失業保険「再就職手当」とは?|もらえる金額・条件・落ちる理由を社労士が徹底解説

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失業保険「再就職手当」とは?|もらえる金額・条件・落ちる理由を社労士が徹底解説

失業保険「再就職手当」とは?|もらえる金額・条件・落ちる理由を社労士が徹底解説

植本労務管理事務所 監修(社会保険労務士)

再就職手当 イメージ

仕事を失い雇用保険(基本手当)を受けている間に、早めに次の職が決まれば「再就職手当」という一時金が受け取れる可能性があります。まとまった金額が支給されるため、早期就職を考えている人にとっては重要な制度です。本記事では、再就職手当の要件・計算方法・申請手順・実務で落ちやすいポイントとその対処法まで、社労士目線で丁寧に解説します(実務でよくある質問にも回答)。

出典:厚生労働省・ハローワークの公的案内を参照して作成しています。詳しい要件・運用は申請前に必ずハローワークで確認してください。

💼 シミュレーターで「再就職手当の概算」をチェック

残日数・基本手当日額・就業形態を入力するだけで、再就職手当の概算が出ます。まずは数値で見て判断しましょう。

目次(本記事の流れ)

  1. 再就職手当の概要(制度の目的)
  2. 受給要件(満たすべき条件)
  3. 支給額の計算方法と給付率の考え方(具体例つき)
  4. 申請手順・必要書類と注意点
  5. 不支給となる代表的なケース(落ちる理由)と対処法
  6. 実務的なQ&A・チェックリスト

1)再就職手当とは(制度の要点)

再就職手当は、基本手当(失業手当)を受けている人が、早期に安定した職に就いた場合に支給される手当です。失業給付の残日数や就業の継続見込みに応じて支給額が決まり、早く・安定して就職した人の経済的支援と就労促進を目的としています。詳しい制度の趣旨・要件はハローワークの公的案内で定められています。なお、就職促進給付には再就職手当のほか、就業促進定着手当、常用就職支度手当などもあります。

2)受給要件(これを全部満たす必要があります)

ハローワークの説明では、代表的な要件は下記のようにまとめられています(詳細は窓口で確認)。

  • 基本手当の受給手続き後、7日間の待期期間が満了した後に就職または事業を開始していること(待期中は対象外)。
  • 就職日の前日までの失業認定を受けており、かつ再就職によって残る基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上であること。
  • 離職前の事業主や、資本・資金・人事・取引等の面で密接な関連がある事業主への再就職でないこと(元の職場や関連会社に戻るケースは原則対象外)。
  • 再就職先で1年を超えて勤務することが確実であると認められること(短期の見込みしかない場合は不支給となることがあります)。
  • 原則として、再就職先で雇用保険の被保険者となること(週所定労働時間20時間以上・31日以上の雇用見込みなど)。
  • 過去3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていないこと。
  • 受給資格決定(求職申込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと。
  • 自己都合退職などで給付制限がある場合は、待期満了後1か月間について、ハローワークまたは許可・届出のある職業紹介事業者の紹介による就職であること。

3)支給額の計算方法(実務で使える図解)

再就職手当は概ね次の式で計算されます(詳細はハローワークの案内を参照)。

要素説明
基本手当日額雇用保険受給資格者証に記載されている日額(直近6か月の賃金日額に基づき計算された額で、年齢ごとの上限があります)。
支給残日数再就職時に残っている基本手当の支給残日数(受給期間の残り日数がこれを下回る場合は、その受給期間の残り日数が用いられます)。
支給率支給残日数の割合により主に70%または60%が適用されます(下記参照)。

支給率の目安(法律・公的案内に基づくルール)

  • 所定給付日数の3分の2以上の残日数がある場合:支給率70%
  • 所定給付日数の3分の1以上3分の2未満の残日数がある場合:支給率60%

※支給額には、基本手当日額の年齢区分ごとの上限額等が適用されます。上限額や取扱いは毎年見直されることがありますので、最新の数値はハローワークで確認してください。

具体的な計算例(すぐ使える)

例1:基本手当日額 8,000円、支給残日数 120日(所定給付日数が180日で残日数が2/3の場合)→ 支給率70%

8,000円 × 120日 × 0.70 = 672,000円(概算)

例2:基本手当日額 6,000円、支給残日数 60日(所定給付日数が180日で残日数が1/3の場合)→ 支給率60%

6,000円 × 60日 × 0.60 = 216,000円(概算)

4)申請手順と必要書類(実務フロー)

申請手続きはハローワーク窓口で行います。概ね次の流れです(書類は事前に窓口で確認してください)。

  1. 再就職日が決まったらハローワークに連絡し、就業報告を行う(就職日が次回認定日より前の場合は、原則として就職日前日に来所し、就職日前日までの失業認定を受けます)。
  2. 雇用契約書の写しや就業開始日が確認できる書類、本人確認書類など、必要書類を用意する。
  3. 窓口で再就職手当の支給申請書を受け取り、就職先にも記入・証明を依頼したうえで、雇用保険受給資格者証とともに提出する。
  4. ハローワークが要件を審査し、支給決定が出れば指定口座に振込される(審査期間や振込時期は窓口や時期により異なります)。
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5)不支給(落ちる)主な理由と現場での対応策

実務で申請が却下されやすいパターンと、それぞれの対処方法を示します。

(A)「安定した雇用」と認められない

短期のアルバイト、試用期間のみの契約、日雇いなどは、1年を超えて雇用が継続する見込みがある「安定した職業」とは認められず、不支給になることがあります。対策としては、雇用契約書に雇用期間・労働時間・試用期間が明確に示されていること、1年以上の継続見込みがある旨を雇用主に書面で示してもらう等が有効です。

(B)支給残日数が不足している

残日数が所定給付日数の3分の1未満だと要件を満たさないため支給不可となります。就職日を前後できる場合には、ハローワークで残日数の確認のうえ調整を検討します(ただし現実の就職機会との兼ね合いで容易ではない点に注意が必要です)。

(C)前の職場への再就職や関連会社への就職

離職前の事業主や、資本・資金・人事・取引の状況から密接に関連する事業主への再就職は原則対象外です。再就職先が関連会社に該当するか判断が分かれる場合は、就職先から「関連性がない」ことの確認書類をもらうなどして申請時に提示できると良いでしょう。

(D)過去の受給歴(3年ルール)

就職日前3年以内の就職について、すでに再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けている場合には、原則として再度の支給は不可です。就職日を基準に判定されるため、過去に同種の給付を受けた履歴がある場合は必ず確認しておきましょう。

6)実務的チェックリスト(申請前に必須)

  1. ハローワークで「自分が再就職手当の要件を満たすか」事前確認したか。
  2. 雇用契約書に就業開始日・雇用形態・試用期間・雇用期間(1年以上の見込み)が明記されているか。
  3. 基本手当の残日数(所定給付日数の3分の1以上かどうか)をハローワークで確認したか。
  4. 過去3年以内に再就職手当または常用就職支度手当を受けていないか確認したか。
  5. 必要書類(雇用契約書の写し、本人確認書類、採用証明書や紹介状など必要に応じた証明書類)を揃えたか。

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シミュレーターに残日数と基本手当日額を入れるだけで、70%・60%のケースを比較できます。複数案で検討するのが賢明です。

7)FAQ(よくある質問)

Q1:パート(短時間勤務)でも再就職手当はもらえますか?
短時間勤務であっても、雇用保険の被保険者となる条件(週20時間以上・31日以上の雇用見込み)を満たし、かつ「安定して1年以上継続する見込みがある」などの要件を満たす場合には、支給対象となることがあります。最終的な判断は個別の事情に応じてハローワークが行います。
Q2:雇用契約書がない口頭約束でも申請できますか?
原則、書面での確認が望ましいとされています。書面がない場合は、就業条件が分かる文書(雇用条件通知書・内定通知書・採用証明書など)を雇用主に作成してもらうなど、ハローワークから求められる資料を準備してください。
Q3:申請から振込まではどれくらいかかりますか?
ハローワークでの審査期間や手続き時期により異なりますが、標準的には申請後数週間から1か月程度で振込されるケースが多いとされています。具体的なスケジュールは、申請時に窓口で確認してください。
Q4:再就職手当を受給したあと、賃金が下がった場合に利用できる制度はありますか?
一定の要件を満たす場合、再就職手当を受給した方が再就職先で6か月以上継続雇用され、かつ再就職後6か月間の賃金の1日分の額が離職前の賃金日額より低下しているときには、「就業促進定着手当」の支給対象となる可能性があります。支給額には「基本手当日額 × 再就職時の支給残日数 × 20%」の上限があり、算定方法や支給率等は法改正等により変更されることがありますので、必ず最新の情報をハローワークで確認してください。

監修:植本労務管理事務所(社会保険労務士)

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