場合があります。 - 受給期間(原則1年間)の存在
・所定給付日数が何日であっても、「離職日の翌日から原則1年間」という受給期間の枠の中でしか受け取ることはできません(一部、就職困難者などは1年プラスαとなる場合があります)。
・退職後しばらく働けない事情がある場合には、受給期間の延長手続きにより、最大で3年間まで延長できる場合があります。 - 就職・アルバイトと給付の関係
・週20時間以上、31日以上の雇用見込みがある就労は「就職」とみなされ、その期間は基本手当を受給できません。
・短時間のアルバイト等であっても、収入額によっては、その日の給付が減額または不支給となることがあります。就労実績がある場合は必ず申告が必要で、申告しないと不正受給となるおそれがあります。 - 不正受給のリスク
・働いていることを隠したり、離職理由について虚偽の申告を行ったりして失業手当を受けることは、不正受給に該当します。
・不正受給が判明した場合、受け取った額の返還に加え、最大でその2倍の納付(いわゆる「3倍返し」)を命じられることがあり、さらに刑事罰の対象となる可能性もあります。
・事業主側が離職票に虚偽の記載を行った場合も、同様に重い責任を問われる可能性があります。
失業手当シミュレーターで「総額」を見るときのコツ
シミュレーターで総額を確認する際、次のような見方をしておくと、実務的に活用しやすくなります。
- 「満額受け取った場合の理論値」として見る
シミュレーション結果の総額は、あくまで「所定給付日数をすべて受給した場合の理論上の上限値」として捉えると良いです。実際には、途中で再就職したり、就労日があったりすることで、これより少なくなるのが一般的です。 - 「月額いくらか」にも換算しておく
総額だけでなく、「4週間あたり」「1か月あたり」の金額として換算してみると、毎月の生活費との比較がしやすくなります。シミュレーターで日額が分かれば、28日分や30日分として計算してみてください。 - 複数パターンで比較してみる
・退職日の候補を1か月ずらした場合
・離職理由が自己都合/会社都合だった場合
・被保険者期間が○年/○年+1か月だった場合
など、現実的にあり得るパターンで試算しておくと、「どこが総額に効いているのか」が見えやすくなります。 - 他の給付や保険料とのセットで考える
失業手当だけでなく、再就職手当や、再就職後の社会保険料、年金との併給調整(一定の年齢の方)なども含めた「トータルの手取り」を考える必要があるケースもあります。総額シミュレーションは、その出発点となる数字です。
参考・公式リンク
「いま自分はいくらぐらいもらえるのか」を、数字で確認してみませんか?
失業手当の総額は、退職・転職の判断や、その後の生活設計に大きな影響を与えます。植本の失業手当シミュレーターで日額・日数・総額の目安を整理しておくことで、「あと1か月働くとどう変わるか」「再就職手当を含めるとどのくらいか」といった検討もしやすくなります。
あわせて確認しておきたいシミュレーター
退職・転職、出産・育児、病気・けがなど、ライフイベントが重なるときは、ほかの給付や保険料も同時にチェックしておくと安心です。
監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)— 本記事は、失業手当(基本手当)の「もらえる総額」の考え方と、制度上の計算ルールを整理するための一般的な情報を提供するものであり、最終的な受給資格・日額・日数・支給総額等は、管轄ハローワークによる算定・決定が優先されます。
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