アルバイトや副業をしながら失業手当は受けられる?
ケース別ルールと実務上の注意点
監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)
失業手当を受けながらアルバイトや副業をすることは「場合によっては可能」ですが、扱いは実態に応じて大きく変わります。重要なのは〈認定日に働いた日と収入を正確に申告すること〉と〈就労時間・雇用形態の区分〉です。本稿では、実務でよくあるケース別に具体的な扱い方、申告の仕方、企業が従業員に案内するときの注意点を丁寧にまとめます。
結論(要点)
- 認定日に働いた日と収入を必ず申告する(申告漏れは不正受給となる。悪質な場合は3倍返還等の厳しい制裁を受ける可能性がある)。
- 1日あたりの就労時間が4時間未満:原則「内職・手伝い」扱い→収入に応じて減額対象となることがある。
- 1日あたり4時間以上:原則「就労・就職」扱い→その日は基本手当の支給対象外。支給日数の調整が発生する。
- 週20時間以上の継続就労は原則「就職」として受給資格喪失の可能性あり。事前確認が必須。
ケース別の扱い(実務的)
ケース1:短時間アルバイト(1日3時間・週10時間)
こうした短時間の労働は一般に「内職・手伝い」として扱われ、働いた日は申告し、収入に応じて基本手当が減額される可能性があります。たとえば、日額基準を超えない少額収入でも申告は必須です。申告漏れが発覚した場合は不正受給として返還や加算(不正受給額の最大3倍の納付命令など)の対象になります。
ケース2:1日5時間の臨時アルバイト(週15時間)
1日あたり4時間以上の勤務があれば、その日は「就労」として扱われ、当該日の支給対象は外れます。支給日数の減少や繰り越し処理が生じ、受給期間全体に影響することがあるため、実働日数と収入を正確に申告する必要があります。
ケース3:副業で週20時間以上(継続的)
このラインを超えると、雇用保険の被保険者と同等の勤務と判断され得ます。結果、基本手当の受給資格を喪失する可能性が高く、副業開始前にハローワークへ相談・確認することが望ましいです。
ケース4:自営業(独立準備・開業)を行う場合
開業準備の範囲であれば一部認められるケースもありますが、事業に専念して求職活動をしていないと判断されれば受給不可となります。代表者や役員就任は給付上問題となることが多く、事前相談が必須です。
認定日の申告方法:実務メモ
失業認定日は通常4週間に1回設定されます。その認定日に、実際に働いた日数・就労時間・受け取った賃金を申告書に記載して提出します。名称(アルバイト、業務委託、内職など)にかかわらず、実態に基づいて判断されます。面倒だからと申告を怠ると不正受給扱いとなり、最悪の場合は過去分の返還や加算処分(不正受給額の3倍納付など)が課されます。
企業側が従業員へ伝えるべきポイント
- 認定日に必ず「働いた日・時間・収入」を申告することを明確に周知する。
- 副業の就労時間が週20時間に近づく場合は、本人にハローワーク相談を促す。
- 自営や役員就任など非典型的な働き方は個別に確認する(記録を残す)。
- 自己都合退職で給付制限がある場合は取り扱いが異なるため、ケース別対応を行う。
支給への影響(よくある疑問)
短時間(4時間未満)で働いた日は、収入額に応じて基本手当が減額されることがあります。一方、4時間以上は原則「就労」扱いでその日は支給されません。支給日数や受給期間の扱いが複雑になるため、従業員には「事前の相談」と「認定日の正確な申告」を強く推奨してください。
よくある質問(FAQ)
Q:副業の収入が少額でも申告は必要ですか?
A:必要です。収入の有無にかかわらず、認定日には実際に働いた日と金額を申告してください。申告漏れは不正受給になり、以後の支給停止や不正受給額の3倍納付命令などの対象となる場合があります。
Q:1日4時間ちょうどはどう扱われますか?
A:一般に「4時間以上」は就労扱いとなります。窓口の判断で扱いが分かれる場合もあるため、正確な就労時間を記録しておくと安心です。
Q:副業開始前にどこに相談すればよいですか?
A:まずは最寄りのハローワークに相談してください。具体的な状況(契約形態・時間・見込み収入)を伝えれば、受給への影響を確認してもらえます。
まとめ:リスクを避ける実務対応
失業手当受給中のアルバイトや副業は、正しく申告すれば可能なケースも多い反面、就労時間や形態次第で給付に影響が出ます。企業は従業員へ「認定日に申告すること」「副業が週20時間に近づく場合は事前に相談すること」を確実に伝えてください。個別に判断が必要なケースはハローワークでの確認を促し、記録を残すことで会社側のリスクも低減できます。
コメント